アメリカ白人は「生まれる前から」レイシスト

アメリカ白人は「生まれる前から」レイシストであり、
死ぬまでレイシズムの原罪から逃れることはできない
【橘玲の日々刻々】
https://diamond.jp/articles/-/248160

 ※ いやいや、「衝撃的な」記事だ…。

 ※ インパクトという点では、今年読んだ記事の中での「ベスト」だろう…。

 ※ 丸々、紹介させていただきます…。

 ※ それにつけても、アメリカ人やって行くのは、大変だ…。

 ※ 白人だというだけで、「原罪」押し付けられたり、「内なる差別意識を直視し、真摯に向き合え!」と迫られるわけだ…。

 ※ うちは、仏教、それも「曹洞禅(道元禅師のな)」なんで、「なむしゃかむにぶーつ(南無釈迦牟尼仏)…。」とか唱えて、(頭の中で、座禅して)「悟りに向かって、日々修行」していればそれでよい…。

 ※ どーせ、坊主でもない一般人が、「悟りを開く」なんて、できっこ無い…。

 ※ それでも、誰からも「地獄に落ちるぞ!」とか「人として、不適格だ!」なんて糾弾されることも無い…。

 ※ 火葬なんで、「死後の復活」とか、「死後の裁き」とか、知ったこっちゃ無いしな…。

『アメリカでBLM(ブラック・ライヴズ・マター/黒人の生命も大切だ)の反人種差別デモが過激化の度合いを増している。その背景には、奴隷制廃止から150年、公民権運動から半世紀以上たっても、依然として黒人の地位が向上していない現実がある。

 その結果、「人種問題」をめぐってアメリカの白人は2つのグループ(部族)に分断されることになった。ひとつは保守派で、「法律上は平等な権利を保証され、そのうえアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)で優先枠までつくったのだから、現在の苦境は自己責任だ」とする。これについては代表的な保守派知識人の一人ヘザー・マクドナルドの“The War on Cops(警官との戦争)”を紹介した。

[参考記事]
●日本ではほとんど報道されない、BLM運動の嚆矢となった「ファーガソン事件」の真相と背景にある黒人の犯罪率の高さ

 それに対して、アメリカ社会の「構造的な人種差別」を批判する左翼(レフト)はどのように考えているのだろうか。それを知りたくて、BLM運動以降、アメリカでベストセラーとなったロビン・ディアンジェロの“White Fragility: Why It’s So Hard for White People to Talk About Racism(白人の脆弱性:白人にとって人種主義について話すのはなぜこれほど難しいのか)”を読んでみた。

 著者のディアンジェロは1956年生まれの「白人女性」で、「ホワイトネス(白人性)」の研究で博士号を取得し、大学で多文化教育を講じるかたわら、企業などにダイバーシティ・トレーニングを提供する活動を続けている。“White Fragility(白人の脆弱性)”はディアンジェロの造語で、これがなにを意味するかはおいおい説明しよう。
アメリカ白人は、「生まれる前から」レイシスト

“White Fragility”でディアンジェロは、批判的人種理論(Critical Race Theory)にもとづいてきわめて明快な主張をしているが、それは日本人(とりわけ「リベラル」)にとって容易には理解しがたいものだ。ここではできるだけ客観的に説明し、私の感想は最後に述べることにしよう。

 ディアンジェロによれば、アメリカ社会は人種・性別・性的志向などによって階層化されており、その頂点に君臨するのは「白人、男性、異性愛者・健常者・中上流階級」という属性をもつグループだ。だが「白人女性」や「白人のLGBTQI(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア、インターセックス)」だからといって「人種主義Racism」から逃れることはできない。

 なぜならアメリカ社会の根底には、「white」と「people of color」の構造的な差別があるから。whiteは「白人」、people of colorは「有色人種」のことだが、raceを避けている用語に「人種」の訳語をあてるのは適切ではないだろう。直訳では「(肌の)色のあるひとたち」だが、これは日本語として違和感があるので、ここでは「ピープル・オブ・カラー」とカタカナで表記する。

 この訳語にこだわるのは、ディアンジェロの世界観が「白人」と「ピープル・オブ・カラー」の二元論だからだ。「奴隷制」と「植民地主義」という負の歴史の上につくられたアメリカ社会では、この2つの集団間の「差別のシステム」があらゆるところに埋め込まれているのだ。

 ピープル・オブ・カラーには黒人(アフリカ系)、ラティンクス/Latinx(ラテンアメリカ系)、アジア系、ネイティブアメリカンなどがいるし、人種間の結婚で生まれたひとたちもいるだろう。――中南米(ラテンアメリカ)に文化的・民族的アイデンティティをもつアメリカ人は「ヒスパニック」と呼ばれていたが、彼らは「スペイン語話者」でも「スペイン出身者」でもないため、「Latino(ラテン系男性)」や「Latina(ラテン系女性)」が好まれるようになり、近年はジェンダーフリーの呼称として「Latinx(ラテン系)」という新語が「PC=政治的に正しい」とされるようになったようだ。

 白人にも同様に、アメリカ社会の主流派であるWASP(イギリス系プロテスタント)だけでなく、かつては黒人同様に扱われていたアイルランド系やイタリア系、ナチスの弾圧を逃れてアメリカに渡ったユダヤ系や、新興移民として奴隷制も公民権運動も知らないロシア・東欧系などさまざまなグループがあるし、白人とピープル・オブ・カラーの結婚も珍しくなくなった。

 だがディアンジェロは、このように人種の多様性を強調することを否定する。「人種多様性」はピープル・オブ・カラーを分断し、白人に免罪符を与え、「白人VSピープル・オブ・カラー」という構図を曖昧にするだけだからだ。

 この二元論からディアンジェロは、「アメリカでは人種主義(レイシズム)は白人だけのものである」というかなり思い切った主張をする。ピープル・オブ・カラーのなかにももちろん、他の人種に対して偏見をもつ人間はいくらでもいるだろう。だがそれは、定義上、(アメリカ社会では)レイシズムとはなり得ない。その一方で白人は、祖先の国籍や家系の歴史に関係なく、存在そのものが「レイシズム」だ。

 これは、「白人は生まれながらにしてレイシスト」というだけではない。アメリカ白人は、「生まれる前から」レイシストなのだ。なぜなら白人というだけで、妊娠から出産までのあいだに、病院や保健センターなどでピープル・オブ・カラー(とりわけ黒人)とまったく異なる扱いを受けるのだから……。

 ディアンジェロは次のように述べる。

「私はアメリカで育った白人アメリカ人だ。私は白人の考える枠組みと白人の世界観をもち、白人の経験する世界を生きてきた。私の経験は普遍的な人類の経験ではない。それは人種が重要な意味をもつ社会、人種によって深く分断された不公平な社会のなかで、とりわけ白人が経験するものだ」

