ASEAN型意思決定、もろさ露呈 首脳会議閉幕

ASEAN型意思決定、もろさ露呈 首脳会議閉幕
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『【シンガポール=中野貴司】東南アジア諸国連合(ASEAN)は28日までの3日間、首脳会議と関連会議をオンラインで開いた。ミャンマー国軍の欠席と対話の行き詰まりは、内政不干渉を原則とするASEAN型意思決定と統治のもろさを露呈した。大国による翻弄を避けるためにも、ASEANは多国間の共同体としての結束再建が急務になる。

議長国ブルネイのボルキア国王は28日の閉幕後の記者会見で「ASEAN加盟国は国民の意思に沿ってミャンマーが正常に戻ることを望んでいる」と発言した。ASEANの内政不干渉の原則に言及した上で「ミャンマーの人々だけが完全に問題を解決できる」と指摘したほか、「ミャンマーはASEANという家族の重要な一員だ」と強調した。

ASEAN憲章は第2条で加盟国の内政への不干渉を、第20条で総意に基づく意思決定を基本原則に掲げる。経済規模や文化、宗教が多様な10カ国の結束を維持するための知恵で平時には機能したが、2月にミャンマーで国軍のクーデターが起きると2つの原則は、対応を遅らせる足かせになった。

ミャンマー問題への関与を巡り、同国を除く加盟9カ国の間で意見が分かれ、仲介役の特使の決定が遅れた。ミャンマー国軍は内政不干渉を盾にASEANとの5つの合意事項の履行を渋った。

民主主義や人権尊重がないがしろにされた現状に危機感を強めたASEANは首脳会議に国軍トップを呼ばない異例の決定を下したが、それが国軍の反発を呼び、民主派との対話仲介は遠のいた。ミャンマーの欠席に至る混乱はASEANの統治能力への不信と加盟国間の亀裂を生んだ。米欧の制裁路線も十分な効力をあげていない。

ASEAN議長国は現在のブルネイから2022年にはカンボジアに引き継がれる。カンボジアは中国と親密で、前回に議長国だった12年には南シナ海問題を巡る外相会議の共同声明をまとめられなかった。南洋工科大(シンガポール)のバリー・デスカー教授は「カンボジアはミャンマー国軍により同情的になり、加盟国間のもろい総意をさらに弱体化させるだろう」と懸念する。

新型コロナウイルスの感染拡大が起きる前、ASEANは30年までに米中、欧州連合(EU)に次ぐ世界第4位の経済圏になるとの予測もあった。「アジア最後のフロンティア」といわれたミャンマーの経済・投資環境がクーデターによって大きく悪化し、コロナ下での国境を越える域内移動の再開もEUなどに比べ遅れている。

シンガポール国際問題研究所のサイモン・テイ会長は「ASEANはその潜在力を実現できるかどうかの転機にある」と話す。ASEAN各国が共同体としての強みを生かせなければ、ミャンマー問題をはじめとする地域の課題に対処できないだけでなく、ポストコロナの世界で存在感の発揮が難しくなりかねない。』