公取委がIT業界の暗部にメス

公取委がIT業界の暗部にメス、ユーザー企業に「見ぬふり」は許されない
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00849/00064/

 ※ 「7次下請け」とか、現実にあるのか…。

 ※ 『ユーザー企業が人月単価120万~150万円で発注したものが、末端では単価40万円台というひどいケースも、不況期には見受けられた。』7割~7.5割のピンハネか…。
 ※ まあ、「7次下請け」ともなれば、間に入った企業が、「1割づつ、利を乗せて」いけば、最後はそういう計算になるわけだ…。

 ※ そういうものが、「IT業界」の実態か…。

『公正取引委員会が2021年10月に、システム開発などを担う下請けITベンダー2万1000社に対する取引実態調査に乗り出した。良い機会なので、ユーザー企業がシステム開発を外注する際の問題点を、ESG(環境・社会・企業統治)の観点で考えてみたい。ただし「環境」ではない。「S」つまり「社会」の観点からである。

 日本ではユーザー企業が基幹系など大規模システムを開発する際、システムインテグレーター(SIer)に発注する場合が多い。基本的に請負契約であるため、開発の実務はSIerに任せ、発注側はベンダーマネジメントと呼ばれる進捗などの管理業務に徹することになる。いわゆる「丸投げ」である。

 丸投げされたSIerは、パートナー企業と呼ぶ下請けITベンダーに、システム開発の一部、場合によっては全てを再委託する。下請けITベンダーはさらに複数のITベンダーに委託し、委託されたベンダーも…といった具合に再委託を繰り返す。これが悪名高きIT業界の多重下請け構造である。

 大規模開発ならば、多重下請けの末端が6次請け、7次請けといったことも珍しいことではない。「ピンハネ」も横行する。ユーザー企業が人月単価120万~150万円で発注したものが、末端では単価40万円台というひどいケースも、不況期には見受けられた。

 しかも3次請け、4次請けなどでは、請負契約や準委任契約の一種であるSES(システム・エンジニアリング・サービス)契約であっても、実態的には労働者派遣と変わらないケースが多々ある。いわゆる「偽装請負」だ。納期を絶対視することから、極端な長時間労働が常態化することもある。

 多重下請けの実態は、IT業界の関係者の間では半ば「常識」だ。だが、ユーザー企業は自社のシステム開発プロジェクトにおける実態を知るよしもなかった。というか、SIerに請負契約で任せきりにしている以上、知る必要はなかったのだ。SIerも我関せずだ。自らが直接関与しない3次請けより先の取引実態などについては、SIerがあずかり知らぬことでよかったからだ。 』

『 開発の丸投げ、もう1つの問題

 今回、公取委が実施するのは「ソフトウェア制作業・受託システム開発業の取引適正化に関する実態調査」。2021年10月22日に該当するITベンダーなどにアンケートへの協力依頼状を発送している。公取委は調査にあたって「多重下請構造の下で買いたたきや仕様変更への無償対応要求など、下請法上の問題が懸念される」などと問題意識を表明している。

 このように公取委の調査は主に下請法上の問題の有無を探るもので、IT業界の多重下請け構造が生み出す様々な問題を全て網羅するわけではない。調査対象となる下請けITベンダーは、多重下請け構造の下では、自らが発注者になるケースも多いため、正直な回答が得られるのか疑問もある。ただ、ユーザー企業やSIerが見ぬふりを決め込んできたIT業界の「暗部」が少しでも明らかになるなら、その意義は決して小さくはない。

 なぜならユーザー企業などは、ESGの観点からもはや「暗部」を無視するわけにはいかないからである。ESGは良き会社かどうかのバロメーターであり、企業が存続・成長するためには環境保護だけでなく、社会問題にもきちんと向き合うことが求められている。社会問題は何も強制労働や児童労働といった世界的な大問題だけではない。当然、システム開発における多重下請けの実態についても目配りし、問題を根絶することが求められるはずだ。

 それにシステム開発を丸投げし、我関せずのままでは、ESGのもう1つの観点、「G」つまり「企業統治」上も問題があるのは言うまでもない。

木村 岳史(きむら・たけし)
編集委員。1989年日経BP入社。日経ネットビジネス副編集長を経て2010年に日経コンピュータ編集長。13年1月より現職。日経コンピュータと日経クロステックにIT業界やIT部門の問題点を斬る辛口論評を執筆中。 』