米EV補助案に日欧勢が反発 労組工場の優遇は「不公平」

米EV補助案に日欧勢が反発 労組工場の優遇は「不公平」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN02D6N0S1A101C2000000/

『【ニューヨーク=中山修志、ワシントン=鳳山太成】米国が検討する米自動車大手の電気自動車(EV)を優遇する法案に対し、トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)など日欧自動車メーカーが反発している。従業員が労働組合に加盟するメーカーのEVのみに手厚い税控除を設ける内容で、労組に加盟しない日本メーカーなどが不利になる。世界貿易機関(WTO)ルールに抵触するとの指摘もある。

トヨタは2日、ウォール・ストリート・ジャーナルなど米主要紙に米大手メーカーを優遇する法案に反対する意見広告を掲載した。「フォード、ゼネラル・モーターズ(GM)、クライスラー以外のEVを購入する消費者は4500ドルを追加で支払う必要がある」と主張し、「これは不公平で正しくない」と撤回を求めた。

トヨタなどが問題視しているのは、バイデン政権と与党・民主党が1.75兆ドル(約200兆円)の歳出・歳入法案の枠組みに盛り込んだEV普及策の中身だ。従来のEV購入補助金の7500ドルに加え、従業員が労組に加盟する工場で生産したEVの購入者に4500ドルの所得税を控除する優遇策を設ける。

法案はGMなど米大手メーカーが本社を置く中西部ミシガン州選出のキルディー下院議員(民主)が提案した。GMとフォード・モーター、米クライスラーの流れをくむ欧州ステランティスの3社の従業員は全米自動車労組(UAW)に加盟しているが、日本や欧州、韓国メーカーとEV専業の米テスラは非加盟だ。22年1月に制度を導入すれば、米大手とその他のEVで購入補助に約50万円の差がつくことになる。

フォードのミシガン州のEV生産工場=ロイター

労組加盟に加え、26年もしくは27年以降は米国外で組み立てられたEVが税控除の対象外になる案も審議されている。

これまでにホンダも「不当な提案だ」と反論し、労組加盟を優遇条件から外すよう議会に求めた。VWの米国トップは独紙のインタビューで「米国工場の従業員のことを考えると、(UAWかどうかで)異なる優遇策は不公平で間違っている」と述べた。

日本や欧州連合(EU)、カナダ、メキシコなど25カ国・地域の駐米大使も議会指導部にあてた10月29日付の書簡で「労組加入の権利は税制優遇(の条件)に使うべきではない」として取り下げるよう求めた。国産品の優遇を禁じたWTOルールに違反すると指摘して再考を促した。

一方、UAWのレイ・カリー会長は「組合員の雇用を保護し、創出する提案を称賛する。この内容が超党派の支持を得ることを望む」と歓迎コメントを出した。

UAWの加盟工場は非加盟の工場に比べ従業員の時給が2割程度高いとされる。日本や欧州メーカーは生産コストを下げるために組合の勢力が強い中西部を避け、ケンタッキーやミシシッピなど南部州に米国工場を建設した経緯がある。

労組加盟を条件とする優遇案が成立すれば、外国メーカーがEVを米国で生産するメリットが薄れ、結果的に米国への投資を冷ますことにつながりかねない。

米ピーターソン国際経済研究所のゲイリー・ハフバウアー氏は「確実にWTOルール違反だ。中国など(国内企業を優遇する)外国の補助金に反対する米国の姿勢とも矛盾する」と指摘する。

歳出・歳入法案は政権と民主党が早期採決をめざして細部を詰めている。トヨタのエンジン工場がある南部ウェストバージニア州出身で法案成立のカギを握るマンチン上院議員(民主)はまだ支持していない。法案の中身は成立時に変わる可能性がある。』