 アメリカで、あるいは西欧による植民地の歴史をもつすべての文化で、白人がレイシズムと無関係に生きることは原理的に不可能なのだ。』

『ディアンジェロは生物学的な人種概念を否定する

「すべての白人はレイシストである」という前提に立つ以上、当然のことだが、ディアンジェロはトランプ支持の「白人至上主義者」だけを批判したりはしない。こうした「可視化された人種主義」はこれまでさんざん俎上にあげられてきており、それにもかかわらず人種主義はなくならないばかりか、黒人の苦境はますます強まっている。

 ここで白人のリベラルは、「それはレイシズムへの批判が足りないからだ」としてBLM運動への支持を表明するかもしれない。だがディアンジェロは、こうした態度自体が「レイシズム」だとする。“White Fragility”は、「進歩的」で「寛容」なリベラル白人の「不可視のレイシズム」への糾弾の書だ。

 従来のリベラリズムは、個人を「黒人」や「女性」などのマイノリティにグループ分けし、ステレオタイプを押しつけることを「差別」だとしてきた。それを乗り越える方策が「カラーブラインド」や「ジェンダーブラインド」で、差別をなくすためのもっとも重要な心構えだとされている。――colorblindは色盲のことで、そこから「肌の色のちがいを見えなくする」の意味に使われるようになった。

 だがディアンジェロは、アメリカ社会でポリティカルコレクトネス(政治的正しさ)の中核にあるカラーブラインドを否定する。

 アメリカ社会はずっと、カラーブラインドによって人種差別を克服しようとしてきたが、ディアンジェロからすればこれは「人種のちがいがないように振る舞えばレイシズムはなくなる」という虚偽以外のなにものでもない。「人種」を見えなくするカラーブラインドによって、誰ひとり自分をレイシストだといわなくなったとしても、レイシズムは厳然と存在するのだ。

 日本でも「女だから」とか「国籍がちがうから」などの理由で個人を評価することは差別と見なされるようになってきた。「個人をグループとしてではなく、一人ひとりの個性や能力で評価する」というIndividualism(個人主義)はリベラルの大原則で、ほとんどのひとが当然だと思うだろうが、ディアンジェロはこれも否定する。「彼/彼女が黒人であることは採用・昇進になんの関係もない。なぜなら人種ではなく“個人”を評価しているから」というのは、リベラルな白人が自らのレイシズムを隠蔽・正当化するときの典型的な手段にすぎない。――さらには、「客観的な評価によってバイアスから自由になれる」という「客観主義」も否定される。バイアス(偏見)は人間の本性で、どのようなことをしてもそこからフリー(自由)になることはできないのだ。

 この「カラーブラインド」と「個人主義」の全否定は、「リベラル」にとっては驚天動地の話だろう。だがこれは、考えてみれば当然でもある。アファーマティブアクションは「人種」というグループで優遇するかどうか決めているのだから(ディアンジェロは「資格のある特定のマイノリティに白人と同等の機会を与えること」と定義する)、カラーブラインドと個人主義を徹底すればその根拠はなくなってしまう。「差別されたマイノリティ」を制度によって救済しようとするなら、「人種」という概念を認めるほかない。その意味では、ディアンジェロの一見過激な主張の方が筋が通っているともいえる。

 ディアンジェロはもちろん、生物学的な人種概念を否定する。近年の遺伝人類学や行動遺伝学では「ヒト集団」のちがいが大きな論争になっており、イギリスのリベラルな科学ジャーナリスト、アンジェラ・サイニーは『科学の人種主義とたたかう 人種概念の起源から最新のゲノム科学まで』(作品社)でこのテーマと格闘しているが、ディアンジェロは論文1本を根拠に「肌の下に真の生物学的な人種はない」と一蹴している。

[参考記事]
●アメリカでリベラルと「レフト」が衝突する「人種主義Racism」。「人種」概念の否定と遺伝的な「ヒト集団」が混乱を起こしている

 生物学的な「人種」は虚構で、「人種」概念は社会的につくられたというのが「社会構築主義」だが、その立場からすると、リベラルのカラーブラインドや個人主義は、社会的な構築物である「人種」を否定し、アメリカ社会の根底にある「構造的レイシズム」を容認することなのだ。

 ここまでくれば、ディアンジェロが「リベラル」ではなく「左翼(レフト)」である理由がわかるだろう。その批判の刃は、頑迷なトランプ支持の「白人至上主義者」よりも、彼らを口先だけで批判する「エリートの白人リベラル」に向けられているのだ。

 だがこの論理を、自分のことを「レイシズムとは無縁なリベラル」だと思っている白人は容易に理解することができない。そこでディアンジェロは、企業のダイバーシティ・トレーニングで(黒人のコーディネーターといっしょに)、白人の従業員に対して「レイシストとはあなた自身のことだ」という“事実”を伝える。すると白人たちはこの“攻撃”に驚き狼狽し、怒ったり、言い訳したり、無言になったり、席を立ったりする。こうした反応が“White Fragility(白人の脆弱性)”なのだ。
ディアンジェロは「リベラル」な白人の偽善を徹底的に批判する

 左翼(レフト)であるディアンジェロは、「リベラル」な白人の偽善を徹底的に批判する。それが、「よい白人」と「悪い白人」の二元論だ。

 リベラルを自称する白人にとって、「悪い白人」のステレオタイプは「無知、田舎者、偏見、意地悪、年寄り、南部人」で、「よい白人」のステレオタイプは「進歩的、高学歴、寛容、良心的、若者、北部人」だ。そして、トランプ支持の白人至上主義者に「悪い白人」のレッテルを押しつけることで、自らを「よい白人」に分類して安全圏に逃げ込んでいるとされる。

 ディアンジェロが述べているわけではないものの、こうした視点は映画『スキン』を見たときの違和感をうまく説明する。

 ガイ・ナティーヴ(イスラエル出身のユダヤ人)監督のこの映画では、カルト的な白人至上主義団体で育ち、顔面を含め全身に無数の刺青(タトゥー)をしたレイシストの若者が、シングルマザーとその子どもたちに出会ったことで人生をやり直したいと願い、組織と対決する。

 これは実話を元にしていて、映画としてもよくできているが(主役は『リトル・ダンサー』の少年)、ここまで白人至上主義者を悪魔化してしまうと、映画を見たほとんどの白人は、自分にはなんの関係もないことだと思うのではないだろうか。白人至上主義のカルト団体に所属する全身刺青のレイシストなど、アメリカじゅうでせいぜい数百人しかいないだろうから。

 ディアンジェロにとっては、リベラルが好む「頑迷固陋な白人至上主義者」は、白人エリートの自己正当化にすぎない。「悪い白人」を自分とまったくちがう異形の存在にしてしまえば、「よい白人である私」は人種差別とはなんの関係もなくなるのだ。

“White Fragility”では、会社のダイバーシティ・トレーニングで白人従業員が、自分はレイシズムとは無縁だと主張するときに使う科白がたくさん紹介されている。

