中国、米の軍事報告書に反発 核政策でも対立深まる

中国、米の軍事報告書に反発 核政策でも対立深まる
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0416P0U1A101C2000000/

『【ワシントン=中村亮、北京=羽田野主】米国と中国が核政策をめぐり対立を深めている。米国は中国が核弾頭保有数を10年間で5倍に増やすと懸念するが、中国は米国の核戦力こそが脅威だと反発した。バイデン米政権が協力分野と位置づける軍縮の進展は見込みにくい。

米国防総省は3日、中国の軍事力に関する年次報告書(2021年版)を公表した。中国の核弾頭保有数を20年時点の少なくとも200発から10年間で1000発に増えると見積もった。陸海空の全てから核攻撃を実行する初期段階の能力を得た可能性にも触れた。敵の核ミサイルの着弾前に反撃する「警報即発射」態勢を整えつつあるとした。

国防総省高官は「中国が核政策や核戦略に関する長年のアプローチから逸脱しかねない」と懸念を示した。たとえば中国は核先制不使用の方針を示してきた。報告書は中国人民解放軍の一部が限定的な核先制使用を認める可能性を議論していると指摘した。

米国務省によると、米国の核弾頭保有数は20年9月時点で3750発。米ロの新戦略兵器削減条約(新START)は大陸間弾道ミサイル(ICBM)などに実戦配備できる核弾頭を1550発に限るが、中国が30年に1000発を配備しても米国が上回る。中国は米国に劣っているとの主張を続ける可能性がある。

中国外務省の汪文斌副報道局長は4日の記者会見で米国防総省がまとめた報告書について「中国は一貫して自衛防御のための核戦略をとっている」と反発した。保有する核兵器の規模も安全のための最低限の水準だと主張した。「米国は報告書の名を借りて中国の脅威をあおっている。米国こそ世界で最大の核の脅威の源だ」と強調した。

米カーネギー国際平和財団のジェームズ・アクトン氏は「短期的に中国との軍縮条約を交渉できると思わない」と指摘する。米国のトランプ前政権は中国に軍縮交渉に加わるよう強く要求したが、中国は一貫して拒否した。

インド太平洋地域では米中対立が続き、米軍は台湾海峡や南シナ海での有事に警戒を強める。米ジョージタウン大のケイトリン・タルマージ准教授は意図しない形で米国が中国の核戦力を攻撃し、中国が核兵器を使った反撃を検討するシナリオを警戒する。

中国は核弾頭と通常弾頭を両方とも搭載できるミサイルを配備する。米領グアムを射程に入れる中距離弾道ミサイル「DF26」はその代表例だ。弾頭の種類にかかわらず共通の発射装置や指揮統制システムを使っていれば、DF26の関連インフラの破壊が核戦力への攻撃とみなされ、中国が核兵器で反撃するリスクが出てくるという。

タルマージ氏はこうしたリスクを避けるため軍当局者の対話チャンネルを増やし、緊急時に双方の意図を連絡できる体制を充実させるべきだと訴える。米政権は対話に前向きだが中国は慎重とされ、当局者間の接触が細っているとみられている。』