転機の独中蜜月、現実主義の限界 課題は次期政権へ

転機の独中蜜月、現実主義の限界 課題は次期政権へ 
メルケルを超えて㊤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR229B40S1A121C2000000/

 ※ 結局は、「パクス・アメリカーナ」なんだよね…。

 ※ 独仏枢軸(≒EU)が、世界秩序を米抜きで構築できる…、とは思えない…。

 ※ ましてや、英国も「一抜け」したしな…。

『ドイツの首相を16年間務めたメルケル氏が12月に退任する。欧州債務危機への対応などで指導力を発揮したが、現実主義の限界も露呈した。中国との近すぎる距離、欧州統合の停滞といった課題はショルツ次期首相に引き継がれる。

台湾の国際機関への参加を支持し、新疆での人権侵害を取り上げる――。ショルツ氏のドイツ社会民主党、緑の党、自由民主党が24日公表した連立合意書には中国への厳しい言葉が並んだ。

南シナ海問題の国際法による解決や香港の一国二制度の回復も盛り込み、中国はたまらず「内政問題だ」と反発した。

メルケル氏は任期中に12回も訪中し、蜜月と呼ばれる関係を築いた。だが、経済関係強化を通じ相手国の民主化を促すドイツの外交戦略が功を奏したとは言いがたい。米中対立が深まり、中国との結びつきはドイツの強みから弱みに変わった。

恩恵を受けてきたはずの産業界からも悲鳴が上がる。ドイツ産業連盟(BDI)のヨアヒム・ラング事務局長は9月の声明で、ドイツ企業が中国で「差別的な産業政策」に直面していると訴えた。

中国政府は米国に対抗するため自己完結型の経済、安全保障に力を入れ、進出企業に現地化の圧力が強まっている。

ドイツにとって、冷戦後に広がった自由貿易と多国間主義は生命線だった。経常収支は1990年代は赤字だったが、2010年代に国内総生産(GDP)比で8%前後の黒字となった。強いドイツ経済がメルケル氏の人気を支え、16年もの長期政権を可能にした。

しかし、政権末期は米中の国力接近を背景に両国の対立が激化した。米国では自国優先、同盟軽視のトランプ大統領が誕生、民主主義陣営の結束も揺らいだ。

メルケル氏が20年末に半ば強引に取りまとめた欧州連合(EU)と中国の投資協定は人権問題への反発が強まるなかで頓挫。メルケル氏が自国の利益を優先している印象だけが強まった。

独フォルクスワーゲンの販売台数の4割を中国市場が占めるなど、企業の中国依存が後戻りできないほどに高まっているなかでの方針転換には難しさもある。

ケルン大学のトーマス・イエーガー教授は「音楽を決めるのは中国」と語り、ドイツが主導権を握れるかを危ぶむ。

「政治とは何が可能であるかだ」。メルケル氏はかつて政治の本質をこう喝破した。実現できない理想にこだわらず、実現可能な解をたぐり寄せる現実主義がメルケル政治の真骨頂だった。

ただ、そうした態度が越えてはならない「レッドライン」を曖昧にし、強権国家を勢いづかせた面は否めない。

ドイツにガスを直接運ぶパイプライン計画(ノルドストリーム2)を進めるロシアは、ウクライナ国境の部隊を増強中と伝わる。危機をあおり米欧との取引に持ち込むのが、プーチン大統領の常とう手段となった。

ドイツにとって幸福だった時代の終幕とともにメルケル氏は表舞台を去る。「何度も命を吹き込み、守らなければならない」。旧東ドイツ出身のメルケル氏は民主主義擁護を繰り返し説いた。

分断の深まる世界にショルツ氏が向き合うには理想を貫く覚悟も必要になる。価値観をともにするパートナーとの連帯がカギになる。

(ベルリン=石川潤)』