・あなたがピンクだろうが、紫だろうか、水玉模様だろうが私は気にしない。
・あなたがたまたま黒人だったとしても、私があなたについて語ることとはなんの関係もない。
・人種を問題にすることはわたしたちを分断する。
・もしひとびとが私をリスペクトするのなら、人種にかかわらず、私もそのひとたちをリスペクトする。
・私はレイシストではない。なぜならカナダから来たから。
・私は貧しい家庭に育った(白人特権の恩恵など受けていない)。
・私はとても多様性のある職場で働いている。
・家族にピープル・オブ・カラーがいる(あるいは結婚している、子どもがいる)。
・60年代の公民権運動に参加した。
・中国から養子をもらった。
・日本に暮らしたことがあり、マイノリティがどういうものか知っている、などなど。

 ダイバーシティ・トレーニングというのは、こうした「言い訳」を一つひとつつぶして、自らの「内なるレイシズム」に直面させることなのだ。

 大企業で働く(恵まれた)白人が、白人特権(white privilege)をあっさり免責してしまうことを受け入れがたいマイノリティがいることは間違いないだろう。その意味で、ディアンジェロの主張に説得力を感じるところはあるものの、「白人女性の涙(White Women’s Tears)」という章を読むと複雑な気持ちにならざるを得ない。ここではダイバーシティ・トレーニングで、自らのレイシズムを指摘された白人女性が泣くことについて述べられている。

 黒人などのマイノリティに共感していて、レイシズムに断固反対してきたと信じている白人女性が、「あなたのその態度がレイシズムだ」といわれて混乱し、泣き出すというのは想像できる光景だ。そんなとき、まずは同席していた白人女性や白人男性が泣いている女性をなぐさめようとし、ときにはそれに黒人男性が加わって、講師であるディアンジェロを批判するのだという。

 これに対してディアンジェロは、「泣く」ということ自体が、自らの内なるレイシムズを直視することから逃げ、「女」を利用して周囲の同情を集めて自分を守ろうとする“White Fragility”の典型だとする。なぜなら「感情とは私たちのバイアスと信念、文化的なフレームワークによってつくられたもの」であり、「感情とは政治的なもの」だからだ。

 そして、泣き出した白人女性をなぐさめることは、「交通事故が起きたとき、(犠牲者である)通行人が道に倒れているにもかかわらず、(事故を起こした)車の運転手に駆け寄るようなもの」だという。これを読んだときは、アメリカの白人はこんな仕打ちにも耐えなくてはならないのかと思わず同情した。』

『「現状維持」がレイシズムなら「現状を破壊する」行為はそれがどんなものであれ反レイシズム

 ディアンジェロのダイバーシティ・トレーニングは、白人従業員にとってはかなり過酷な体験だ。だったらなぜ、企業はこんなことをさせるのか。

 それは大企業の経営者が、いつ「人種差別的」と批判されBLM運動の標的になるかわからないと戦々恐々としているからであり、白人の従業員(とりわけ中間管理職)が黒人の部下や同僚とどのように接すれば「人種差別的」と見なされないかわからなくなっているからだろう。

 そこで彼らは、藁にもすがる思いでダイバーシティ・トレーニングを受講する(自分たちはここまで努力しているという免罪符を手に入れたいというものあるのだろう)。ところがそうすると、「白人という存在そのものがレイシズムだ」といわれ、「脆弱性」をさらけ出すことになってしまうのだ。

 私はアメリカで暮らしているわけでもないし、そもそも「ピープル・オブ・カラー」として、定義上、レイシストにはなり得ないのだから、複雑骨折したようなアメリカの「人種問題」についての論評は控えるべきかもしれない。

 それでもひと言だけいわせてもらえば、ディアンジェロの論理は、キリスト教的な「原罪」とフロイト主義(精神分析)のグロテスクな組み合わせのように思える。アメリカの白人は「白さ(ホワイトネス)」という原罪を背負っているものの、それを無意識に抑圧し「白人特権」を守ろうとしている。とりわけリベラルな白人は、「悪い白人」を悪魔に見立てることで自分のなかの「悪」を外部化し、内なるレイシズムを否認・正当化しているのだ。

 しかしそうなると、どのような説明・弁解・抗議をしても(あるいは謝罪しても)、すべてが「抑圧されたレイシズム」と見なされてしまう。このロジックは自己完結しているので、逃げ場はどこにもない。

 ディアンジェロは、アメリカの(リベラルな)白人が求めているのは「status quo(現状維持)」だという。すべては、レイシズムを否認して「白人特権」という現状を守るための暗黙の策略なのだ。こうして、コリン・パウエル(ブッシュ政権の国務長官)やクラレンス・トーマス(最高裁判事)のような保守的な黒人の成功者はもちろん、バラク・オバマですら「現状維持を支え、(白人を)脅かすといういかなる意味でもじゅうぶんにレイシズムに挑戦しなかった」と批判されることになる。

 ここから、一部のBLM運動の常軌を逸した(ように見える)ラディカリズムが理解できるのではないだろうか。「現状維持」がレイシズムなら、「現状を破壊する」行為は、それがどんなものであれ反レイシズムなのだ。

 ディアンジェロのような白人知識人がこうした極端な思想をもち、それが一定の支持を集める背景には、アメリカのアカデミズの実態があるのかもしれない。ディアンジェロが認めるように、アメリカの大学教員の84%は白人で、それはまさに「構造的レイシズム」そのものだ。この事実を否認し正当化する必要があるからこそ、アメリカの白人知識人は、ごくふつうに暮らし働いている市井の白人に「レイシスト」のレッテルを押しつけようとするのではないだろうか。

 こうしたラディカリズムは、いったいどこに向かうのか? ダイバーシティ・トレーニングの目的をディアンジェロは、「白人が引き起こしたレイシズムを直視する痛みに耐えるスタミナをつけること」だという。そして、「レイシズムを(ピープル・オブ・カラーと同様に)生と死の問題だと考え、あなたの宿題をすること」が重要だとする。

 もちろん、白人であるディアンジェロ自身もレイシズムから自由になることはなく、学びが終わることもない。アメリカの白人は「生まれる前から」レイシストであり、死ぬまでレイシズムの原罪から逃れることはできないのだ。――そう考えれば、これは一種の「宗教運動」にちかい。

 自らが「原罪」を背負っていると考える白人がなにをしようと自由だが、民主的な市民社会で、なんら法を侵すことなく暮らしているひとたちにこうした「罪」を負わせるのは酷だし、ひとは自分が「悪」であることを受け入れることなどできない。このラディカルな人種理論は「人種問題」の解決に役立たないばかりか、状況をさらに悪化させるだけではないだろうか。

橘 玲(たちばな あきら)
橘玲のメルマガ 世の中の仕組みと人生のデザイン 配信中

作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書) など。最新刊は『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)。』

〔核のごみ処理の問題…。〕

 ※ 脱炭素、気候変動対策で「原発推進」はいい…。

 ※ しかし、「核のごみ(高レベル放射性廃棄物)」の問題は、どうなっているんだろう…、と思って、ちょっと調べた…。

フランスにおける
高レベル放射性廃棄物の処分について (2011年12月現在)
https://www2.rwmc.or.jp/pub/HLWKJ-201202ed-hd-FR.pdf

北欧の「最終処分」の取り組みから、日本が学ぶべきもの①
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/hokuou_saishushobun_01.html

