増産要請、産油国はゼロ回答 米シェールは生産停滞

増産要請、産油国はゼロ回答 米シェールは生産停滞
脱炭素移行の不都合な真実(2)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR19D4X0Z11C21A1000000/

 ※ この点は、トランプ政権の方が、明確だったな…。

 ※ シェール・オイル、シェール・ガスの「戦略上の位置づけ」の把握がハッキリしていた…。

 ※ バイデン政権は、「気候変動対策」「CO2の削減」を政策として掲げてしまったんで、「自縄自縛」に陥っている…。

 ※ 「It’s the economy,stupid.((日本語訳:「経済こそが重要なのだ、愚か者め」)」ということだと思うんだが…。

 ※ ガソリン代が値上がりすれば、大衆の不満は蓄積し、中間選挙に響くと思うんだが…。
 
 ※ 民主党政権においては、内部対立が激化する「テーマ」なんだろう…。

『原油相場が7年ぶり高値をつけた後も、主要産油国は増産を急ごうとしない。値崩れを防ぎ、この機に石油輸出収入を増やす思惑が透ける。新型コロナウイルスの感染拡大で原油需要が減り相場急落に苦しんだ昨年から一転、価格決定の主導権を握る「売り手市場」を長引かせようとするかのようだ。米国内でのシェールオイルの生産は伸び悩み、売り手市場を許す一因となっている。

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石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどでつくる「OPECプラス」は4日、追加増産を見送った。毎月、日量40万バレルずつ小幅に増産する従来の方針を変えなかった。10月にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物が一時1バレル85ドル台と2014年以来の高値をつけ、日米など消費国は増産を加速するよう求めていたが、OPECプラスは「ゼロ回答」を貫いた。
7年ぶり高値でも「来年は供給過剰」

増産に応じないのは、今は需給に逼迫感があっても来年は供給過剰に陥るとみるからだ。「12月に在庫が積み上がり始める。(22年の)第1四半期には膨大な量が追加される」。OPECを主導するサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は同日の記者会見で、需給の緩みに警戒感を示した。新型コロナの感染再拡大で需要が鈍り、また相場が弱含む懸念も消えない。

「石油は問題ない」とも言ってのけた。歴史的な高騰を演じた天然ガスや石炭こそが問題であり、産油国だけが帳尻合わせに追われるいわれはないとの思いがにじむ。

OPECはかねて「必要な投資なしには将来、エネルギー不足の可能性がある」(バルキンド事務局長)と警告してきた。脱炭素で化石燃料の開発は敬遠され、投資縮小に向けて金融機関や市場の圧力は増す。国際石油資本(メジャー)は石油ではなく再生可能エネルギーに資金を振り向ける。

だが、油田を開発して生産量の減衰を補うには費用と時間がかかる。こうした投資に背を向けて再生エネをもてはやしながら、必要な時だけ中東やロシアに原油の増産を迫るのは矛盾ではないのか――。原油高はこんな問いを消費国に突きつけた。

ロシアのプーチン大統領は10月、WTIが1バレル100ドルまで上がるかと問われて「大いにあり得る」と答えた。国際通貨基金(IMF)の推計では、21年の財政収支を均衡させる原油価格はサウジなら82.4ドルで、80ドル台は高すぎる水準ではない。
米シェール、バイデン政権下で逆風

水圧で岩盤に亀裂を入れて採掘するシェールオイルによって、米国は世界最大の産油国となった。80ドル台の原油相場なら米国の大半のシェール油井は採算が取れる水準だが、掘削装置(リグ)の稼働数は低迷が続いている。伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリーの伊藤敏憲代表によると、足元の稼働数は500弱で、WTIが現在の同等の水準だった14年後半に稼働数が1000を超えていたことを考えると、約半分にとどまる。
米テキサス州の石油施設=ロイター

シェールの開発企業の多くは財務面が脆弱で、「環境対策を打ち出すバイデン政権下では新規の投資もしにくく、需要急増に対応できていない」(伊藤氏)という。シェールオイルの採掘方法に対しても「環境破壊につながる」との批判がくすぶっており、新規投資をためらわせる一因になっている。

バイデン米政権は批判の矛先を中東産油国やロシアに向け、日本、中国、インド、韓国、英国と協調して石油備蓄の放出に踏み切る。価格の抑制を狙って主要消費国が一斉に備蓄を放出するのは異例の措置だ。ただ、放出できる量には限度があり、どこまで価格を抑えられるかは不明だ。

ロイター通信によると、OPEC加盟の有力産油国であるアラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は23日、消費国の備蓄放出に関し「備蓄の増減について我々が相談を受けることはない」と語った。仮に価格を押し下げることができたとしても、備蓄放出が産油国の反発を招けば、増産意欲が一段と下がる恐れがある。消費国は結局、供給量の低迷という難題から逃れられそうにない。
天然ガス、存在感増すロシア
欧州で天然ガス相場の高騰が続いている。指標となるオランダTTFは翌月渡しの先物取引で17日、1メガワット時あたりの価格が一時100ユーロを再び超えた。前日にドイツ政府が新たなパイプライン計画「ノルドストリーム2」の認可手続きの中断を発表し、需給逼迫の不安が蒸し返された。
春先から右肩上がりをたどってきた天然ガス価格は9月に騰勢を強め、10月6日には過去最高値の155ユーロをつけた。

その要因は複合的だ。新型コロナウイルスの感染がいったん下火となり、経済活動の再開でエネルギー需要は回復する。とはいえ、各国が脱炭素に取り組むなか、石油や石炭の消費を大きく増やすわけにはいかない。この結果、化石燃料では相対的に温暖化ガス排出量が少ない天然ガスに需要が集中する。

一方、欧州連合(EU)にとって最大の輸入元であるロシアで、国営ガス会社のガスプロムからの供給が不十分との懸念が広がり、先物市場は買いが買いを呼ぶ展開となった。

国際エネルギー機関(IEA)は9月、「ロシアにはもっとできることがあるはずだ」と名指しで供給増に協力を求める声明を出した。だが、供給がその後大きく増えた形跡はない。
国営のガスプロムはプーチン大統領の指揮下にある=ロイター
欧州とロシアを結ぶ新パイプライン、稼働に遅れ
ここにきて欧州を悩ますのは、バルト海経由でロシアとドイツを結ぶパイプライン「ノルドストリーム2」を巡る混乱だ。ウクライナを経由しないことで安定供給につなげる狙いがあったが、ロシア依存度が深まるとして米国や中東欧諸国が反対。英国もトラス外相が14日付の英日曜紙サンデー・テレグラフへの寄稿で「ノルドストリーム2は欧州の安全保障を損なう」と訴え、計画撤回を求めた。

パイプラインは既に完成しているが、ドイツの認可作業が中断して稼働時期が読めない状況に陥った。ノルウェーのエネルギー調査会社ライスタッド・エナジーは、認可の完了は早くて22年4月と予測する。ガス需要が最も高まる冬場には間に合わない公算が大きい。

欧州での天然ガス価格の急騰は、日本にとっても決して対岸の火事ではない。日本は液化した天然ガス(LNG)を専用船に積んでオーストラリアなどから輸入している。欧州での価格急騰の余波で、アジア地域のLNGのスポット(随時契約)価格も上昇している。アジアでも化石燃料の中では温暖化ガスの排出量が少ない天然ガスに需要が集中し、中国や韓国、台湾などが調達を増やしている。

=つづく

カイロ=久門武史、ロンドン=篠崎健太が担当した。

[日経ヴェリタス2021年11月28日号巻頭特集より]』