TPP、中台加盟どうなる? 政治的要素絡み混迷も

TPP、中台加盟どうなる? 政治的要素絡み混迷も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD2232I0S1A021C2000000/

『「9月16日に中国、その6日後には台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟をほぼ同時に申請したのはびっくりしたよ」「2017年には米国が離脱したし、TPPはこれからどうなるのかな」

TPPへの中台の加盟申請についてバーチャル・キャラクター、日比学くんと名瀬加奈さんが太田泰彦編集委員に聞きました。
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日比くん「中国はなぜこのタイミングで加盟を申請したのですか」

国際的な舞台に上がり、貿易のルールを決める側のプレーヤーになりたいからです。TPPは米オバマ政権が推し進めた構想ですが、その後トランプ大統領が「自由貿易で輸入が増えると米国の雇用を脅かす」と言って離脱しました。バイデン政権も保護主義に傾いたままです。

米国が抜けた後に中国が入れば、ルールを作る側になれるかもしれない――。習近平(シー・ジンピン)政権にはそんな期待があるようです。世界の市場へのつながりをよくすれば、輸出を増やせます。米国が動けないタイミングを狙って手を挙げ、「自由貿易の旗手」を目指しています。

もう一つ理由があるとすれば、経済成長を続けるには改革が必要だからです。TPPには関税を下げるだけでなく、国有企業や労働者の保護、環境配慮などについて様々な約束事があります。TPP加盟をテコとして使いたい改革派の声も習政権の判断に影響しているかもしれません。

名瀬さん「中国を追うような台湾の申請はなぜですか」

中国に先を越されれば台湾がTPPに入れなくなるからです。中国から見れば台湾は自国の一部なので、台湾が後から来ても加盟を認めないでしょう。とはいえ貿易の自由化は中国より台湾の方が進んでいます。台湾当局には「中国より先に加盟できる」という計算があります。

TPPに限らず、台湾はこれまで様々な自由貿易の枠組みに入れてもらえませんでした。折しも米中の対立が激しくなり、蔡英文総統が率いる台湾当局は中国と対決姿勢を強めています。先進国の多くが台湾を応援しています。

日比くん「加盟には何が必要なのでしょう」

TPPは既に完成した協定なので、加盟したければ、協定の中身に合わせて自分の国の制度や政策を改善しなければなりません。例えば国有企業が民間企業の競争力を奪わないようにする条項があります。国有企業が多い中国には高いハードルとなります。

労働者の保護についても、中国は新疆ウイグル自治区での強制労働の問題が指摘されています。そもそも自由に労働組合を結成できないので、TPPに盛り込まれた団体交渉権の確保などの条件をクリアするのは難しいでしょう。知的財産の保護に関しても、課題が少なくありません。

一方、台湾は現状でもTPPの要件をほぼ満たしています。台湾の加盟協議のスピードの方が速いはずですが、政治的な要素が絡むため、一直線には進まないでしょう。

名瀬さん「米国のTPP復帰はないのでしょうか。また、包括的経済連携(RCEP)の方が現実的なのでは」

バイデン政権はインフラ整備や政府債務上限など、重要な法案をたくさん抱えていて通商問題を議会に持ち込む余裕などありません。通商交渉の権限は議会が持つため、議会が大統領に権限を付与しない限り、交渉はできません。

RCEPは中国が加わる大きな枠組みですが、自由化の水準は中国が対応できる範囲にとどまっています。伝統的なモノの貿易ではそれなりの効力がありますが、データ貿易や国有企業改革、環境、労働問題などでは自由化の力は限定的です。

TPPもRCEPも10年以上も前にできた構想で、その後、貿易の姿は大きく変わりました。新しい発想の枠組みが求められます。

ちょっとウンチク 自由化の要は台湾

欧州連合(EU)は9月に公表したインド太平洋戦略で、台湾との経済連携を急ぐ方針を打ち出した。米国のバイデン政権と議会も、台湾との親交に傾斜を強めている。

ほんの数年前まで世界の自由貿易協定から疎外されていた台湾が、通商秩序づくりの中心に座っている。中国の脅威の中で半導体不足が世界の自動車産業を襲い、供給地として台湾の価値が高まったためだ。

主要国の通商政策の目標は、自由貿易から供給網の確保へとすり替わった。この流れを誰かが止めなければ、行き着く先は排他的なブロック経済だろう。(編集委員 太田泰彦)
太田 泰彦

TPP、中台加盟どうなる? 政治的要素絡み混迷も(8:20)
半導体の産業振興、なぜ今?需要増見越し復活期す(9月4日)』