※ この資料が、一番参考になった…。

※ いろいろ書いてあるが、ポイントはこれ…。

※ 「高レベル放射性廃棄物」の貯蔵・保管は、「ガラスで固めて」「地下にコンクリートの貯蔵施設」を建設して、「放射線対策」に気を配りながら、長期間保存・保管するしか無い…。

※ それは、みんな「分かっている話し」なんだが、問題は、その施設を「どこに、建築するのか?」だ…。

※ 処分地を選定済みで、建設が開始されたのは、「フィンランド」たった1国だ(それも、建設「開始」であって、「建設済み」ではない)…。

※ アメリカにおいても、一旦選定したものの、その後「長期にわたって中断中」という状況だ…。

※ 他国は、軒並み「調査段階前」だ…。

※ フランスは、「精密調査」中で、まだ結論が出ていないようなんで、「見切り発車」したんだろう…。

中国、核のごみ処理へ整備着々 四川省に初のガラス固化施設稼働
(2021/9/22 6:00)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/804250/

※ さすが、この国は「特別」だな…。

原発回帰を世論が後押し フランス、産業振興も

原発回帰を世論が後押し フランス、産業振興も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR100VZ0Q1A111C2000000/

『【パリ=白石透冴】フランスのマクロン大統領は9日、原子力発電所の建設を再開すると発表した。安定した電力供給を続けながら脱炭素を進めるには原発の活用が不可欠と説明した。原発に回帰した背景には、2022年の大統領選を前に原発に肯定的な世論を重要視するとともに、自国の原子力産業を支援する狙いもあるようだ。

「これがフランスの強いメッセージだ」。英国で第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開かれているなか、マクロン氏は温暖化対策の切り札として原発の建設再開を打ち出した。国内での新規着工は07年以来となる。

原発推進についてマクロン氏は演説で「ここ数週間、ガスや電力価格が高くなっている。急いで対策を取らなければいけない」と主張した。気象条件で発電量が左右される再生可能エネルギーだけでは安定的な電力の供給体制はつくれないとの考えを強調した。原発の活用で電力の安定供給と脱炭素の両方を実現できるとする立場だ。

AFP通信などによると欧州加圧水型原子炉(EPR)を最大で6基建設する計画を数週間以内に明らかにする見通し。マクロン氏は10月に発電規模の小さい原子炉「小型モジュール炉」を30年までに国内で複数導入すると表明している。11年の福島第1原発の事故などを受け、オランド前大統領が25年までに依存度を7割から5割に下げるとの目標を掲げて以来、仏は再び原発推進にかじを切る。

マクロン氏が原発推進に方針転換した背景には大統領選を前に世論を取り込みたいとの思惑が透ける。仏メディアが10月に報じた世論調査によると、原発を国の利点だと考える人は50%だった。19年の調査では34%で、原発が気候変動対策に必要だという仏政府の主張は支持を広げている。再選を狙うマクロン氏に国民の反応は重要だ。

原子力産業を支援する狙いもある。フランスが手掛けたEPR建設はフィンランドで工期が大幅に遅れて巨額の赤字を出したほか、仏北西部フラマンビル原発で07年に始めた建設計画はいまだに終わっていない。新たな原発建設で技術力や知見の向上を目指す考えだ。AFP通信によると、EPR6基をつくった場合、必要な費用は460億ユーロ(約6兆円)と見積もられる。

欧州連合(EU)は50年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げている。旗振り役であるフランスは目標達成で各加盟国に手本を示す必要もある。火力発電への依存度をさらに下げるためにも、仏にとっては原発の再建設以外に残った道は無いと判断したもようだ。

大陸欧州では国境を越えて互いに電気を融通し合っており、原発促進による安定的なエネルギー供給は欧州のエネルギー安全保障を守るという意味合いもある。欧州で深刻な問題となっているエネルギー価格急騰のような事態の再来を防ぐ狙いもある。

英国も原発の活用で温暖化ガス削減を進めるとの立場だ。10月、小型モジュール炉などの原発開発や技術の維持のために1億2000万ポンド(約180億円)の新基金をつくると発表した。遅くとも24年までに1基以上の新規の大規模原発の建設を決める方針も明らかにしている。

COP26の開催中というこのタイミングでの発表は、欧州各国にフランスの方針に賛同を呼びかけるという意味合いも込められている。今後、英仏の判断に追随する国が他にも欧州で出る可能性もある。

一方でドイツはこれまで脱原発を掲げており、石炭火力発電への依存度が高いとの指摘がある。9月の総選挙を経て発足する新政権が、原発についてどのような立場を取るのかに注目が集まっている。
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小山堅
日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
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ひとこと解説

COP26でカーボンニュートラル目標追求など、脱炭素化を推進する世界の取組みが議論されている中、原子力大国の一つ、フランスが新たな動きに出た。

安定した脱炭素電源としての原子力の重要性に改めて着目し、原子力の新設再開を表明したのである。

フランスも2050年カーボンニュートラル目標を発表していたが、その道筋において原子力の重要性を再確認した格好だ。

今回の発表の背景には、欧州における最近の電力需給ひっ迫や化石燃料価格高騰の影響も考えられる。気候変動とエネルギー安全保障の双方に目配りして、再エネ一本足打法でなく、自らの強みでもある原子力を改めて推進する姿勢を示したフランスの今後の取組みが注目される。

2021年11月11日 11:36 』

外相、日中議連会長を辞任

外相、日中議連会長を辞任 「誤解避けるために判断」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA112O80R11C21A1000000/

『林芳正外相は11日の記者会見で、超党派の日中友好議員連盟会長を辞任すると述べた。「外相としての職務遂行に無用の誤解を避けるために判断した」と語った。林氏の外相起用にあたり、中国への姿勢が甘くなるとの懸念が自民党内の一部から出ていた。
 国会に登院した自民党の林芳正氏。第2次岸田内閣の外相に起用された=10日午前

林氏は日中関係に関し「主張すべきは毅然として主張して責任ある行動を求める」と話した。「同時に対話を続けて共通の諸課題で協力する必要がある」とも指摘した。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の来日は日程調整をする段階にないと強調した。「新型コロナウイルスを含む状況を見極める必要がある」と言明した。

人権問題では「民主化や人権擁護に向けた努力をしている国との間では、対話と協力を基本とする」と説明した。国際人権問題担当の中谷元首相補佐官と連携して進めていく考えを示した。』

独ダイムラー、ルノー株をすべて売却 資本関係解消

独ダイムラー、ルノー株をすべて売却 資本関係解消
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10F4Q0Q1A111C2000000/

 ※ どんどん、「ゴーンの遺産」は覆されているな…。

 ※ 一時は、「カリスマ経営者」とか言われていたが…。

 ※ しょせんは、「規模の経済」を追求する「古いタイプの経営者」だったか…。

 ※ 時代は、「C(Connected)A(Autonomous)S(Shared & Service)E(Electric)の時代」に突入しているんで、最近では誰も話題にしなくなった…。

