米、核戦力も対中優位性低下 日本への「核の傘」に影

米、核戦力も対中優位性低下 日本への「核の傘」に影
米国防総省が報告書
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN032IV0T01C21A1000000/

『【ワシントン=中村亮】米国防総省は3日にまとめた中国の軍事力に関する年次報告書で中国の核開発に強い懸念を示した。米国の核戦力の優位性が下がり、中国から米本土に攻撃を受けるリスクが増す。米国が本土攻撃を恐れて日本防衛のための核使用をためらえば、米国による「核の傘」の実効性を揺るがす。

報告書は中国の核弾頭保有数だけでなく、核弾頭を攻撃目標に運ぶ運搬システムの増強にも警鐘を鳴らした。中国は米国のミサイル防衛システムを回避し、米本土の標的を確実に攻撃できる能力保有を目指す。反撃能力を示して米国が台湾海峡や南シナ海での有事に介入しにくい状況をつくろうとしている。

報告書によると、中国が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や大陸間弾道ミサイル(ICBM)、空中発射弾道ミサイル(ALBM)による「核の3本柱」を構築した可能性がある。陸海空の全てから核攻撃が実行できれば、確実に敵を攻撃しやすくなるため抑止力が増すとされる。

中国が夏に実施したとされる核弾頭を搭載できる極超音速兵器の実験も米本土攻撃を目的とした。音速の5倍(マッハ5)以上で変則軌道で飛行する極超音速兵器は既存のミサイル防衛システムで迎撃が極めて困難との見方が多い。

中国の核戦力増強が続けば、米国の核の傘の実効性に疑念が生じかねない。日本が核攻撃を受ければ、米国が日本に代わって報復する構えを見せて日本に対する攻撃を抑止してきた。仮に米国が本土攻撃を恐れて日本を守る可能性が下がったと中国が判断すれば、抑止力が効きにくくなる。

国防総省高官は核の傘をめぐる課題について「同盟国の意見や懸念を共有するため多くの機会を設けていく」と説明した。バイデン政権は核戦略の指針である「核体制の見直し(NPR)」の作業を進めており、日本や韓国、欧州諸国と緊密に意見を交わすとみられる。

中国の核開発について国防総省高官は「中国は狙いをもっと説明すべきだ」とも強調した。米中対立が長引き、軍当局者間の対話も細って、中国側の意図や運用方針を測りかねる。疑心暗鬼が軍拡競争を招く恐れもある。

中国は通常兵器を前提とする戦闘でも米国優位を揺るがしてきた。米ランド研究所の分析によると、台湾有事の際の制空権をめぐり米軍が1996年時点で絶大な優位性を持っていたが、17年には米中が互角になったという。

国防総省が中国の脅威を強調するのは、国防予算を増やす思惑も透ける。民主党のリベラル派を中心に軍事費を減らして貧困対策や医療などに充てるべきだとの声が目立つ。』