[FT]米政府、OPECプラスの増産見送りにいら立ち

[FT]米政府、OPECプラスの増産見送りにいら立ち
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『石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」が4日の閣僚協議で石油の追加増産を見送ったことを受け、米政府は世界経済の回復が遅れる恐れがあると指摘し、燃料価格を下げるために必要な「あらゆる手段」を取る用意があると警告した。

OPECプラスは毎月日量40万バレル増産する計画の継続を決めたが、追加増産は見送った=ロイター

サウジアラビアが主導するOPECとロシアなどは、石油価格の高騰を抑えるための米国の増産要請を受け入れなかった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)による低迷から需要が急回復しているにもかかわらず、生産量を緩やかにしか増やさない方針を維持すると決めた。

米国家安全保障会議(NSC)の報道官は「世界の国々が回復に向かうこの重要な時に、OPECプラスは能力や影響力を行使する気がないようだ」と不満を表明し、「需要と供給のミスマッチによって世界経済の回復が損なわれることがあってはならない、というのが我々の見解だ」と述べた。

経済活動がパンデミック前の水準に完全に戻ったわけではなく、エネルギー価格の上昇でインフレ懸念が生じているにもかかわらず、石油価格は7年ぶりの高水準に近付いている。OPECプラスの会合を受け、北海ブレント先物相場は約2%下落して1バレル80ドルをつけた。

戦略備蓄の放出も視野に

バイデン米大統領は、1年で60%という国内ガソリン価格の高騰は、ロシアとサウジが石油供給を抑えていることが原因だと非難している。

グランホルム米エネルギー長官は先月、フィナンシャル・タイムズ(FT)紙に対し、過去1年で2倍以上に上昇した原油価格の沈静化には、石油の戦略備蓄の放出もバイデン政権が持つ「手段」の一つだと語った。

サウジは4日、毎月日量40万バレルずつ緩やかに増やしていく方針は「責任ある規制当局」としての行動だと自己弁護した。サウジのエネルギー相を務めるアブドルアジズ王子は記者会見で「この数カ月繰り返し何度も目の当たりにしたのは、エネルギー市場は統制しなければとんでもない方向に向かうということだ」と強調した。

OPECプラスは統一戦線を組んで米国に対峙しようとしている。メキシコからアラブ首長国連邦(UAE)まで各国のエネルギー相が決定を支持した。声明では「石油市場の外にあるエネルギー複合体の他の部分で極端な変動と不安定さが生じている中で、市場に明確さをもたらしたい」と表明した。

アブドルアジズ氏は、天然ガスや石炭市場では今年になって石油よりも価格上昇が進んでいたと繰り返し言及し、OPECの決定を正当化した。だがこの説明で米ホワイトハウスを満足させることはできなかった。

緊迫する米サウジ関係

サウジは長い間、米政府にとって中東で最も重要な同盟国の一つだったが、バイデン政権との緊張感は高まるばかりだ。

バイデン氏はサルマン国王の後継者で実質的な支配者であるムハンマド皇太子との会談を拒否している。3月には米国家情報長官室がサウジの著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害を皇太子が承認したとする機密調査書を公開した。

皇太子の異母兄弟であるアブドルアジズ氏は、化石燃料への依存度を下げる一方でサウジに石油増産を求める欧米諸国に不満を抱えているとみられる。

米JPモルガンの石油・ガス調査部門を率いるクリスチャン・マレク氏は「米国が徹底した気候変動対策を取ろうとしており、米サウジ関係は緊迫化の瀬戸際にある」と指摘する。「だがそれを背景に、サウジは自国のエネルギー転換のための資金を必要としている。そしてそれに見合う石油価格と対外関係を探っている」という。

米政府はまた、欧州とアジアで価格が年初から5倍に上昇した天然ガス市場でのロシアの動きを注視していると明らかにした。欧米の一部の政治家は、ロシア政府による西欧への供給制限がガス価格の高騰を加速していると非難する。

米調査会社ラピダン・エナジー・グループのトップでブッシュ元大統領(第43代)の特別補佐官を務めたボブ・マクナリー氏は、OPECプラスの決定は消費国で波紋を呼ぶ可能性があると話す。「OPECプラスのゼロ回答とバイデン氏が明確に脅しをかけていることを踏まえると、国際エネルギー機関(IEA)ではないにしても米国が石油の戦略備蓄を放出する可能性は、他の報復手段とともに急速に高まっている」と同氏は指摘する。

米国は昨年、パンデミックで打撃を受けた産業を支えるため、サウジとロシアに歴史的な減産を迫った。落ち込んだ石油供給の回復に向け、OPECプラスは現在、2022年末まで毎月日量40万バレル増産する計画を実行している。

By David Sheppard, Tom Wilson, Derek Brower and Myles McCormick

(2021年11月5日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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