 ※ 「日本の法制度」ぶち破って、逃れたところまでは良かった(一時は、その「逃亡劇」の映画化の話しまであった…)が、その逃亡先の「レバノン」があの体たらくでは、「へた打ったな…。」としか言いようがない…。

 ※ フランス政府も、追求の手を緩めるつもりは、無いようだしな…。

 ※ まあ、横紙破りの末路とは、そうしたものだ…。

『【フランクフルト=深尾幸生】独ダイムラーは10日、約3.1%分を保有する仏ルノーの株式を全て売却すると発表した。売却額は同日の株価で計算すると約3億1600万ユーロ(約410億円)に相当する。2021年に入って仏ルノーと日産自動車もそれぞれダイムラー株を手放しており、11年続いた日仏連合との株式持ち合いは解消する。

ダイムラーの年金ファンドが保有する約920万株を、市場の動向をみながら機関投資家に売却する。業務提携は引き続き維持するとしている。ダイムラーが持つ日産株を売却するかどうかについては「コメントできない」とした。

ダイムラーとルノー・日産は、10年に当時ダイムラー社長だったディーター・ツェッチェ氏と日仏連合のトップを務めたカルロス・ゴーン被告が主導して資本・業務提携した。日産とルノーがダイムラーの発行済み株式の約1.5%をそれぞれ取得する一方、ダイムラーがルノーと日産に3.1%ずつ出資した。

メキシコでの合弁工場の建設やエンジンの相互供給など幅広い分野で協力していたが、ここ数年は小型車やピックアップトラックの共同開発計画を中止するなど提携関係は縮小傾向にあった。ダイムラーもルノーも経営陣が代わっており、資本関係を維持する必要はないと判断したとみられる。』

歴史決議でも習氏礼賛 6中全会、11日に閉幕

歴史決議でも習氏礼賛 6中全会、11日に閉幕
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM093VA0Z01C21A1000000/

『【北京=羽田野主】中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)が11日、閉幕する。同日採決する「歴史決議」で習近平(シー・ジンピン)総書記の指導を褒めたたえ、建国の父、毛沢東や改革開放を進めた鄧小平に並ぶ指導者として位置づける。個人崇拝の強まりを懸念する声も広がりそうだ。

閉幕に先立ち、中国共産党の機関紙、人民日報は9日付の1面記事で「習近平同志を中心とする党中央が新時代の変革的実践を導くことで、中華民族の偉大な復興を実現する」と習氏の指導力を礼賛した。習氏が共産党のトップ総書記についての歩みを3ページにわたって称賛し「偉大な復興の新しい章を」と結んだ。

中国国営の新華社は9日の配信記事で「習氏、百年の大党を率い、新たな征途へまい進」と強調した。2020年1月の春節前に習氏が新型コロナウイルス対策のため一睡もしなかった様子や、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺海域に侵入する中国海警の船を巡り「自ら戦略と戦術の配置をした」と明かした。

習氏のリーダーシップを国内に宣伝し、歴史決議の円満な採決につなげようとする狙いがうかがえる。香港紙、明報(電子版)は9日、歴史決議は「習氏の功績を強調する」内容になると伝えた。ある党関係者は「習氏をひたすら賛美する内容になる」と話す。

習氏が歴史決議にこだわるのは、国共内戦を戦った毛や経済大国の礎を築いた鄧に比べてなお実績が乏しいためとの見方がある。江沢民(ジアン・ズォーミン)元総書記と胡錦濤(フー・ジンタオ)前総書記は総書記のポストを原則2期10年で譲ったが、習氏は22年の党大会で異例の3期目に入ろうとしている。歴史決議で自身の権威を高めて「新時代」の到来を強調し、続投するための布石といえる。

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「中日関係の推進を」中国外務省、岸田内閣に期待表明

「中日関係の推進を」中国外務省、岸田内閣に期待表明
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM10AGG0Q1A111C2000000/

『【北京=羽田野主】中国外務省の汪文斌副報道局長は10日の記者会見で、同日発足した第2次岸田内閣について「新時代の要求に見合った中日関係の構築を共に推進したい」と述べ、関係の改善に期待を示した。

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中国では日中国交正常化に貢献した大平正芳元首相も会長を務めた自民党宏池会(現岸田派)を率いる岸田文雄首相の登板に期待が広がっている。汪氏は「日本が中国と同じ目標に向かって歩み寄り、それぞれの分野での連携を深め、意見の違いをよくコントロールするように希望する」と話した。

中国メディア関係者は「林芳正外相は日中関係に精通しており、関係の立て直しにつながるだろう」と話す。中国は米国や欧州、オーストラリア、インドなどとの関係が悪化しており、日本を遠ざけるのは得策ではないとの判断もあるとみられる。

日中が尖閣巡り局長級協議 軍事的活動に懸念伝達

日中が尖閣巡り局長級協議 軍事的活動に懸念伝達
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA10CB70Q1A111C2000000/

『日中両政府は10日、外務省局長によるテレビ会議を開いた。沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海情勢について議論した。日本側は尖閣諸島周辺での中国の軍事的な活動に懸念を示し、行動を求めた。中国公船の領海侵入が相次いでいることを踏まえた。

船越健裕アジア大洋州局長と洪亮・国境海洋事務局長が協議した。6月以来の開催で岸田政権では初めて。岸田文雄首相はこれまで「建設的かつ安定的な日中関係を構築する」と述べている。

局長級協議は防衛当局間の相互の通報体制「海空連絡メカニズム」も取り上げた。偶発的な衝突を避けるため、緊急時つなぐホットラインの早期開設も確認した。』

米議員団、台湾・蔡総統や国防部長と面会か 中国反発

米議員団、台湾・蔡総統や国防部長と面会か 中国反発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM108HE0Q1A111C2000000/

『【台北=中村裕】複数の台湾メディアは10日、米国の上下両院の議員が9日夜に台湾入りし、10日午前に蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と面会したようだと報じた。同日午後には、国防部(国防省)トップの邱国正・国防部長とも面会したとしている。台湾当局は米議員の訪台そのものは認めているが、詳細な公表は一切控えている。

主要紙の自由時報などによると、訪台したのは、共和党のジョン・コーニン上院議員ら数名。10日午前に台北市内の総統府で、蔡総統と面会したようだと伝えている。

午後には、国防部を訪問し、最近の台湾に対する中国軍の動きや、台湾海峡周辺の状況などについて意見交換をしたと報じた。さらに大手紙の聯合報は、米議員団は11日に台湾を離れるとの予定を伝えた。

コーニン氏ら米上院の有力議員は4日、「台湾抑止力法案」を提出したばかりだ。中国に対する台湾の防衛力を強化するため、米国が台湾に対して年間20億ドル(約2300億円)を、来年から10年間支援するのが狙いで、コーニン氏は対中強硬派として知られる。

昨年から、米国を中心に海外から高官の台湾訪問が相次ぐが、その多くは中国への対抗を国際社会にアピールするのが狙いで、訪問内容や会談日程などは、当局が事前に明らかにする場合が多かった。今回は、訪問者の名前も含め、一切の内容を明らかにしていない。
中国は米議員の訪台に強く反発している。台湾の国防部は9日夜、中国の戦闘機など

