欧州の新規感染最多 規制強化に逆戻り

欧州の新規感染最多 規制強化に逆戻り、飲み薬承認も
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『新型コロナウイルスの感染が再拡大している欧州で、ロックダウン(都市封鎖)などの行動制限に逆戻りする国が相次いでいる。オーストリアでは22日からロックダウンに入り、ワクチン接種も義務化する。厳しい行動制限には国民の反発が大きく、経済を冷え込ませる。感染抑制と経済の両立に向けて各国で手探りが続いており、欧州連合(EU)は治療用飲み薬の緊急使用を承認した。現状では感染が抑えられている日本も今後の対応策を検討する必要がある。

欧州の1日当たりの新規感染者数は30万人以上で推移している。一時落ち着いていた感染者数は9月以降急速に増え、足元では2020年のピーク時を超えて最多の水準だ。北米やアジアなどと比べても欧州の突出ぶりが目立つ。

オーストリアやドイツは直近2週間で過去最高を記録し、オーストリアは22日から全国民を対象にロックダウンを実施する。食品の買い出しや通院を除き外出禁止となる。

シャレンベルク首相は19日の記者会見で「感染の第5波、6波、7波は望んでいない」と厳しい表情で語った。同国のロックダウンはこれで4回目。前回は20年12月下旬から今年2月上旬まで続いた。

1日あたりの感染者は1万5000人前後と急増している。政府はワクチン接種完了率が6割台と欧州主要国と比べ低いことへの危機感が強く、来年2月からは接種を義務化するなど、一段と厳しい対策に踏み込んだ。

ベルギーも医療従事者へのワクチン接種を義務付けるとともに、企業などに週4日の在宅勤務を義務付けた。

ドイツはワクチン未接種者を対象とした行動制限を決め、感染の広がっている地域で飲食店などが利用できなくなる。集中治療を受ける患者数の増加で医療システムが逼迫しつつあり、感染に歯止めがかからなければロックダウンも視野に入れているもようだ。

相次ぐ行動制限に対しては批判もある。オランダでは政府が実施を予定する新たな行動制限策に市民が反発。ロッテルダムでは一部で暴動に発展し、けが人が発生する事態となった。

欧州で感染拡大が際立つ理由は明らかではない。ワクチン接種の開始時期が早く、接種完了からの時間経過で予防効果が薄れている、行動制限の緩和が拙速だった、マスク着用などの予防策が徹底されていない、などの指摘もある。

収束の兆しが見えない状況は市場の投資家心理にも影を落としつつある。欧州主要600社の株価指数である欧州ストックス600は19日に続落し、米国株にも売りが波及した。

EUの欧州医薬品庁(EMA)は19日、米製薬大手メルクが開発したコロナの軽症者向けの飲み薬「モルヌピラビル」の緊急使用を認める勧告を出した。正式な販売承認を待たず、加盟国が緊急使用できるようにした。症状が出てから5日以内に服用すれば、入院や死亡のリスクを低減できるとの見解を示した。
集中治療室で働く医療従事者(19日、ベルギー・アントワープ)=ロイター

ワクチンによって重症化や死亡のリスクは抑えられている。英国の死者数(陽性確認から28日以内の死亡)は1月のピーク時の9分の1にとどまる。ワクチンに加えて飲み薬が普及すれば、コロナ対策の選択肢は広がる。

日本は感染者が急減しているが、今後の再拡大を警戒する声もある。日本でワクチンを2回接種した人は全人口の75%を超え、主要7カ国(G7)ではトップだ。しかし、今後は感染症が流行しやすい冬に入り、経済活動の再開で人流が増える。

ワクチンの効果はおおむね半年で下がるとされる。日本感染症学会前理事長で東邦大学の舘田一博教授は「ワクチンの効果が下がった人が増え、新年会や忘年会も重なり、ピークを作りやすい時期になる」と注意を呼びかける。検査体制の見直しや病床確保など、今後の感染拡大を見据えた対策も必要になりそうだ。(ウィーン=細川倫太郎、越川智瑛)』