「24年までに中国が台湾侵攻も」 前米大統領補佐官

「24年までに中国が台湾侵攻も」 前米大統領補佐官
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN3105V0R31C21A0000000/

『【ワシントン=中村亮】米国のロバート・オブライエン前大統領補佐官(国家安全保障担当)は、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が「北京五輪と米次期大統領選の間こそが台湾への悪事を働くチャンスだと確信している可能性がある」と語り、米大統領選がある2024年までの台湾侵攻リスクに警鐘を鳴らした。

オブライエン氏がオンライン形式で日本経済新聞のインタビューに応じた。オブライエン氏はトランプ前政権で人質問題を担当する国務省の大統領特使を務め、19年9月に大統領補佐官に就いた。

台湾海峡の緊張をめぐり、中国が22年2月の北京冬季五輪が終わるまで台湾を侵攻するリスクはないとした。一方、中国は24年の米大統領選についてトランプ前大統領の復活に加え、ポンペオ前国務長官などの対中強硬派の勝利を懸念すると分析した。習氏は台湾を「核心的利益」と位置づけて中台統一を目指している。

バイデン大統領は夏以降、公の場で米国の台湾防衛を2回にわたり明言した。米国で1979年に定めた台湾関係法は米国の台湾防衛義務を明記しておらず、バイデン氏の発言は歴代政権の方針から逸脱している。

ホワイトハウスがいずれも発言を訂正したが、オブライエン氏は「大統領は何らかの計画を持ち、中国の指導者に疑念を植え付けようとしているようだ」と、わざと間違えた可能性に触れた。「バイデン政権が機密情報を踏まえて中国の計画をとても懸念し、大統領の発言につながったかもしれない」との見方も示した。台湾有事の現実味が増し、中国抑止を迫られている可能性を排除できないという。

中国の台湾侵攻を防ぐため、日米やインド、英国、欧州連合(EU)の協力を主張した。各国が連携して「台湾侵攻の報いは軍事だけでなく経済面でも中国国民にとって極めて厳しいものになると中国へ明確に伝えることがとても重要だ」とした。

中国が台湾を支配した場合に「日本は他のアジア諸国から分断される」と懸念を表明した。中国軍は台湾を拠点にすると、沖縄から台湾を通ってフィリピンを結ぶ第1列島線を越えて太平洋に進出しやすくなる。日本の貿易ルートが遮断されるリスクが増す。

企業も台湾有事に備えるべきだと提言した。国際社会が中国に強力な経済制裁を科すリスクがあるからだ。「中国とビジネスをする大企業や中小企業はサプライチェーンや顧客基盤の多様化に向けた計画をつくるべきだ」と訴えた。

バイデン米政権の対中政策についてはおおむね評価しつつ、気候変動対策での対中協力は慎重に進めるべきだとした。「中国は気候変動について空っぽの約束をして貿易や台湾など別の分野で便益を得るかもしれない。それを強く懸念している」と力説した。

中国が参加を申請した環太平洋経済連携協定(TPP)は、当事国が反対すべきだとの立場をとった。「中国の参加は法の統治や公平性に基づく自由で開かれた貿易システムを築くというTPPの存在意義を破壊するかもしれない」と断じた。

トランプ政権は発足初日にTPP離脱を表明した。オブライエン氏はTPPについて中国への対抗軸をつくるうえで「原則としてはとても良い考えだと思う」と認めた。一方で米国の参加について「他国だけでなく米国の労働者や家計への恩恵も担保しなければならない」として距離を置いた。
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

バイデン大統領の二回にわたる台湾防衛発言が、失言なのか、意図的なものか、という点は、専門家の間で関心を持たれています。オブライエン氏が意図的な発言の可能性を示唆しているのが興味深いところです。

彼の政治的な立場からいえば、バイデン大統領の発言を度重なる失言として、職務遂行能力の欠如として批判することもできるからです。

またTPPから離脱したトランプ大統領の立場を慮って、TPPへの米国の参加条件に留保はつけておりますが、原則としてはとても良い考えと話しているのも、政治的な立場よりも対中戦略の実効性を優先して話していると考えられ興味深いです。』