6機が防空識別圏(ADIZ)に侵入し、威嚇行為を繰り返したと発表した。』

中国「戦闘準備へ警戒」と反発 米議員団が軍用機で訪台

中国「戦闘準備へ警戒」と反発 米議員団が軍用機で訪台
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1029B0Q1A111C2000000/

『【ワシントン=中村亮、北京=羽田野主】米議会の代表団が9日、台湾を訪問した。米要人の訪問は少なくとも今年3回目で、定期的な接触からは米台交流を既成事実化する思惑が透ける。中国は台湾海峡で警戒パトロールの実施を発表しており、米中の台湾をめぐる駆け引きがいっそう激しくなる。

米国防総省のカービー報道官は9日、記者団に対して議員団の移動を軍用機で支援したと認めた。「米議員団の台湾訪問はよくあることだ」と語り、訪問に特筆すべきことはないと主張した。中国国防省は移動に軍用機を使ったことに強く反発したが、カービー氏は「珍しくない」と真っ向から反論した。訪台した議員や日程は明らかになっていない。

今回の訪台は中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)の開催中に実現した。中国が国内外の情勢に神経質になりやすい重要会議の開催期間に配慮せず訪台したのは、米台交流を日常的な出来事と位置づける狙いがあるとみられる。

米要人の訪台は定例化しつつある。バイデン米大統領は4月、リチャード・アーミテージ元国務副長官やクリス・ドッド元上院議員など3人を台湾に派遣した。タミー・ダックワース氏ら超党派の上院議員3人も6月に台湾を訪れた。両訪問団はそれぞれ蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談し、米国の台湾問題への関与を訴えた。

米台は他の分野でも交流を公に進めて関係強化をアピールし、台湾に軍事・外交面で圧力を強める中国をけん制するようになった。

蔡総統は10月下旬、米CNNテレビのインタビューで、米軍が台湾軍の訓練を目的に台湾に駐留していると初めて認めた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米当局者も匿名で訓練の事実を認めた。米軍元高官は「匿名でも現役の当局者は確認を避けてきた」と説明し、米政府の対応の変化を指摘する。

バイデン政権はトランプ前政権に続き、台湾の国際機関への参加も強く訴えている。ブリンケン国務長官は10月下旬の声明で国際民間航空機関(ICAO)や世界保健機関(WHO)の例をあげて台湾の参加を支持するよう各国に呼びかけた。米台の実務者協議もオンライン形式で開き、台湾の参加に向けた方策を議論した。

中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部は反発を強めている。中国外務省の汪文斌副報道局長は10日の記者会見で「米国はいかなる形でも公の立場にある人間の往来を直ちにやめ、台湾独立を企てる分裂勢力に誤った信号を送らないように要求する」と話した。

台湾方面を担当する人民解放軍東部戦区の報道官は9日、台湾海峡周辺で「戦闘準備のための警戒パトロール」を実施したと発表した。「多兵種の連合作戦能力の向上をさらに検証する」と強調し、今後も陸海空など兵種を超えた訓練で台湾に軍事圧力を加える可能性を示唆した。

台湾国防部(国防省)によると、中国軍の戦闘機「殲16」や対潜哨戒機「運8」など計6機が9日に台湾の防空識別圏に侵入した。

複数の米メディアによると、米中首脳のオンライン協議が来週にも開かれるという。台湾問題が主要テーマにのぼる公算が大きいが議論は平行線をたどるとみられる。

中朝は自民の「援軍」か 立民、逆風の深淵

中朝は自民の「援軍」か 立民、逆風の深淵
Angle 政治部長 吉野直也
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA08B0M0Y1A101C2000000/

 ※ あたり前だ…。

 ※ 新聞、テレビのオールド・メディアが報道しないだけの話しで、ネットではバンバン情報が流れている…。

 ※ 時代は、もう変わっているんだよ…。

『選挙における外交・安全保障政策は票にならないという通説が崩れつつある。

衆院選で負けた立憲民主党は枝野幸男氏が代表を辞任する。共産党との共闘が敗北の一因だ。共闘の何がマイナスに作用したのか。その深淵には中国と北朝鮮の存在がある。

東アジアの安全保障上のリスクは中国と北朝鮮である。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は任期を撤廃し、台湾との統一を公言する。国際法を無視して南シナ海に人工島を建設し、東シナ海の沖縄県尖閣諸島付近では挑発行動を続ける。尖閣諸島の魚釣島からわずか170キロメートルほどしか離れていない台湾での有事は、日本有事にほかならない。

衆院選の公示日に弾道ミサイル発射実験をした北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の蛮行も同様だ。国連安保理決議を平然と破る北朝鮮は国際的な孤立を深めており、その暴挙には日米安全保障条約に基づく同盟関係を中心に対処するしかない。

共産党が掲げる日米安保の廃棄と自衛隊の解消の政策は、東アジアの安保の実態と乖離(かいり)している。立民の外交・安保は日米安保が基軸だが、共産党の外交・安保の印象が重ね合わされ、支持を失った恐れがある。

選挙での外交・安保への認識の変化は米国の大統領選にもみえる。

伝統的には失業率など経済を含めた内政が当落を左右してきた。ベトナム戦争の是非や、イラン米大使館人質事件での失態なども選挙で取り上げられてきた。それでも投票行動は生活に直結する経済の要因が大きかった。

その経済に外交・安保が絡み合ったのが2008年の大統領選であり、16年の大統領選だ。08年はブッシュ(第43代)大統領が始めたアフガニスタンとイラクの2つの戦争に疲弊した経済に直前のリーマン・ショックが重なり、オバマ氏を黒人初の大統領に押し上げた。

16年はトランプ氏が中国との貿易赤字に批判の矛先を向けた。中国が軍事と経済の両面で急成長し、米国の覇権に公然と挑む姿勢もトランプ氏の対中国強硬論と共振した。

対中脅威論は20年大統領選でも影を落とした。中国と親和性があるといわれてきた民主党候補のバイデン氏も中国には毅然とした態度で臨まざるを得なかった。大統領に就任してからもそれを堅持している。

再び日本。中国や北朝鮮が蛮行を繰り返せば、繰り返すほど共産党と連携する立民の外交・安保への不安は増す。

それは自民党への間接的な「援軍」効果を生み、対中国、対北朝鮮強硬論に合理性を持たせる。

外交・安保で自民党と大きな隔たりがない野党、日本維新の会の躍進も、底流にはその安心感がある。

維新と国民民主党は立民や共産党、社民党との国会対策協議の場にはいない。反対のために実現性の乏しい政策を訴える旧来型の野党からの脱却をめざす。

枝野氏の後任を選ぶ代表選は共産党との共闘を続けるのか、見直すかが争点だ。

台湾有事は遠い国で起こり得る出来事ではない。立民が国家の根幹である外交・安保への不信を抱えたまま「表紙」を代えるだけなら、党再生の好機を自ら放棄することになる。
政治部長 吉野直也
政治記者として細川護熙首相から岸田文雄首相まで15人の首相を取材。財務省、経済産業省、金融庁など経済官庁も担当した。2012年4月から17年3月までワシントンに駐在し、12年と16年の米大統領選を現地で報じた。著書は「核なき世界の終着点 オバマ対日外交の深層」(16年日本経済新聞出版社)、「ワシントン緊急報告 アメリカ大乱」(17年日経BP)。』

