極超音速兵器「中国が5年で数百回実験」

極超音速兵器「中国が5年で数百回実験」 米軍高官
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『【ワシントン=中村亮】米軍高官は28日、中国が極超音速兵器の実験を5年間で数百回実施したと主張した。米軍は9回にとどまるといい、2025年ごろまでの実戦配備へ研究・開発を急ぐ。米軍高官の発言には中国の脅威を強調し、与党・民主党に浮上する軍縮論を後退させる思惑も透ける。

複数の米メディアによると、米軍制服組ナンバー2のハイテン統合参謀本部副議長は28日、記者団に対して極超音速兵器の開発で中国が先行していると訴えた。中国が実験を多く実施し、失敗から学んでいるからだと指摘した。米国防総省について「官僚的すぎる」として、失敗を恐れない慣習が必要だと唱えた。

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長も27日公開の米メディアのインタビューで、旧ソ連が1957年に世界初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げた衝撃になぞらえ、中国の極超音速兵器開発について「それにとても近い」と語った。

バイデン政権は米本土の標的が確実に攻撃されるようになる事態を最も懸念する。米軍によると、中国は夏の実験で地球を周回する軌道に核弾頭を搭載できる極超音速滑空体を投入した。これは理論上、地球のあらゆる場所を攻撃できる。

射程が大幅に伸び、困難とされてきた南極圏回りの米本土攻撃も可能になる。米国は北回りの本土攻撃を想定してミサイル防衛を整えており、南回りは守りが手薄だ。

中国は米本土攻撃を想定し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の配備を進めてきた。さらに極超音速兵器への対応が必要になる可能性がある。米国は本土攻撃のリスクが高まると、台湾海峡や南シナ海の有事に介入しにくくなる。介入すれば中国が米本土を攻撃し、多くの米国民が犠牲になるリスクがある。

カーネギー国際平和財団のジェームズ・アクトン氏は中国は現在でも米本土に打撃を与える十分な核戦力を持っており、極超音速兵器によって核抑止力を巡る米中の戦力バランスにすぐに大きな影響が出ないとの見方を示す。中国は米国のミサイル防衛技術が飛躍的に向上するシナリオに備え極超音速兵器を開発していると分析する。

一方でランド研究所のデビッド・オクマネク氏は、中国が西太平洋での戦闘に使うと想定される中距離の極超音速兵器について「新たな脅威だ」と懸念する。たとえば一般的に米原子力空母には水上艦が付き添って敵のミサイルを迎撃する態勢をとるが、極超音速兵器には対応できず、空母が攻撃を受けるリスクが一段と高まる。

中国は中国大陸に米軍をなるべく近づかせない戦略を採用すると米側は想定している。中距離の極超音速兵器はこの戦略に寄与する公算が大きい。米戦略国際問題研究所(CSIS)によると、中国は射程2000㌔㍍程度の極超音速兵器を実戦配備している。

米軍も25年ごろに中距離の極超音速兵器を実戦配備することを目指す。オクマネク氏は台湾上陸作戦を担う中国軍部隊の攻撃に有効だと強調する。中国は米軍の介入を招く前に台湾侵略を終えることを目指すとの見方が多い。米軍は戦闘開始直後に中国軍部隊を着実に攻撃して進軍を遅らせる必要があり、極超音速兵器が貴重な戦力になりうる。

米軍幹部の発言には中国の脅威を訴えることで、軍事予算を拡大したい思惑も透ける。バイデン政権は核態勢の見直しを進めている。民主党のリベラル派は巨額の予算を投じてICBMを最新版に置き換える計画に難色を示し、核先制不使用の方針を掲げるべきだと主張する。米軍の方針と隔たりが目立つ。

中国が今夏に実施したとされる極超音速兵器実験の存在を米国で公に認めているのは、米軍制服組に限られる。国防総省のカービー報道官は27日の記者会見で「統合参謀本部に聞いてほしい」と語り、実験の事実を認めなかった。

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