仏領ニューカレドニア独立運動に中国の影 高まる緊張

仏領ニューカレドニア独立運動に中国の影 高まる緊張
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM289FX0Y1A021C2000000/

『【シドニー=松本史、パリ=白石透冴】深まる米中対立の余波が「天国にいちばん近い島」として知られる仏領ニューカレドニアにも及んでいる。フランスは太平洋での影響力を保とうとニューカレドニアの残留を望むが、西側諸国の対中包囲網を警戒する中国が独立派を支援しているとの見方も浮上する。来月に予定する独立の是非を問う住民投票を前に地域の緊張は高まりつつある。

ニューカレドニアは19世紀にフランスに併合され1946年に海外領土となった。住民は先住民のカナクが41%、欧州系が24%など。欧州系と先住民の経済格差が広がり、カナクを中心に60年代から独立を求める運動が拡大した。一方で欧州系住民は多くが仏残留を希望する。

独立の是非を決める住民投票は1998年に仏政府と賛成派、反対派による3者協定で実施が決まった。最大3回の投票が可能で1回目は2018年、2回目は20年に実施された。いずれも独立反対の票が賛成票を上回り否決されたが、賛成票は20年46.7%と18年から3ポイント以上伸びた。

最後となる3回目の投票の期限は3者協定に基づけば22年10月だ。期限より10カ月早い投票日の設定は、間隔が空けば独立派が勢いを増すと仏政府が懸念したためとの見方が強い。

独立派をまとめるカナク社会主義民族解放戦線(FLNKS)は10月、仏政府が延期しなければボイコットも辞さない構えをみせたが、ルコルニュ海外県・海外領土相は14日、「やむを得ない事情がある場合のみ投票の延期はありえるが、コロナ感染は改善に向かっている」と語り、12月実施の方針を貫く考えを示した。

独立派がボイコットする可能性がある中でも仏政府が投票実施を急ぐ背景には、米国に対抗して太平洋での勢力伸長を目指す中国の動きもある。「太平洋で対中包囲網をつくらせないようにし、ニッケルなどの資源を確保できる」。仏軍事学校戦略研究所(IRSEM)は10月に発表した報告書で、ニューカレドニアがフランスから独立した場合、中国側にこうしたメリットがあると分析した。

報告書はニューカレドニアの中国系住民らで組織する「中国・カレドニア友好協会」の幹部が独立派指導者のもとで働いていた経歴にも言及。中国が米国やその同盟国の影響力をそぐために、独立運動を支援しているとの見方を示唆した。

ニューカレドニアは世界有数のニッケル産地でもある。ニッケルは電気自動車(EV)などに使われるリチウムイオン電池の材料として需要は増している。フランスから切り離せば、中国がさらに資源確保をしやすくなるのは間違いない。

オーストラリア国立大学のデニース・フィッシャー客員研究員は「独立派が不参加のまま投票を実施すれば、FLNKSは結果の正当性を争うだろう」と述べ、ニューカレドニアで「緊張と不確実性が高まる」と指摘する。ある関係者は「FLNKSが国連などに訴え出た場合、中国が支持する可能性は高い」とみる。

中国は南太平洋で開発援助をてこに影響力を強めてきた。一部の地域が独立すればさらに小国になるため、影響力を及ぼしやすいとの計算があり、独立運動を後押ししているとの見方も出ている。19年にパプアニューギニアのブーゲンビル自治州が独立を問う住民投票を実施した際には、自治州の幹部が中国系ビジネスマンと接触したことを認めている。』