日本にコロナ飲み薬160万回分供給 米メルクと政府合意

日本にコロナ飲み薬160万回分供給 米メルクと政府合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC109YC0Q1A111C2000000/

『米製薬大手メルクは10日、開発中の新型コロナウイルス治療薬「モルヌピラビル」の供給について、日本政府と合意したと発表した。160万回分を約12億㌦(約1300億円)で供給する。近く承認申請する見通しで、認められれば軽症・中等症の患者向け飲み薬としては日本で初めてとなる。自宅で治療しやすくなり、医療逼迫の抑制が見込まれる。

岸田文雄首相は同日の記者会見で、飲み薬について承認されることを前提に「速やかに60万回分を医療現場に提供する」と述べ、さらに100万回分を確保する姿勢も示していた。政府は実用化した際にすぐに確保できるよう、承認審査に先行して供給を取り付けた。

後藤茂之厚生労働相も同日、記者団に対し、承認された場合は年内にまず20万回分が納入されるとの見通しを明らかにした。続いて来年2月と3月に20万回分ずつ納入され、「さらに追加の100万回分も確保している」と述べた。

モルヌピラビルはメルクと米リッジバック・バイオセラピューティクスが共同開発した抗ウイルス薬。臨床試験(治験)の中間解析データでは、重症化リスクのある患者の入院・死亡リスクを約50%下げる効果があった。

英国では4日に世界で初めて使用が認められた。米国でも緊急使用許可を申請中だが、米政府は既に310万回分を約22億ドルで契約した。英政府とは48万回分、オーストラリア政府とも30万回分の供給で合意している。

メルクは2021年中に1000万回分の薬を生産する予定。各国の需要に対応するため、22年末までに生産体制を年間2000万回分以上に拡大する計画だ。

日本政府はコロナ治療薬の供給について、中外製薬と「抗体カクテル療法」として知られる点滴薬「ロナプリーブ」の供給契約を結んでいる。軽・中等症向けの治療薬を一定数確保したことで、感染の再拡大期に重症患者の数を抑制し、「第5波」で起きた医療逼迫を防ぐことを目指す。』

外相人事「2A」の反対押し切る

外相人事「2A」の反対押し切る 首相、派内ライバル起用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA089MF0Y1A101C2000000/

 ※ ここに書かれていないことが、一つある…。

 ※ それは、「首相とは、たった独りの孤独な職務」で、時に、精神的な弛緩と、癒しが必要だ…、ということだ。

 ※ 林さんは、ずっと「岸田派のナンバー2」で、「気心の知れた存在」だ…。

 ※ 傍にいるだけで、精神安定作用が期待できるんだろう…。

 ※ 閣内の序列は、岸田文雄-茂木敏充-野田聖子-林芳正…、というもののようだ…。

 ※ 茂木さんは、竹下派の会長になったし、野田さんは下記の推薦人名簿にある通り、二階さんの影響力下にある人のような感じだ…。

 ※ 林さんを、傍に置いて、「ほっと一息」吐きたい(つきたい)んだろうな…。

 ※ そして、安倍・麻生は、ちょっと距離を置いて、「お手並み拝見」と高見している…、という構図か…。

 ※ まだ、菅さんの動向は、見えてこないな…。

『岸田文雄首相は10日発足した第2次内閣で外相に林芳正氏を起用した。安倍晋三元首相と自民党の麻生太郎副総裁の「2A」の慎重論を押し切り、岸田派内で自らと競い合ってきたライバルをあえて選んだ。底流には衆院選を経た政権内の人間関係の変化がある。

「林さんにお願いすることに決めました」。5日夕、首相は安倍、麻生両氏らに電話で林氏の外相起用を伝えた。

2人の回答は消極的だった。「中国との関係で国際社会に変なメッセージを与えかねない。後々問題になるのではないか」。ともに言及したのは超党派の日中友好議員連盟会長を務める林氏と中国との関係だった。

林氏が参院議員からくら替えして衆院選で当選したばかりだったのも難色を示した一因だった。

盟友関係にある安倍氏と麻生氏は首相からの連絡後、電話をかけ合って賛成できないとの認識を共有した。それでも首相は翻意しなかった。

もともと首相は衆院選後も閣僚は続投させると明言していた。衆院選で甘利明前幹事長が小選挙区で敗れて計画は狂った。甘利氏の辞任の申し出を受け、外相だった茂木敏充氏を幹事長に起用。外相の後任探しを余儀なくされた。

外相は派閥や当選回数のバランスだけで選べない。事務方のお膳立てなしで他国の交渉相手とやりとりして物事を決めていく場面は多い。自身も外相を4年7カ月務めた首相は「外相をこなせる人間は限られている」と周囲に語っていた。

岸田政権は22年にも中国への対処を念頭に国家安全保障戦略を改定し、敵基地攻撃能力の保有や経済安全保障の明記を検討する。外相には山積する課題で着実に成果を出せる能力が必要となる。

林外相案は当初から首相の腹案だった。防衛相や農相、文部科学相を歴任し実務能力は証明済みだ。米ハーバード大大学院修了で海外経験も十分にある。

首相は政治家としてのバランスも重視した。中国に厳しい姿勢を示しつつ、林氏の外相起用は対話も崩さないメッセージになると踏んだ。中国を念頭に人権問題担当の首相補佐官に中谷元氏の起用もあわせて決めた。

林氏自身は8日のBSフジ番組で「知中派であってもいい。媚中(びちゅう)ではいけない」と語った。

4歳年下の林氏は首相より先に2012年9月の総裁選に出馬した。その直後に古賀誠氏が派閥会長を辞任し、後継候補として岸田氏と林氏、逢沢一郎氏の3人の名前を挙げた。

結局岸田氏が派閥の領袖を引き継いだのは、当時参院議員だった林氏では首相候補になれないというのが一つの理由だった。首相はその後も林氏の衆院くら替えの動きに神経をとがらせていた。

首相は20年9月の総裁選で菅義偉氏に敗れた。その後、林氏は衆院へのくら替えを決意し参院議員を辞職。首相が派内で求心力を保つには翌21年の総裁選に出馬する以外に選択肢はなくなった。

首相が林氏を閣内に入れて政権を支える立場に据えれば、こうした派内の主導権争いはいったん避けられるとの見方はできる。首脳外交が定着した今、ライバルが外相ならばその活動には一定のたがもはめられる。

「首相は少し甘くないか」。首相を支える麻生氏は周囲に、ライバルを引き立てる首相の判断に疑問を呈する。

宏池会(現岸田派)を源流とする麻生派内の一部には岸田派と合併して派閥を大きくする「大宏池会」構想がある。河野太郎氏を抱える麻生派としては林氏が有力な総裁候補とみられることへの警戒もある。

