ドイツ、メルケル氏後継にショルツ氏

ドイツ、メルケル氏後継にショルツ氏 3党が連立合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR249PS0U1A121C2000000/

『【ベルリン=石川潤】9月の独連邦議会選挙で第1党になった中道左派のドイツ社会民主党(社民党、SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党が24日、連立政権の樹立で合意した。社民党のショルツ財務相が、16年間首相を務めたメルケル氏の次の首相に就任する。ショルツ氏は24日の記者会見で「この国を良くするという意志が我々を結びつけた」と語った。

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各党の手続きや連邦議会での議決を経て、12月上旬に新政権が発足する見通しとなった。これまではメルケル氏の中道右派、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社民党による大連立政権だった。2005年まで続いたシュレーダー政権以来、16年ぶりの社民党主導の政権となる。メルケル氏は首相退任後、政界を引退する。

新政権は格差の是正と温暖化対策に政策の軸足を置く。連立合意には、最低賃金を時給12ユーロ(約1500円)に引き上げることを盛り込んだ。脱石炭の時期はこれまでの38年から30年への前倒しを目指す。再生可能エネルギーの比率は30年に80%としたい考えだ。温暖化対策を急ぐため、大規模な投資も進めていく。

外相のポストは緑の党が獲得した。人権問題などで中国やロシアに厳しい発言をしてきた同党のベーアボック共同党首の就任が有力だ。ショルツ氏は中国などとの経済関係を重視したメルケル氏の路線をある程度継承するとみられるが、米中の対立が深まるなか、中国と蜜月といわれたドイツ外交も転機を迎えつつある。

温暖化対策を円滑に進めるため、経済、気候変動を統括するポストを新設。緑の党のもう一人の共同党首、ハベック氏が就任するとの見方が強い。財務相ポストはFDPが獲得し、健全財政を唱える同党のリントナー党首が就任する見込みだ。

ドイツでは新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、動きが鈍い政府への不満が高まっている。ワクチン接種の義務化などが検討課題に浮上しており、ショルツ氏はさっそく試練に直面することになる。
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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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別の視点

2カ月前の総選挙の時点では、感染状況が落ち着いており、コロナ対策は目立った争点ではなかったものの、足もとでは感染者数がこれまでのピークを大きく超える勢いで増え、3党連立政権が最優先で取り組むべき課題となりました。

経済自由主義、債務ブレーキによる健全財政重視、市場メカニズムを重視した脱炭素化政策を掲げるFDPはコロナ対策でも行動制限に慎重な立場。若年層の支持を集めた一因と言われます。

ドイツのワクチン接種率が主要国の中でも低い背景には、若年層のワクチン忌避があると言われます。職場での規制導入などで、ワクチン接種率の引き上げと感染抑制に成果を挙げることができるかが当面の焦点です。

2021年11月25日 7:49

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井上恵理菜
日本総研調査部 副主任研究員
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ひとこと解説

クリスマス前までの政権樹立を目指していましたので、比較的スムーズに3党連立合意に至ってよかったです。

16年間のメルケル政権を陰で支えたのは、シュレーダー前政権(SPD)の労働市場改革に起因するドイツ経済の安定成長といわれています。

メルケル政権の功績としては世界金融危機や欧州債務危機を乗り越えたことがまず挙げられますが、より多くの功績(あるいは負の遺産)がこれから明らかになるのかもしれません。
2021年11月25日 6:52

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滝田洋一
日本経済新聞社 編集委員
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別の視点

ショルツ次期首相については、ブルームバーグが驚くべき記事を伝えています。「ドイツ猛烈な感染拡大の裏側、ショルツ氏がメルケル氏の警告無視」(11月25日)。それによれば、メルケル氏がコロナ対策の厳格化を求め、国内16州の首相を集めた会合を提唱したのに、ショルツ氏が取り合わなかったというのです。

記事の通りならば、ショルツ氏は財務相として閣内にいたわけですから、現在の感染拡大への政治的な責任は免れないでしょう。

9月末の総選挙で敗れたメルケル氏が影響力を失う一方、ショルツ氏は連立相手と政策のすり合わせや閣僚ポスト配分に明け暮れた。その隙をコロナが突いたのです。新政権には発足早々、赤信号がともります。

2021年11月25日 10:05 (2021年11月25日 10:53更新)

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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
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分析・考察

「『信号(連立)』が誕生する」。ショルツ次期首相はドイツ社会民主党(赤)、緑の党、自由民主党(黄)による連立政権の樹立合意をこう宣言しましたが、その前に感染が急増する新型コロナ対策の説明に5分間を費やしました。

これが現実です。本来はコロナ対策に全力投球すべきところ、政権移行の「空白」に国民の不満が募っているはずです。

史上初の3党連立は「対等の立場」(ショルツ氏)だと言いますが、細部にわたる各党の主張の違いがほどなく表面化するのは避けられません。

次期政権は物静かで強固にドイツを16年率いたメルケル氏の政権運営と常に比較されるでしょう。難局の中の船出で、結束を維持できるかどうかに注目したいです。

2021年11月25日 7:43』