中国、台湾の欧州接近に危機感 習氏 英独仏首脳と協議

中国、台湾の欧州接近に危機感 習氏 英独仏首脳と協議
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『【北京=羽田野主、台北=中村裕】中国が、台湾の欧州接近に警戒を強め欧州を必死でつなぎとめようと動いている。10月中旬以降、習近平(シー・ジンピン)国家主席自ら英独仏首脳に連携を呼びかけ、外相の欧州への派遣も決めた。欧州を舞台に中台が激しく綱引きする構図も浮かび上がる。

習氏は29日に英国のジョンソン首相と電話協議した。習氏は「英国が多くの優れた製品を輸出し、医療やデジタル経済、金融などの分野で協力を開拓することを歓迎する」と表明。31日に英グラスゴーで始まる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で議長国の英国に協力する姿勢を示した。

習指導部は、27~29日の日程で王毅(ワン・イー)国務委員兼外相をギリシャ、セルビア、アルバニア、イタリアの4カ国に派遣した。とくに力を入れたのが29日の王氏のイタリア訪問だ。イタリアでは30~31日にかけて主要20カ国(G20)首脳会議が開かれる。バイデン米大統領や欧州主要国の首脳が出席する中、習氏はオンラインの参加にとどまる。

強く意識するのが台湾の呉釗燮・外交部長(外相)が約2年半ぶりに欧州を訪問したことだ。スロバキアやチェコを訪れ、欧州との関係強化をアピールしており、台湾の外交部は30日、呉氏が、29日に欧州連合(EU)欧州議会の議員やベルギーの国会議員と相次ぎ会談したと発表した。欧州との連携強化を議論したという。

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習指導部は中国本土と台湾は不可分だという中国の立場に反する動きだとして警戒を強める。G20開催直前に、外相が駆け込み訪問するのは、台湾の欧州での積極的な動きに対抗するほか、新疆ウイグル自治区の人権問題などで、欧米主導の中国批判が過熱しないようにクギを刺す狙いもあるとみられる。
台湾は中国に対抗し、欧州との関係強化にも乗り出した=ロイター

習指導部は欧州の動向は主要国のドイツやフランスが大きなカギを握るとみて、10月中旬以降、個別に働きかけを強めている。「来年は中独国交樹立50周年だ。正しい方向を続けることが非常に重要だ」。習氏は13日、ドイツのメルケル首相とのテレビ電話での協議でこう述べた。「EUが独立自主を堅持するように希望する」とも強調し、米国の対中強硬策に追随しないように求めた。

18日には李克強(リー・クォーチャン)首相も、メルケル氏とテレビ電話で座談会を開いた。中国最大の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)や車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)、産業システム大手の独シーメンス、自動車部品世界最大手の独ボッシュなどの幹部も同席した。

李氏は席上で「中国の市場はますます大きく開かれる。国外の先進技術や製品の輸入を増やす」と表明し、独企業に積極的に門戸を開放する考えを表明した。

習氏も26日、フランスのマクロン大統領と電話協議した。フランスは、米英豪が中国対抗を念頭に、9月に創設した安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」を巡り、米国と衝突したばかり。習氏は中国への支持、理解を求めた。

中国が欧州各国の動向に危機感を募らせるのは、米英豪など世界の主要国が対中国で連携して圧力を強めるなか、さらにその包囲網が、「台湾問題」を通じて国際社会に広がることを警戒していることがある。

特に、中国と経済的な結びつきが強いドイツを中心に欧州各国はこれまで、中台のどちらを支持するかなどの問題で明確な態度を示してこなかった。だが、最近は半導体の供給問題などを含め台湾寄りの姿勢が目立ち始め、中国の警戒感は一気に強まっている。

EUは9月、インド太平洋戦略を公表し、台湾と主に経済面での関係深化に踏み出した。今月21日には、欧州議会がEUと台湾の政治的な関係強化を勧告する文書を賛成多数で採択。さらにEUの立法機関である欧州議会の代表団が11月にも台湾を訪問する方向で調整が進められるなど、「欧州」と「台湾」をキーワードに、中国の警戒感は今後も強まることが予想される。』