[FT]投資成功の「セオリー」はまやかしか

[FT]投資成功の「セオリー」はまやかしか
著名教授が金融界の「再現性の危機」を告発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM171BK0X11C21A1000000/

 ※ 『 Pハッキングとは、研究者があからさまに、あるいは無意識のうちにデータを歪曲(わいきょく)し、変動要素の間に一見説得力があるが、突き詰めると偽の関係を見つけ出すことを言う。具体的には、計算の方法や、対象数値の期間を都合良く設定したりすることだ。統計上、狭い範囲で有意にみえても、それが真に意味があるとは限らない。机上で黄金のように見えるトレーディング手法も、実行すると石炭の塊のようなものということもあり得る。』

『ハーベイ教授はPハッキングが発生する原因は、学術界のインセンティブにあると考える。めざましい研究成果を一流の学術誌に載せれば、若い野心的な教授には、大学での終身在職権という究極の見返りがあるのだ。検証に耐えられない仮説のために何カ月もの時間を無駄にするのは誰しも苦痛だ。いきおい、データをねじ曲げて、他の研究者が再現できなくとも、興味深い結果を出したくなるわけだ。』

『言うまでもなく、命に関わる医療分野では再現性の危機には大きな代償が伴う。しかし、ハーベイ氏によれば、金融界における再現性の危機もビジネススクールの白亜の塔の中にとどまる話ではないという。投資業者はしばしば、市場平均を上回るとみられる定石を嗅ぎつけて金融商品の売り込みに利用するため、(Pハッキングに基づく研究結果は)「実世界ににじみ出してゆく」という。「人々のポートフォリオの中に確実に入り込む」というわけだ。』…。

 ※ 「データ解析」「統計学」と言っても、この程度だ…。

 ※ いくら「科学的」「実証主義」を叫んだところで、限界がある…。

 ※ 「リンゴが木から離れて、地面に落ちる。」のは「自明のこと」でも、「人がある行動をとる。」かどうかは、「予測不可能」だ…。せいぜいが、過去の事象から「推測して」「その確率」をはじき出すのが関の山だ…。

 ※ この世の中、「その程度の確率計算」で、自分の行動を決定するのは、相当に「冒険」だ…。

 ※ 結局は、「一か八か」になる他は無い…。

 ※ まあ、それでも、「なんぼかでも、有利になる方向」を求めて、みんな血眼(ちまなこ)で足掻くわけなんだが…。

 ※ 「欲」が基本にあるんで、「悟りを開いて、”解脱”する」他に、「救いの道」は無い…。

『映画「ブレードランナー」の安上がりな二番煎じのように聞こえるだろうか。科学界では過去10年、権威ある研究結果の多くが、検証して再現できないという「再現性の危機」に見舞われており、大きな影響が出ている。投資界にも同様のことが起きているのかもしれない。
デューク大学のキャンベル・ハーベイ教授(金融学)は、一流の金融専門誌に掲載された400もの利益確保手法のうち、少なくとも半分は偽りだと考えている=デューク大学提供

米デューク大学で金融学を教えるキャンベル・ハーベイ教授は、金融界にもこの危機が起きていると主張し、論争に火をつけようとしている。同氏は、これまでに一流の金融雑誌が掲載した市場を制するとされる400の投資戦略の少なくとも半分は虚構だと考えている。さらに悪いことに、研究者の多くがそれを認めていないとして、同氏は憂慮を深めている。
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同教授は「これは大きな問題だ」と言う。「金融界が再現性の危機に対処するための最初の一歩は、それが起きていることを認めることだ。しかし現状では、同僚の多くがその認識に達していない」

ハーベイ教授は、名もなきアウトサイダーではなく、世間の関心を引くために異説を唱えて不要な議論を起こす人物ではない。同氏は、主要金融研究誌ジャーナル・オブ・ファイナンスの元編集者であり、米金融学会(AFA)の会長も務めた。米リサーチ・アフィリエイツや英マン・グループといった投資会社のアドバイザーでもある。

