中国共産党、歴史漫画で若者に訴え 天安門事件は省略

中国共産党、歴史漫画で若者に訴え 天安門事件は省略
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『【北京=羽田野主】中国共産党は1921年7月の創立から100年の歩みを漫画にして出版した。習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の新型コロナウイルス対策などを業績として誇示する一方で、若者らが民主化を求める動きを武力で鎮圧した「天安門事件」は省略した。党の成功体験を前面に出し、一党支配を正当化する内容だ。

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漫画は「中国共産党の歴史」とのタイトルで、党直属の中央党史文献研究院が指導・審査し、9月に出版した。子ども向けのイラストと短い文章で217ページにわたって党の「歴史」を紹介している。

習氏の業績として脱貧困の達成や、ややゆとりのある「小康社会」の実現を挙げた。習氏肝煎りの経済圏構想「一帯一路」を巡っても130カ国以上が協定に署名し、交易路が広がったと説明している。

一方で党の負の遺産はほとんど描かれていない。1989年に北京で起きた天安門事件は一切触れられていない。

建国の父、毛沢東が権力奪還のため発動し、全国で1000万人以上が死亡したとの推計もある文化大革命は「全国でひどい政治・社会の危機に陥った」と述べるにとどめた。「複雑な国際・国内の社会・歴史が原因」とした。

それよりもページを割いたのが文革期の1966~76年に挙げた実績だ。「わが国は依然として素晴らしい成果を挙げた」と強調した。初めてとなる水爆実験や人工衛星の打ち上げ成功、ニクソン米大統領の訪中などを挙げた。

異例ともいえる漫画の出版は、党が深く関与しているだけに、結党以来100年の歴史を総括する「歴史決議」とも関わりがありそうだ。共産党は8日に開く重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)で「歴史決議」を採択する。

毛と改革開放を進めた鄧小平の時代に続く第3の決議となる。習氏の権威を大きく高め、2022年秋の党大会で、3期目に入るための布石とみられている。

過去2回の決議は「歴史問題」に焦点を当てて、前の時代の否定に意味を置いた。今回の決議は党100年の歩みを歴史的成果として時代に区切りをつけ、習氏の「新時代」に入るためのステップにする。文革などへの言及は限られるとみられる。

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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説

タイミング的に、この歴史漫画の内容は間違いなく今日から開催される「六中全会」の歴史決議を反映しているだろう。今回の歴史決議で「歴史的転機」がどう語られるか。

今後の中国の進むべき方向性を示すものとなることから注目される。
2021年11月8日 8:42 』