滴滴出行、米上場廃止へ手続き 香港上場を準備

滴滴出行、米上場廃止へ手続き 香港上場を準備
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM031HX0T01C21A2000000/

『【上海=土居倫之】中国の配車アプリ最大手、滴滴出行(ディディ)は3日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の上場を廃止する手続きを始めると発表した。同社は6月末に米市場に上場したばかり。異例の短期間での上場廃止となる。滴滴を巡っては、中国政府が国家安全上の理由で同社に対する審査に入り、アプリの新規ダウンロードの停止を命じる事態となっていた。

滴滴は3日、微博(ウェイボ)の公式アカウントで「慎重な検討の結果、NYSEからの上場廃止手続きの開始と、香港での上場に向けた準備に入った」との声明を発表した。

滴滴によると、米市場に上場している米国預託株式(ADS)はほかの証券取引所で自由に取引できる株式に転換するという。また一連の手続きを決議するのに必要な株主総会を今後開催する。

中国政府は7月6日に中国企業による海外上場の規制強化を発表し、すでに海外上場した企業も含めてデータ管理などの監督を強化する方針を示していた。

政府による統制強化に加えて、出前アプリ大手の美団の配車事業などとの激しいシェア獲得競争が影響し、滴滴の株式時価総額は急減していた。時価総額は2日時点で376億ドル(約4兆3000億円)と、上場初日(約682億ドル)の半分近くとなっている。

滴滴を巡っては米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが7月末に株式の非公開化を検討していると報じていた。滴滴側は当時、報道を否定していた。米ブルームバーグ通信は11月26日、中国の規制当局が滴滴に対して、米国での上場廃止を要請したと報じた。米国への情報流出を懸念する中国政府の強い意向を受けて米市場での上場維持方針を転換したとみられる。

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

ディディは今年6月にニューヨーク証券取引所に上場し多額の資金調達をしたばかりだが上場廃止はその直後から予測されていた。

中国政府は共同富裕政策というよりもデータセキュリティ観点から中国顧客データを多く保有している新興ネット企業で米国に上場する企業に規制強化をしている。

これまで新興ネット企業はより多額の資金調達がしやすい米国で上場する傾向があったが、今後は米中対立激化のもとで香港や中国本土での上場へ転換していくであろう。

外国投資家も米国から本土・香港における中国株投資の動きを加速させるとみられる。世界最大の経済大国になる見通しの中国への海外投資家の投資意欲が損なわれたわけではないようだ。

2021年12月3日 12:21 (2021年12月3日 12:42更新)

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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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分析・考察

滴滴など米上場を実現できるまで成長し、グローバル化しつつあった中国企業が、激化する米中対立に翻弄されています。

米国の投資銀行の積極的な支援を受けて米上場に漕ぎ着けたのに、一転して今や米国政府と中国政府の両方から上場廃止を求められる苦しい立場に追い込まれました。

米国政府は情報開示の不足、中国政府は情報流出の懸念、理由は異なりますが対立国への警戒・対抗意識は共通です。

これまで米中対立が強まっても米国の投資銀行や資産運用会社は積極的な中国進出を続けてきました。しかし滴滴の米上場廃止をきっかけに今後は各社とも戦略転換を余儀なくされ、金融面からの米中のデカップリングが進む可能性が高いと思います。

2021年12月3日 18:24

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桃井裕理
日本経済新聞社 中国総局長
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ひとこと解説

中国では生活に必要なあらゆる行為がスマホ上で完結します。私も中国赴任後、一度も現金を使ったことがありません。あらゆる行動は把握されています。

そして滴滴の配車シェアは約9割。いつ誰がどこを移動したかという膨大なデータが集まります。政府や党、軍の要人も例外ではありません。車内の会話も録音しているといわれ、機密情報を持つ可能性もあります。

米国で昨年「外国企業説明責任法」が成立するなど、米国上場企業への情報開示圧力は強まっています。これは中国にとっては重大な安全保障上の問題です。

IT企業への締め付けや起業家いじめという文脈ではなく、今後も中国のネット企業の海外上場廃止や取りやめの動きは続くでしょう。

2021年12月3日 14:22

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木村恭子
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説

中国政府は1日に個人情報保護法を施行し、インターネット安全法(2017年施行)、データ安全法(21年9月施行)の3法でデータ統制を徹底する方針です。

Didiについては、記事にもある米ブルームバーグ通信によると、NY証取上場前に政府が「待った」をかけたにもかかわらず決行したので当局が Didiにquickly launched multiple investigations(多角的な調査を即座に開始)し、a range of unprecedented penalties(前例のない罰則)を検討したとのこと。

傘下のファンドがDidi株21.5%を所有するソフトバンクにも関心が集まっています。

2021年12月3日 13:29 (2021年12月3日 13:36更新)

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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説

中国企業が上場先を米国から香港に移す最新事例です。

人やモノと比べて国境を超えやすいマネーの世界でも米中デカップリングが進みます。

もう一つの視点として、香港がアジアを代表する国際金融市場から、中国企業と中国マネーのための「大いなるローカル市場」に変わっていく事を示すニュースです。

2021年12月3日 11:22 (2021年12月3日 11:25更新)』