EU、中国重視からの方針転換鮮明 民主主義国と協力

EU、中国重視からの方針転換鮮明 民主主義国と協力
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR2603V0W1A121C2000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)が対アジア政策で中国重視の方針転換を鮮明にしている。25~26日にオンライン形式で開いたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、EU首脳は自由や人権など基本的な価値を共有する民主主義の国と協力を深める方針を表明した。一部の国は台湾との関係強化に動いており、中国も敏感になっている。

「多くのアジアのパートナーが我々の見方を共有しているのを知っている」。EUのミシェル大統領は25日、オンラインでの演説で普遍的な民主的権利や基本的な自由に基づいて協力を深めようと呼びかけた。インフラ支援での「透明性」やルールに基づく国際秩序の重視を訴え、名指しはしなかったものの、強権的な対応や従来のルールを軽視した動きが目立つ中国をけん制した。

経済関係を柱に密接な関係を築いてきた中国と欧州の関係が揺らぎ始めたのは、中国の強権的な対応が目立ち始めてからだ。香港では自治や表現の自由などが強く制限され、中国・新疆ウイグル自治区での人権問題が浮かび上がった。

3月には少数民族ウイグル族の不当な扱いが人権侵害に当たるとして約30年ぶりの対中制裁に踏み切った。状況に改善はみられず、近く制裁の延長を決める方向で調整が進んでいる。中国の振る舞いに目をそらして経済的な利益を追い求めるわけにはいかない。

EUの欧州委員会が23日公表した報告書によると、2020年の中国によるEU企業のM&A(合併・買収)件数は前年に比べ63%落ち込んだ。欧州委は新型コロナウイルス禍に加え、EUと加盟国が買収規制を強化したためとみる。

EU加盟国は東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドなどとの関係を深める方向に傾いている。フランスのルドリアン外相とインドネシアのルトノ外相は24日、インドネシアの首都ジャカルタで会談し、両国の防衛協力の強化に向け22年に外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を始めることで合意した。フランスは22年上半期にEU議長国として「インド太平洋地域との関係強化が優先事項になる」(ルドリアン氏)との立場も表明した。

EUはインドとの自由貿易協定(FTA)交渉を年内にも再開したい一方、大筋合意した中国との投資協定案の批准手続きを事実上棚上げした。加えて安全保障・経済両面から台湾との関係強化に動く。ロイター通信によると、台湾高官は25日、チェコなど東欧3カ国と半導体での協力を検討していると明らかにした。フランス下院は近く台湾の国連機関加盟を求める決議を実施する見通しだ。

米国との対立を深める中国は、欧州とは対立を深めたくないというのが本音だ。ASEM首脳会議に参加した李克強(リー・クォーチャン)首相は25日、「アジアと欧州諸国が相互尊重、互恵の精神で共同発展の力強いエンジンをつくり上げさえすれば、協力の新たな局面にすることができる」と語った。

EUとしても現段階で中国を敵視しているわけではない。フォンデアライエン欧州委員長は25日、「地政学的な分断を乗り越えて、(アジア地域と)協力を模索したい」と語った。経済面での関係もある程度維持したいとの思いがにじむ。』