外国人就労「無期限」に

外国人就労「無期限」に 熟練者対象、農業など全分野
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE019ZY0R00C21A9000000/

『出入国在留管理庁が人手不足の深刻な業種14分野で定めている外国人の在留資格「特定技能」について、2022年度にも事実上、在留期限をなくす方向で調整していることが17日、入管関係者への取材で分かった。熟練した技能があれば在留資格を何度でも更新可能で、家族の帯同も認める。これまでの対象は建設など2分野だけだったが、農業・製造・サービスなど様々な業種に広げる。

【関連記事】特定技能、家族帯同も拡大「選ばれる国」へ支援拡充急務

別の長期就労制度を設けている「介護」を含め、特定技能の対象業種14分野すべてで「無期限」の労働環境が整う。専門職や技術者らに限ってきた永住への道を労働者に幅広く開く外国人受け入れの転換点となる。

現在、資格認定の前提となる技能試験のあり方などを同庁や関係省庁が検討している。今後、首相官邸や与党と調整し、22年3月に正式決定して省令や告示を改定する流れを想定している。

特定技能は人材確保が困難な業種で即戦力となる外国人を対象に19年4月に設けられた。

実務経験を持ち特別な教育・訓練が不要な人は最長5年の「1号」を、現場の統括役となれるような練度を技能試験で確認できれば「2号」を取得できる。更新可能で家族も滞在資格が得られ、在留10年で永住権取得が可能になる。

入管庁などは、2号の対象に11分野を追加し、計13分野にする方向で調整している。介護は追加しないが、既に日本の介護福祉士の資格を取れば在留延長などが可能となっている。

ただ、自民党の保守派などの間では、外国人の長期就労や永住の拡大は「事実上の移民受け入れにつながりかねない」として慎重論が根強い。結論まで曲折を経る可能性もある。
特定技能の制度導入時、入管庁は23年度までに34万5千人の労働者が不足するとみていた。足元では特定技能の取得者は月3千人程度で推移している。就労期限がなくなれば計算上、20年代後半に30万人規模になる。

かねて国は外国人の長期就労や永住に慎重な姿勢を取ってきた。

厚生労働省によると、20年10月末時点で国内の外国人労働者は172万人。在留期間が最長5年の技能実習(約40万人)や留学生(約30万人)など期限付きの在留資格が多く、長期就労は主に大学卒業以上が対象の「技術・人文知識・国際業務」(約28万人)などに限っている。

「農業」「産業機械製造業」「外食業」など14分野で認められている特定技能も、長期就労できるのは人手不足が慢性化している「建設」「造船・舶用工業」の2分野にとどまる。

新型コロナウイルスの水際対策の影響もあり、特定技能の資格で働くのは8月末時点で約3万5千人。日本商工会議所は20年12月、「外国人材への期待と関心は高い」と対象分野追加などを要望していた。

外国人受け入れ政策に詳しい日本国際交流センターの毛受敏浩執行理事は「現業の外国人に広く永住への道を開くのは入管政策の大きな転換だ」と指摘する。

(外国人共生エディター 覧具雄人)

特定技能

国内で生活する外国人は6月末時点で約282万人。活動内容などによって「永住者」(約81万人)、「技能実習」(約35万人)といった在留資格がある。

出入国管理法改正で2019年に設けられた「特定技能」は技能試験や日本語試験の合格などを条件に、人手不足が深刻な業種14分野での就労を認めている。

出入国在留管理庁によると、8月末時点で約3万5千人のうち、飲食料品製造業(約1万2千人)と農業(約4600人)の2分野で半数近くを占める。3年間の技能実習を終えた人が特定技能の資格取得を望む場合、日本語試験は免除され、実習時と同じ分野なら技能試験の合格も不要になる。

新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限で、新たな人材の確保が困難になった。実習終了後に帰国できない人が、在留資格を特定技能に切り替えて日本に残るケースが相次いでいる。

イブニングスクープ
翌日の朝刊に掲載するホットな独自ニュースやコラムを平日の午後6時頃に配信します。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

岩間陽子のアバター
岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
コメントメニュー

ひとこと解説

事実上のコロナ鎖国をどうにかしないことには、人の入ってきようがないですが、そこをクリアしたとしても、家族連れの外国人を長期に受け入れるような社会インフラを整えずに受け入れるのは、無謀としか言いようがありません。

国がガイドラインを作って自治体単位で様々なサービスを提供して、かつ日本で育つ子供たちのための教育上の配慮も考えなければ、社会的統合など望めません。

逆にこれをチャンスとして、行政も教育も、デジタル化と多言語化を同時に進める計画でやれば、ある種の起爆剤になるかもしれません。

2021年11月18日 0:32

竹中治堅のアバター
竹中治堅
政策研究大学院大学 教授

コメントメニュー

ひとこと解説

特定技能2号の対象分野の拡大は岸田政権が目指す賃上げの政策と極めて矛盾している。

人手不足というが、十分な賃金を支払わないために成り手が十分現れないというのが実態ではないか。高い賃金を支払わないで済む外国人の労働者としての受け入れを拡大するのであれば、これは賃金への下方圧力となる。

新しい資本主義を目指し、中産階級の拡大を目指すのであれば特定技能の資格を緩和するのではなく、対象業種での賃上げを促すべきである。

2021年11月18日 0:12 (2021年11月18日 0:13更新)

蛯原健のアバター
蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー

コメントメニュー

別の視点

移民受け入れ是非の議論を曖昧にしたまま特定技能労働という名の実質的な移民をバンバン受け入れてきたのが現与党の移民取り扱いの歴史である。

支援団体の頑なな姿勢と労働力確保という財界の要請の板挟みにあい、その答えとして玉虫色にしてきた事のツケとして、外国人労働者の教育や社保や不法滞在など様々な人権問題が鬱積しており、その急場凌ぎ的な対応であるが、本質的には真っ向からの国民的な移民論があるべきだろう。

2021年11月18日 8:03
為末大のアバター
為末大
元陸上選手/Deportare Partners代表

コメントメニュー

ひとこと解説

よく単一民族の日本と言われますが、DNAを調べても単一民族ではなく、平安京時代の奈良は世界でも有数の多国籍都市でした。

宗教の共存などを見ても、根本の部分では日本は多文化共生ができると思います。一方で、自分達は何者であるかを定義づけるために作り上げた物語が今も人々の意識の根底に流れていることも感じます。

すでにスポーツの分野ではたくさんの両親が外国籍の日本人が活躍しています。当たり前ですが流暢な日本語を喋り、振る舞いもとても日本的です。

移民の受け入れを正面からしっかり議論し、日本をアジアのジパングと捉え、多民族国家を目指すという方法もあるのではないでしょうか。

2021年11月18日 9:05 (2021年11月18日 9:08更新) 』