ECBラガルド総裁「物価、来年に低下」 供給不足は警戒

ECBラガルド総裁「物価、来年に低下」 供給不足は警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR27D8O0X21C21A0000000/

『【ベルリン=石川潤】欧州中央銀行(ECB)は28日開いた理事会で、金融政策の現状維持を決めた。ECBの物価目標(2%)を超えてインフレが加速しているが、ラガルド総裁は「来年中には(上昇率が)低下する」との見方を示した。ただ、供給不足やエネルギー価格の上昇が長引いて景気減速や一段の物価上昇が進むリスクへの警戒も示した。

ECBは主要政策金利をゼロ、中銀預金金利をマイナス0.5%に据え置いた。緊急買い取り制度の総枠(1兆8500億ユーロ=約240兆円)なども変えず、これまで通りのペースで債券などの買い取りを進めていく。ECBは慎重に緩和縮小を進めていく構えで、12月の次回理事会で緊急買い取り制度の存廃を議論する見通しだ。

ユーロ圏の9月の消費者物価上昇率は前年同月比3.4%で、13年ぶりの高水準だった。原油や天然ガスなどのエネルギー価格の高騰に加え、サプライチェーン(供給網)の乱れが物価を押し上げている。供給制約の解消には時間がかかる見込みで、年末に向けて物価がさらに上昇していく可能性が高い。

ラガルド氏は物価上昇が「もともと想定していたよりも長く続く」と語ったが、来年中には和らいでいくとの見方を示した。エネルギー価格の上昇、急激な需要増加に伴う供給不足、ドイツの付加価値減税の反動などといった要因が徐々にはげ落ちていくためだ。

ただ、ラガルド氏は「供給不足とエネルギー価格の上昇が長引けば、景気回復の減速につながりかねない」と指摘。賃上げなどを通して「物価上昇圧力が強まる可能性がある」とも語り、今後の動きを注視していく姿勢を示した。

ECBは今後ゆっくりと緩和縮小を進めていくとみられる。エネルギーと食料を除いたコアの物価上昇率はまだ2%未満で、賃上げも広がりを欠く。2022年には物価上昇率が再び1%台に下がる可能性が高く、一時的な物価上昇に過剰反応すれば、景気の腰折れにつながりかねないためだ。

もとより景気は盤石ではない。国際通貨基金(IMF)の分析では、21年のユーロ圏の需給ギャップは潜在国内総生産(GDP)比でマイナス2.8%と大幅な需要不足のままだ。米国はプラス0.6%と需要超過にあり、ECBの緩和縮小は米連邦準備理事会(FRB)より難路となる。

ラガルド氏は景気について力強く回復しているとしたが「勢いはある程度和らいでいる」と認めた。供給制約の問題でユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI)は10月まで3カ月連続で悪化。ドイツの主要経済研究所は同国の21年の成長率予測を春時点の3.7%から2.4%へ下方修正した。

ECBは12月の次回理事会で「少なくとも22年3月まで」続けるとしてきた緊急買い取り制度の存廃を議論する。廃止を決めるとしても、既存の量的緩和政策の拡充や新たな仕組みなどで影響を最小限に抑える案が浮上している。

FRBは11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和の縮小(テーパリング)開始を決める見通しだ。22年には利上げが始まる可能性がある。

カナダは27日に量的緩和の終了を決定した。利上げは新興国だけでなく、韓国やノルウェー、ニュージーランドなどにも広がっている。米国が緩和縮小に向かうなか、ドル高・自国通貨安が進めばインフレが加速しかねないことも、経済規模が比較的小さい国を利上げに追い立てている。』