台湾有事は日米の有事

台湾有事は日米の有事、経済「成長」重視 安倍氏に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE243L80U1A121C2000000/

『安倍晋三元首相は1日、日本経済新聞のインタビューで「台湾有事は日米同盟の有事だ」との認識を示した。東アジアの安全保障環境の変化に柔軟に対応するため、国家安全保障戦略の改定時期を10年ごとに固定しない姿勢が必要だと提起した。

自民党内の最大派閥、安倍派として岸田文雄政権を支える考えを強調した。経済政策では成長に向けた改革を重視すべきだと指摘した。安倍氏は11月に清和政策研究会の会長に就き安倍派に衣替えした。派閥として注力していく政策などを聞いた。

――発足から2カ月近くたった岸田政権への評価を聞かせてください。

「衆院選は大勝だった。首相は総裁選で勝利し衆院選も勝ち抜いて大きな自信になったと思う。最初の人事は非常に重要だ。思うようにやられたのではないか」

――首相が掲げる「新しい資本主義」をどのように理解していますか。

「新自由主義的な政策を転換するという文脈で話している。安倍政権も『成長と分配の好循環』を掲げ、最低賃金の引き上げや賃上げ要請など新自由主義的政策と一線を画してきたつもりだ。首相はそれをより際立たせようという考えだろう」

「しかし成長していく意志と意欲は明確に示し誤解されないようにする必要はある。成長する意志を失った国に未来はひらかない。成長のために改革すべきは改革するという基本姿勢を示せば誤解は解消される」

――新自由主義からの脱却という主張は安倍政権と距離を置くものだとの見方もあります。

「政権が代わればそれまでの政権と違うものを期待される。その要請にこたえるのもトップリーダーの役割だ。同じ自民党だから料理そのものが変わるというより味付けが変わっていくということだろう」

――首相の政策は分配に力点がある印象が否めません。

「安倍政権は成長が先か分配が先かという昔からの論争に終止符を打つとし『次の成長に向けた分配』を掲げた。首相の方針も基本的に変わらないと思う。ただ立憲民主党の分配政策は明らかに間違っている」

――最大派閥として安全保障政策でどのような発信をしていきますか。

「台頭する中国にどう対応し北朝鮮の脅威にどう備えるかだ。安保政策の基本は日米同盟の強化だ。(米中間の)最前線に位置する日本こそリーダーシップをとり有志国との連携を強化する中核でなければならない」

「香港、台湾、チベット、ウイグルにおける人権問題がある。台湾への軍事的威圧を強める中国に世界が懸念している。台湾有事は日本の有事であり日米同盟の有事だ」

――台湾は環太平洋経済連携協定(TPP)加盟を希望しています。

「蔡英文(ツァイ・インウェン)総統はすべてのルールを受け入れる用意があると発言している。私も加盟を支持したい」

――米欧では北京冬季五輪の外交ボイコット論も出ています。

「選手は4年に1度の大会をめざして厳しいトレーニングを積んでおりそうしたことも考えながらの判断になる。人権状況をみると何らかの意志を示す必要があると世界は考え始めている」

――2022年に外交・安保政策の基本方針である国家安保戦略の改定を控えています。

「それに合わせて防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画も改定するだろう。改定時期は10年ごと、5年ごとというくくりはあるが今の時代は変化に応じて次々改定していく姿勢も必要だ」

「安保環境の変化のスピードは非常に速い。技術の進歩で紛争や戦争のあり方も大きく変わった。特にサイバー分野では戦時と平時の境目がなくなりつつある。装備や体制を常に更新していく必要がある」

――「抑止力」は戦争回避が目的だと言われます。

「抑止力とは事態が戦争に発展するハードルを高くすることだ。抑止力が弱いとハードルが低まり相手にとって武力行使の誘因になる。抑止力とは打撃力であり反撃能力でもある」

――周辺国に脅威を与えるという指摘も根強くあります。

「しかし相手が脅威に思うことが抑止力となる。そこでミサイルのボタンを押す手が止まる。皮肉だがそれが現実だ」

――保有を検討している「敵基地攻撃能力」という用語は誤解を生みやすいのではないでしょうか。

「『反撃能力』『打撃力』でいいのではないか。そもそも敵基地に限定する必要はない」

「抑止力としての打撃力をもっぱら米国に依存していては、日本をたたいても米国は報復してこないかもしれないと相手が考える危険がある。反撃する力があって初めて攻撃を思いとどまらせることができる。日米で打撃力を行使するとなれば確実に抑止力になる」

――既存のミサイル防衛システムは本当に機能するのでしょうか。

「決定的な抑止力にはならないが相手の計画を狂わせることはできる」

――憲法改正の議論への姿勢をうかがいます。

「私たちの生活を守るために改憲は本来常に考えていくべきだ。私自身は9条改正を主張してきた。自衛隊が憲法に明記されていない異常な状態に終止符を打つ必要がある。清和研こそ憲法論議の先頭に立つべきだ。使命感をもって取り組む」

――安倍派は岸田政権とどう向き合いますか。

「私も総裁選の決選投票では首相を支持した。最大派閥としてしっかり支えていく。これが我々の総意だ」

――安倍派内には岸田派や麻生派など源流を同じくする派閥がまとまる「大宏池会」構想を警戒する声があります。

「11月30日に麻生太郎副総裁と会ったが、麻生氏の方から『大宏池会を画策しているのではないかと言われるがそんな議論はない』という話があった」

――次期総裁選に向けた安倍派内の人材育成にどう取り組みますか。

「次の総裁選まで3年ある。それまでの実績のなかでそのときにどう判断するかだ。派内に人材が多士済々いる。結果としてどうするかはそのときに考える」

――先の総裁選では無派閥の高市早苗政調会長を支持していました。

「高市氏は多くの予想を上回る票を得た。その期待にこたえていくことが今の高市氏の使命だ」

(聞き手は今尾龍仁)

【関連記事】安倍晋三元首相のインタビュー全文 』