ドイツ新政権、理念先行 問われる欧州の「統合深化」

ドイツ新政権、理念先行 問われる欧州の「統合深化」
メルケルを超えて㊦
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR260WX0W1A121C2000000/

 ※ 『そもそも、ドイツ次期政権で首相と外相のどちらが外交を仕切るのか明確でない。メルケル時代はEU、米中ロなどの主要国・地域は首相、残りは外相という暗黙の了解があった。

次期外相は人権にこだわり、あつれきをいとわない緑の党出身のベーアボック氏。争いごとを嫌うショルツ氏と、どちらが司令塔になるかで外交のトーンが異なる。』…。

 ※ 出発時から、それか…。

 ※ 「人権」や「理念」で押し切れるほど、「現実」は生易しいものじゃ無いだろう…。
 ※ 欧州も、前途多難だな…。

 ※ 「統合深化」≒「各国の国家主権の、自主的制約」だからな…。

 ※ 当然、「その見返りは?」という話しになるだろう…。

『南欧債務、ウクライナ、難民――。12月に退任するドイツのメルケル首相は16年の在任中、危機対策に奔走し、四分五裂の欧州をまとめたと評される。だが、自国の利益を優先した漸進主義的な対応は欧州連合(EU)域内の亀裂を深めたとの批判もつきまとう。

「通貨ユーロが崩壊すれば、欧州統合も崩壊してしまう」。メルケル首相は2010年、ドイツ議会の演説で、南欧不安への危機感を募らせた。だが実際にはドイツの国内世論に配慮し、支援は後手に回った。信用不安が増幅され、南欧経済が収縮した結果、支援額はギリシャだけで2000億ユーロ(26兆円)を超えた。

15年の難民危機では周辺国との調整を欠いたまま、ドイツが大規模な難民受け入れを決めた。保守的な東欧に瞬く間に反独感情が広がり、欧州統合に遠心力がかかった。

ドイツの利益にこだわるメルケル氏はドイツ国民から「ムティ(母)」と慕われたが、欧州全体のことを考えていないと南欧や東欧は不信感を募らせた。

債務危機が深まった12年、ショルツ次期首相は野党だった社会民主党(社民党、SPD)の副党首だった。「南欧が財政規律を守ることを条件に支援すれば、ドイツの有権者の理解は得られる」。当時、取材に南欧を助けるべきだ、とはっきり語っていた。

「欧州の利益を考える」。24日公表の連立合意書には親欧州の方針が明記され、メルケル時代との違いを印象づけた。

ただ、ドイツの親欧姿勢だけで欧州がまとまるほど甘くはない。波乱要因はあちこちにある。

リベラル色の濃い次期政権の看板政策は人権重視。「人権政策は国家のあらゆる面にかかわる」とうたう連立合意書には「人権」という言葉が数十カ所も出てくる。

しかし東欧のハンガリーやポーランドは性的少数者の権利を制限し、法の支配を軽んじる。EUの会合でドイツが東欧批判に走れば、域内亀裂のもとになる。

そもそも、ドイツ次期政権で首相と外相のどちらが外交を仕切るのか明確でない。メルケル時代はEU、米中ロなどの主要国・地域は首相、残りは外相という暗黙の了解があった。
次期外相は人権にこだわり、あつれきをいとわない緑の党出身のベーアボック氏。争いごとを嫌うショルツ氏と、どちらが司令塔になるかで外交のトーンが異なる。

理念先行で、欧州をどこに導くのかはみえない。関心領域がアジアに移る米国に代わり、欧州の安全保障をどう担うか。財政や社会保障などの政策一元化をどう進めるか。

連立協議に際して、統合の先行きを示す具体的な工程表や青写真は議論されたフシすらない。

戦後ドイツの社民党出身首相は高い理想を掲げ、欧州と世界の政治秩序に影響を与えた。ブラント氏(在任1969~74年)は共産圏との融和をうたい、東西デタントを実現。石油危機後の世界経済の安定を志したシュミット氏(同74~82年)は主要7カ国(G7)首脳会議を創設した。

「必ず統合は深まる」と取材に語ったことがあるショルツ氏。盟主として欧州をけん引する覚悟とビジョンが問われている。(欧州総局編集委員 赤川省吾)』