同氏は150以上の金融に関する論文を書いており、そのいくつかは威信ある賞を得ている。1986年のPhD(博士号)論文では、債券市場曲線から景気後退を予測できることを初めて立証した。要するに、彼の主張は子供が「王様は裸だ」と言っているのとはわけが違う。ハーベイ教授は2015年以来、金融学会を厳しく批判してきたが、それは、王様が遺憾にも自分は裸であると自ら宣言しているに等しいのだ。

「再現性の危機」とは何か、それがどのように起こっているか、金融にとっての意味合いは――。それらを理解するには、間口を広げて、その発端からみるとよいだろう。
「Pハッキング」の誘惑

米スタンフォード大学の医学教授、ジョン・ヨアニディス氏は05年、「発表された研究結果のほとんどが虚偽である理由」というエッセイを発表して世間を驚かせた。同教授はこの中で、医学研究論文の多くが他の研究者には再現できないと指摘した。その後、他の分野でも研究論文に厳しい目が向けられるようになり、同様の結論に至った。問題の核心は、研究者が「Pハッキング」と呼ぶ事象にある。

統計学の世界で、P値は、研究結果が純粋な偶然によるものである確率を示す。例えば、「ニコラス・ケイジの映画出演本数と、米国のプールで溺死した人の数」の相関関係を示す数値に、「統計学的に意味があるかどうか」の確率を示す数字だ。P値は、ある薬に本当に効果があるかどうかや、割安株がいずれ値上がりするかどうか、といったことの指標にもなる。

Pハッキングとは、研究者があからさまに、あるいは無意識のうちにデータを歪曲(わいきょく)し、変動要素の間に一見説得力があるが、突き詰めると偽の関係を見つけ出すことを言う。具体的には、計算の方法や、対象数値の期間を都合良く設定したりすることだ。統計上、狭い範囲で有意にみえても、それが真に意味があるとは限らない。机上で黄金のように見えるトレーディング手法も、実行すると石炭の塊のようなものということもあり得る。

ハーベイ教授はPハッキングが発生する原因は、学術界のインセンティブにあると考える。めざましい研究成果を一流の学術誌に載せれば、若い野心的な教授には、大学での終身在職権という究極の見返りがあるのだ。検証に耐えられない仮説のために何カ月もの時間を無駄にするのは誰しも苦痛だ。いきおい、データをねじ曲げて、他の研究者が再現できなくとも、興味深い結果を出したくなるわけだ。

言うまでもなく、命に関わる医療分野では再現性の危機には大きな代償が伴う。しかし、ハーベイ氏によれば、金融界における再現性の危機もビジネススクールの白亜の塔の中にとどまる話ではないという。投資業者はしばしば、市場平均を上回るとみられる定石を嗅ぎつけて金融商品の売り込みに利用するため、(Pハッキングに基づく研究結果は)「実世界ににじみ出してゆく」という。「人々のポートフォリオの中に確実に入り込む」というわけだ。
年明けに注目対決

大量のデータを分析するクオンツの手法で著名な米AQRキャピタル・マネジメントも、投資家が常に市場平均を上回るリターンが得られるようなファクター(共通の要因)が何百も存在することには懐疑的だが、「再現性の危機」に関する騒ぎは行き過ぎだと考えている。同社は今年、研究結果を検証した結果、過半数が再現できただけでなく、実際のトレーディングで「アウト・オブ・サンプル」(戦略の構築に使ったデータと収益をテストするデータを別に検証すること)に耐えられ、国際的なデータでも実証できたとする論文を発表した。

ハーベイ教授はこの反論に納得せず、1月上旬のAFAの年次総会でAQR論文の著者と対面して討論しようとしている。「たいへん興味深い議論になるだろう」と同氏は語る。

投資業界のマニアックな士たちが、新年早々にみられる剣闘士の戦いのような頭脳戦を手ぐすね引いて待っている。

By Robin Wigglesworth

(2021年11月15日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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