中国、30年に核弾頭1000発 米国防総省が報告書

中国、30年に核弾頭1000発 米国防総省が報告書
昨年の5倍、台湾有事で米介入抑止
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN030ND0T01C21A1000000/

『【ワシントン=中村亮】米国防総省は3日、中国の軍事力に関する年次報告書(2021年版)をまとめた。中国の核弾頭保有数は30年までに少なくとも1000発と、20年時点の保有数の推計である200発から5倍に増えると見積もった。ロシアを交えた軍拡競争が一段と激しくなる恐れがある。

20年版の報告書では「(200発から)10年間で少なくとも2倍」になるとしており、わずか1年間で中国の核開発が想定を大幅に上回るペースで進むと判断したことになる。国防総省高官は核弾頭を攻撃目標まで運ぶミサイルの発射設備や爆撃機の開発計画などを踏まえ、見通しを引き上げたと説明した。

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米国務省によると、米国は20年9月時点で3750発の核弾頭を持つ。米国とロシアの核軍縮の枠組みである新戦略兵器削減条約(新START)は、米国が実戦配備できる核弾頭数を1550発に限る。条約の適用対象外の核弾頭もあるが、今回の見通しが現実になれば実戦レベルで米中の核戦力が接近する。中国は新STARTに参加していない。

中国は大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)といった米本土を射程に入れる戦力を拡大している。米軍は台湾海峡や南シナ海での有事に介入した場合、戦闘が進むにつれて中国から米本土への核攻撃を受けるリスクが高まる。中国は核戦力増強で米国の介入をためらわせる狙いがあるとみられる。

報告書は台湾有事への強い危機感も示した。中国が米国を念頭に「台湾有事で第三者の介入抑止を目指す」とした。中国は多彩なミサイルを大量に配備し、米軍を中国本土に近づく艦船や戦闘機を攻撃する態勢を整える。

報告書によると、中国は極超音速兵器を搭載できる中距離ミサイル「DF17」を20年に実戦配備したと指摘した。中国による極超音速兵器の実戦配備は初めてという。主要な米軍基地がある米領グアムを射程に入れる中距離ミサイル「DF26」の在庫も増やした。

中国が中国人民解放軍の創設100年にあたる27年に向けて「軍の機械化・情報化」を加速するとした。中国は軍事分野で人工知能(AI)の活用を進め、軍民融合による技術開発を急いでいる。報告書は「27年の目標を達成すれば中国は台湾有事でいっそう信頼のおける軍事的選択肢を手に入れることになる」と強調した。

中国軍が世界での活動を拡大させようとしていることにも警鐘を鳴らした。中国軍が「世界での役割拡大」を訴え、新型コロナウイルスのワクチンを海外に輸送したと例示。「20年は主に新型コロナ関連援助を通じて海外駐留を常態化し、外国軍と緊密な関係を築いた」という。

すでに拠点を持つアフリカ東部ジブチに加え、アラブ首長国連邦(UAE)やケニア、タンザニア、タジキスタンなどで基地へのアクセスを目指していると列挙した。中国の海外拠点が増えるほど「米軍の軍事作戦を妨げる可能性が出てくる」と懸念し、西太平洋だけでなく世界で米中の競争が激しくなるシナリオに触れた。

サイバー分野では先端技術を取り込んで「今後数年間で作戦実行能力を改善させるだろう」と訴えた。軍事作戦に欠かせない人工衛星に対する攻撃能力や電子戦能力の向上も続いているという。』