土石流「人災」防止へ問われる法整備

土石流「人災」防止へ問われる法整備 抜け穴対策焦点に
編集委員 谷隆徳
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD016IT0R01C21A1000000/

 ※ 『産業廃棄物ならば廃棄物処理法で処分方法が厳しく定められている。一方で、建設残土は再利用が可能な有価物という位置づけだ。その分、規制が緩く、残土を保管しているという名目で実際には産廃が不法投棄されることもある。』…。

 ※ なるほど、ここがポイントか…。

 ※ 「建設残土」ということだと、「有価物」=個人の所有財産…、という扱いだから、公的機関・公権力の「強制力」を、及ぼしにくいわけだ…。

 ※ そこいら辺を、こういう「業者」は、巧みに突いて来るんだろう…。

 ※ ちょっと疑問なのは、「建設残土」の方は業者の私有財産だとして、それを「置いた」土地の所有関係・土地利用の権利関係は、どういうことになっているんだろう…。

 ※ そっち関係の情報は、あまり出ていないようだな…。

 ※ 犠牲者が「28人」も出た大災害だ…。

 ※ しっかり、「責任追及」しないとな…。

『静岡県熱海市で発生した土石流災害を受けて、政府は再発防止策の検討を始めた。都道府県を通じて全国の盛り土を総点検したうえで、12月にも対策をまとめる。既存の法律の抜け穴をなくし、危険な盛り土の造成を防ぐ総合的な法制度を打ち出せるかどうかが焦点となる。
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7月3日に熱海市で発生した土石流は130棟に上る建物を巻き込み、多数の死傷者を出した。現地では土砂の搬出がようやく進み、被災地に近くて校舎を使えなかった地元の小学校でも11月1日から授業が再開された。

今回の災害が豪雨に伴う単なる天災ではないのは、上流部にあった盛り土が県の条例に違反していたとみられるためだ。条例が定める上限の約3倍の高さがあり、盛り土の量も届け出を大幅に上回っていた。
静岡県警が家宅捜索に入った不動産管理会社の建物(10月28日、神奈川県小田原市)=共同

雨水などを流す排水施設も不備だったもようで、木くずなどの産業廃棄物が混ざっていたことも分かっている。静岡県警が業務上過失致死などの疑いで強制捜査に踏み切ったのも、こうした点に着目したためとみられる。
10年前から危険性を認識

行政の対応にも批判が噴出している。市や県が公表した資料によると、少なくとも2010年の段階で行政も危険な状態にあると認識していたからだ。

11年には造成を続ける不動産業者に対して安全対策を求める措置命令を出す方針を固めたが、結局、見送った。この点でも「人災」といえるのだろう。熱海市議会は地方自治法100条に基づく強い調査権限がある調査特別委員会(百条委員会)を設置し、災害の経緯や市の対応などについて調べることを決めた。

土砂を人工的に固めた盛り土は適切な工法ならば強度があるが、今回のように山の斜面に沿って階段状に設ける場合、一部が崩れると連鎖的な崩落が起こりやすい。国土が急峻(きゅうしゅん)な日本は、各地で谷を埋めたり、山間の傾斜地を整地したりして利用している。これまでもしばしば盛り土の崩落事故が発生しており、広島県東広島市では09年、民家に土砂が流れ込み、死者も出ている。
静岡県熱海市伊豆山で発生した大規模な土石流の起点付近(7月3日)=共同、県提供

盛り土の造成には目的や場所ごとに様々な規制がある。宅地造成の場合、面積が500平方メートルを超すと宅地造成等規制法の対象になり、盛り土の流出を防ぐ擁壁の設置が求められ、工事完了時には都道府県が検査する。1ヘクタールを超す山林開発ならば森林法、農地ならば農地法の規制がかかる。
規制の緩い建設残土

しかし、実際には個別法の適用外になるケースが多く、熱海市の事例もそうだった。自治体の条例がこの穴をある程度塞いでいるが、規制内容にはばらつきがあり、実効性に欠ける面もある。熱海市の斉藤栄市長は「人災という側面も否定できない」とする一方で、市の権限は限られていたと弁明する。

産業廃棄物ならば廃棄物処理法で処分方法が厳しく定められている。一方で、建設残土は再利用が可能な有価物という位置づけだ。その分、規制が緩く、残土を保管しているという名目で実際には産廃が不法投棄されることもある。
全国3万~4万カ所を調査

今回の災害では、発生直後に赤羽一嘉・前国土交通相が全国的な調査に乗り出すことを表明。政府は土砂災害警戒区域や大規模な造成地など全国で3万~4万カ所を対象に総点検を進めている。内閣府に9月末、有識者からなる「盛土による災害の防止に関する検討会」も設けた。年内にも対策をとりまとめる予定だ。

今後、ポイントとなるのは大きく2点ある。ひとつは点検で発覚した危険な盛り土をどうするのかだ。もちろん、所有者や造成者が対策を講じることが原則だが、熱海で盛り土を造成した業者がすでに会社清算されているように、当事者任せでは動かないことも予想される。

そうなると行政が代執行せざるを得ないが、費用が問題になる。産廃の不法投棄を行政が除去する場合、産業界と国で設置した基金から財政支援している。こうした仕組みが参考になる。
建設残土の流れ、把握する仕組みを

次に再発防止策だ。全国知事会は熱海の災害を受けて「建設残土に関する全国統一の基準・規制の早期設置」を求めた。法律の抜け穴を防ぎ、不適切な盛り土の造成をなくす法制度が要る。

建設残土の発生から活用・処分までの流れを把握することも再発防止につながる。内閣府の検討会では「(産業)廃棄物と同じように残土についても排出者がその適正処理に責任を担う必要がある」(袖野玲子芝浦工業大教授)という意見が出た。不適切な処分をした業者だけでなく、問題を引き起こす背景まで視野に入れて新たな対策を考えることが重要だ。』