安倍氏は10月の第1次岸田内閣の組閣時に続いて自身の意見が通らず、首相の人事への不信感をくすぶらせる。

安倍氏は林氏とは同じ山口県選出で両家は代々競い合う関係にあった。

次期衆院選で山口県は「1票の格差」を巡る区割り調整で選挙区の数が1減する見通しだ。林氏の勢力伸長は選挙区調整を難しくし両氏の関係に緊張をもたらしうる。

安倍氏は11日に細田派(清和政策研究会)に復帰して会長に就く。党内最大派閥は「安倍派」に衣替えし、安倍氏は数の力を背景に発言力を強めていく考えだ。

首相は衆院選で自民党単独で絶対安定多数を獲得し政権基盤を固めた。想定を上回る勝利との受け止めが多く、今回の人事を押し通せる土壌となった。党内で影響力を巡るせめぎ合いは続く。』

自民党総裁選、野田聖子氏推薦人名簿
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210917/mca2109171400015-n1.htm

『【衆院】

 大岡敏孝 (二階派、滋賀1)、

 神谷昇  (二階派、比例近畿)、

 川崎二郎 (無派閥、比例東海)、

 木村弥生 (無派閥、比例近畿)、

 出畑実  (二階派、比例南関東)、

 渡海紀三朗(無派閥、兵庫10)、

 浜田靖一 (無派閥、千葉12)、

 百武公親 (竹下派、比例北関東)、

 福井照  (二階派、比例四国)、

 宮路拓馬 (石原派、比例九州)

 【参院】

 三原じゅん子(無派閥、神奈川)、

 渡辺猛之 (竹下派、岐阜)、

 岩本剛人 (二階派、北海道)、

 清水真人 (二階派、群馬)、

 柘植芳文 (無派閥、比例)、

 鶴保庸介 (二階派、和歌山)、

 徳茂雅之 (無派閥、比例)、

 三木亨  (二階派、比例)、

 元栄太一郎(竹下派、千葉)、

 山田俊男 (無派閥、比例)』

楽天、携帯なお低迷 黒字化には契約数1000万上積み必要

楽天、携帯なお低迷 黒字化には契約数1000万上積み必要
小池颯
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC051DQ0V01C21A1000000/

 ※ 自前で「ネットワーク」を、構築する話しは、どうなった…。

 ※ 専用ネット機器でなく、「汎用コンピュータ」でネットワークを構築する話しは、どうなった…。

 ※ ユーザーは、「お題目」なんかどうでもいい…。

 ※ ただ、「速く」「安定して」、できれば「安く」、ネットワーク網に接続したい…。

 ※ ただ、それだけの話しだ…。

『楽天グループは11日、2021年1~9月期の連結決算(国際会計基準)を発表する。電子商取引(EC)や金融関連が利益を稼ぐ一方で、7~9月期に5四半期連続の営業赤字が濃厚なのは携帯事業の赤字が響くためだ。足元で自社回線の拡充や顧客獲得を本格化するなか、先行投資を重ねてきた携帯で早期に成果を出すことが大きな課題だ。

21年7~9月期の営業損益は、事前の市場予想平均(QUICKコンセンサス)で543億円の赤字。前年同期(397億円の赤字)からは赤字幅が拡大する。前四半期(635億円の赤字)に引き続き多額の損失を計上するのは、携帯の低迷に尽きる。同事業は1~3月と4~6月にそれぞれ1000億円に迫る営業赤字を計上した。利益を圧迫するのが他社から通信回線を借りる「ローミング」だ。

楽天は自社の通信設備が整っていないエリアでは、KDDIに料金を支払って通信回線を借りる形でサービスを提供している。契約約款をもとに算出すると、その「利用料」は1ギガバイト(ギガは10億)で税込み約550円。楽天モバイルの現行の料金プランでは、KDDI回線で6ギガ以上消費すると、楽天がそのユーザーから受け取れる損益は赤字になる計算だ。

「ローミング費用が想定を上回ってしまっている」。三木谷浩史社長はこうこぼす。楽天側は実額を公表していないが、その傾向をつかめるのがKDDIが開示する「モバイル通信料収入」と「マルチブランド通信ARPU収入」の差分だ。ここにはMVNO(仮想移動体通信事業)サービス関連の収入なども含まれるが、アナリストらへの取材によれば大部分が楽天から受け取るローミング収入とされる。

ここ1年ほどは増加の一途をたどっている。21年7~9月期は前年同期の2倍超に膨らんだ。岡三証券による21年12月期の予想ベースで、ローミングは携帯事業の営業費用の1割以上を占めている。利益に与えるインパクトが大きい。

顧客獲得ペースの鈍化も気がかりだ。1~3月の150万に対し、4~6月は約90万と落ち込んでいる。KDDIなど競合他社の新プランで「楽天モバイルの価格優位性は後退している」(UBS証券の高橋圭氏)との声も聞かれる。

会社側が想定する「23年度中の黒字化」とは、どれほどハードルが高いのか。ARPU(1回線あたりの月間売り上げ、無料キャンペーンユーザーを除く)や端末販売収入、営業費用の予想をもとに営業黒字に必要な携帯プランの契約数を概算してみよう。

ARPUを2000円と高めに見積もった場合でも、23年度末には1400万の契約が必要になる。21年6月に442万だった契約数をここから1000万ほど上積みするとなると、1カ月で30万強の新規獲得が目安になるが、モルガン・スタンレーMUFG証券の津坂徹郎氏は、7~9月期の契約獲得数を「60万~80万(1カ月あたり20万~約26万)」と推計。前四半期から獲得が減速している可能性を指摘する。

楽天も手をこまぬいてはいない。ここにきてコスト構造を転換する施策に力を注いでいる。

「10月からローミングエリアを過去最大規模で縮小した」。こう説明するのは楽天モバイルの矢沢俊介副社長。北海道や沖縄県など23の道県が自社回線エリアに切り替わり、人口カバー率は10月中旬時点で94%となった。1年前の6割台から大きく伸びている。

足元は世界的な半導体不足で基地局の整備に遅れが生じているが、混乱が緩和すれば再び急ピッチで整備する見通しだ。来年3月には96%を目指す。ローミング費用の軽減は利益増に直結するだけに影響度は大きい。

22年4月から顧客単価が上がるインパクトも小さくない。21年4月末に1年間の無料キャンペーンが終了したため、来春からはほぼ全ての契約者が課金対象になる。収益増が期待できる。

ローミングの打ち切りに合わせ、顧客獲得施策を加速している。テレビや動画投稿サイトでのCM出稿を積極化させただけでなく、10月からは新規契約者向けに楽天ポイントの還元や、月額課金制の音楽配信アプリを期間限定で無料にするキャンペーンにも乗り出した。

今後を見渡すと、競合との競争激化や半導体不足の余波、7月の格下げなど懸念要素には事欠かない。ECや金融関連の一層の利益拡大が容易でないなか、収益力の底上げには携帯の損益改善が不可欠だ。ローミング費用の減少と契約者数の増加を両立できるかがカギを握る。』