[FT]ドイツで習氏関連本の出版イベント中止 中国が圧力

[FT]ドイツで習氏関連本の出版イベント中止 中国が圧力
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『中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席について書かれたドイツの新刊本の出版を記念するイベントが、中国の外交官からの明確な圧力で中止になった。中国に批判的な勢力は反発している。

中国の外交官は習近平国家主席の意向に配慮する(12日、中国で開いた国際会議で演説)=ロイター

この本は独誌シュテルンで中国特派員を長く務めたエイドリアン・ガイゲス氏と、独誌シュピーゲル元編集長のシュテファン・アウスト氏の共著「習近平―世界で最も力のある男」(邦訳未刊)だ。ドイツの2つの大学に設けられた中国政府の教育機関「孔子学院」がそれぞれ出版記念のオンラインイベントを計画していた。

ところが出版したパイパーベルラグは、イベントが「中国側の圧力で急きょ中止された」と発表した。同社によると、イベントのうちの一つはデュースブルク・エッセン大で開催が予定されていたが、中国の馮海陽・駐デュッセルドルフ総領事が介入して中止になった。

パイパーベルラグは、孔子学院の職員の発言を引用する形で「習近平氏を普通の人間として話題にしてはならない。習氏に触れたり話したりすべきではない」と説明した。

これが物議を醸し、孔子学院の役割が改めて注目されている。中国教育省の一部門が運営するこの機関の役割は、中国の言語や文化を海外に普及させることだ。

中国は孔子学院を、自国の言語や文化の学習を推進するとともに、中国と諸外国との「相互理解や友好の深化」を目指して教育・文化の交流の場を提供する手段だと位置付けている。

一方、この機関を中国政府が教育に見せかけたプロパガンダ(政治宣伝)を広め、大学で言論の自由を封じ、学生を監視する手段だという批判もある。

欧州議会議員で、辛辣な中国批判で知られるラインハルト・ビュティコファー氏は、書籍関連イベントの中止という決定を「言語道断だ」と非難した。「(この動きの背後にいるとされる)中国の官僚たちは、私たちが孔子学院を抑制し排除すべき理由を証明したようなものだ」と話す。

ベルリンのシンクタンク、グローバル公共政策研究所のトルステン・ベナー所長は「今回の事態を受け、ドイツの全大学の学長は、学問の自由を掲げる国内の大学やほかの学術機関に孔子学院が存在してはならないとわかったはずだ」と語った。また「孔子学院と提携するドイツの大学は大きな風評被害のリスクにさらされている」とも指摘した。

在ドイツ中国大使館は声明で、孔子学院のイベントは「双方の共同の利益と関心事に役立つものでなければならない。包括的なコミュニケーションに基づいて計画・実施される必要がある」という見解を示した。

声明は、中国が孔子学院を「中国への理解を深め、客観的で包括的な知識を得るためのプラットフォーム」に発展させる考えだと説明した。だが「学術・文化交流の政治化には強く反対する」と続けた。

パイパーベルラグのフェリシタス・フォン・ラブンベルク代表は、出版イベントの中止を「不穏なシグナルだ」と表現した。

著者の一人であるアウスト氏はこの状況が、ガイゲス氏との共著の根底にあるテーマを裏付けると考えている。「独裁政権(中国の習指導部)が経済で米欧を追い抜こうとしているだけでなく、自分たちの価値観を国際社会に押し付ける構えをみせている。私たちの(重視する)自由とは対立する価値観だ」と解説する。

出版記念イベントは、デュースブルク・エッセン大とライプニッツ大ハノーファーにそれぞれある孔子学院で今週、開催される予定だった。パイパーベルラグによると、デュースブルク・エッセン大のイベントは、武漢大と駐デュッセルドルフ中国総領事の明らかな介入で葬られた。

ハノーファーでは、孔子学院を共同運営する上海市の同済大がイベントを中止させたという。

ライプニッツ大ハノーファーは声明で、イベントの中止は「受け入れられず、戸惑いを感じる。理解しがたい」と憤りを表明した。

「ライプニッツ大ハノーファーは、批判的な科学的言説や意見交換を受け入れる国際主義の大学だと自任している」と声明は指摘し、アウスト氏とガイゲス氏を同大学における朗読会に招いていたと明らかにした。

デュースブルク・エッセン大は26日付の声明で、出版イベントについて「計画にも中止にも関与していない」と説明した。同大学のウルリッヒ・ラトケ学長は「この決定はわれわれにとって不可解で、二度とあってはならない」と強調した。

By Guy Chazan

(2021年10月26日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察

この問題は、ドイツでも大変注目を集めました。

著者の一人ガイゲス氏がインタビューに応じて、これまで何度も孔子学院と仕事をしてきたが今回のようなことは初めてで、孔子学院にとっては「死の一撃」(Todesstoss)になると語っていました。

メルケル時代も終わり、中国との関係が転換期に来ていると感じました。

同時に、歴史問題で過度に政府が介入しすぎることは、言論の自由、学問の自由への介入と取られうることを、日本政府もしっかり認識して広報活動を行うべきです。

多少気に入らない見方が出てきても、「我々は学問の自由を重んじます」という態度に徹する方が、長期的には尊敬を得られるのではないでしょうか。』