米、習氏側近と対話ルート 台湾巡りなお溝深く

米、習氏側近と対話ルート 台湾巡りなお溝深く
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『【ワシントン=中村亮、北京=羽田野主】米中が国防トップの対話を調整するのは、最低限の軍事対話ルートを確保して緊張緩和につなげる狙いがある。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は3期目入りが確実視されている。習氏への一段の権限集中を見据え、オースティン米国防長官は習氏に近い共産党中枢との関係構築を目指す。

中国国防省の報道官は25日、記者会見し「中国側は両軍関係の発展を重視し、米国側と交流協力を維持することを望んでいる」と発言し、対話に応じる姿勢をみせた。

米政府高官は15日(米東部時間)に開いた米中首脳のオンライン協議の目的について、双方が互いに意図を読み違えて軍事衝突に発展するのを防ぐ共通認識をつくると説明した。年内実施を目指す国防トップの対話は衝突回避に向けた具体策となる。

オースティン氏は共産党中央軍事委員会の許其亮副主席との対話を目指す。米国防総省のカービー報道官は8月の記者会見で国防長官の対話相手をめぐり「中国との重要な問題での議論という目的においては副主席レベル(が適切)であると明確に言ってきた」と述べた。

許氏は中央軍事委員会で主席の習氏に続くナンバー2を務める側近。中国人民解放軍の実情に詳しい関係者は「軍の日常の実務は事実上許氏が取り仕切っている」と話す。

国防長官はこれまで中国国務院(政府)に属する国防相と頻繁に対話してきたが、中国は党が意思決定の主導権を握る。習氏は11月に開いた共産党の重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)で異例の3期目に向けた足場を固めた。

米政権は習氏への権限集中がさらに進むとみており、習氏の側近との関係づくりを急いでいる。今後は人工知能(AI)やアルゴリズムを駆使した戦闘が起きる可能性が高く、軍事作戦の実行スピードが上がる。偶発的衝突をきっかけとした戦闘激化を防ぐ時間的猶予は狭まり、国防トップの迅速な意思疎通が重要になる。

バイデン政権は国防トップの対話を皮切りに実務レベルの対話も活性化させたい考えだ。国防総省によると、米中の国防当局の実務者協議などは2020年に4回にとどまった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、前年の18回から大きく減った。

21年9月末には、米国のマイケル・チェイス国防副次官補(中国担当)と中国共産党中央軍事委員会の黄雪平・国際軍事協力弁公室副主任が米中国防政策調整協議をオンライン形式で開いた。両氏は8月にも協議していたが、軍事当局の対話はなお低水準との見方が多い。

米中間で不測の事態に至るリスクは高まっている。米国防総省が11月上旬に公表した中国の軍事力に関する年次報告書によると、中国は20年後半に米国が中国との紛争を近く起こすと認識していた。

この時は米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長が公式ルートを通じて中国高官と接触し、中国側の懸念を払拭した。

米国防総省高官は今年11月、記者団に対し「現状の2国間関係を踏まえると誤解が起きる可能性を示すものだった」と20年当時の状況について説明した。「国防当局による効果的かつタイムリーな対話の重要性を明らかにした」とも語った。

中国も米国との偶発的衝突を望んでいない。22年2月には北京冬季五輪が控える。軍トップの対話で衝突リスクを回避し対米関係の安定を目指す。中国の軍事関係者は「中米間で安全保障分野を巡る対話のメカニズムを構築する」と話す。

それでも、米中の緊張緩和が進むかどうかは不透明だ。習氏はバイデン氏に対して「台湾独立の分裂勢力が挑発的に迫り(越えてはならない)レッドラインを突破すれば断固とした措置を取らざるを得ない」と伝えた。

米国では中台統一に向けて武力行使を排除しない立場を示したと受け止められている。中国国防省報道官は25日の記者会見で、台湾をめぐり「中国にはいかなる妥協の余地もなく、米国はいかなる幻想も抱いてはならない」と付け加えることを忘れなかった。

米海軍第7艦隊も22日、ミサイル駆逐艦ミリアスが現地時間23日に台湾海峡を通過したと明らかにした。首脳協議後も台湾をめぐり譲らないバイデン政権の姿勢を示した。中国が実効支配を進める南シナ海でも米中の緊張が続いている。』