[FT]保守派の大富豪ボレロ氏、仏メディア支配を拡大

『19日、フランスの日曜紙「ジュルナル・デュ・ディマンシュ」(JDD)の編集長エルベ・ガテーニョ氏の追放が突然発表されると、ニュースルームに集まった記者の間には沈痛な空気が流れた。

2018年、ビベンディの株主総会に出席したバンサン・ボレロ氏=ロイター

記者の多くが恐れていたのは、仏メディア大手ビベンディを率いる保守派の大富豪バンサン・ボレロ氏が、早くもJDDを手中に収めようとしているのではないかということだった。ビベンディはすでにJDDの親会社ラガルデールの筆頭株主だが、ボレロ氏は完全子会社化に向け同社の株の買い増しを急いでいる。

記者たちの懸念には理由がある。アフリカでの物流や輸送、そして巧妙な企業買収で巨額の富を築いたボレロ氏は、買収したメディアの社員や記事のスタイル、内容を一新してきた経緯があるからだ。考えをよく知る人々によると、ブルターニュ地方の伝統的なカトリックの家庭に生まれた同氏は、フランスのメディアがあまりにも左翼的であるとして、対抗するメディアを作ろうとしているという。

ビベンディでは、ボレロ氏は傘下の有料テレビ、カナル・プリュスの辛辣な風刺番組をおとなしくさせ、最高経営責任者(CEO)をクビにした。ネットチャネルのI-TELEでは記者たちが1ヶ月に及ぶストライキを起こしたのに乗じて報道部門の3分の1を削減。その後、I-TELEは保守的な論調で知られる米ニュース専門局FOXニュースをまねたニュース・オピニオンチャネルCNewsに生まれ変わった。

ラガルデール傘下のラジオ局ヨーロッパ1では、今夏にかけ様々な変更が発表されるとストライキや記者の大量離職が発生した。するとビベンディはラガルデールの筆頭株主としてCNews の人気キャスターを、かつては主流とされていた同局に送り込み、番組のベテラン司会者数人と置き換えた。ボレロ氏はまた、局の電波を通じてCNews を直接週末の朝放送するように命じた。

「ヨーロッパ1と同じビルにいるので、そこで起こったことはみんな知っている」とJDDの記者が報復の恐れから匿名を条件に話してくれた。「JDDの編集方針が変わってしまうのではないかと皆とても心配している。ボレロの支配下に入った他のメディアは皆そうなったからだ」

2022年4月に大統領選挙を控えたフランスでは、ラガルデールがどう変わるのかに関心が集まっている。

世論形成に影響力

写真週刊誌パリ・マッチやJDD、ヨーロッパ1などを持つラガルデールのメディア部門は産業界や政治家のエリート層が注視していることから、世論形成に大きな影響力を持つと見られているからだ。

マクロン大統領は、17年の大統領選を目指して長期間選挙活動をしていた当時、パリ・マッチの表紙を8回飾った。現閣僚も日曜日になるとJDDの表紙に登場し、その週の政治活動を主導することが恒例になっている。

「フランスではJDDが政治的影響力を及ぼすための最強部類のツールとなっている。選挙を前にして同社に大きな変化が起きているのは偶然ではない」と、JDDのある元社員は話す。

JDDの発行部数は約15万部だが、部数をはるかに超える影響力がある。パリ・マッチの発行部数は毎週55万部に上る。

ボレロ氏がメディア業界での影響力を増すと経済や環境問題のような問題よりも文化やフランスのアイデンティティーに焦点が当たることになり、次の選挙の行方が左右される可能性がある、と専門家は言う。CNewsはすでに人気キャスターの1人で、極右の論客であるエリック・ゼムール氏を政治の世界に送り込んだ。

ビベンディのパリ本社=ロイター

移民排斥を主張し、「フランスの衰退」を懸念するゼムール氏は、政界ではほぼ無名の存在だったが、夏以降の世論調査ではマクロン氏に次ぐ有力大統領候補として浮上している。大統領選の常連で極右政党「国民連合」の党首マリーヌ・ルペン氏は第3位に追いやられた。

ボレロ氏はサルコジ元大統領と親交があり、長く中道右派を支持してきた。同氏に近い人々によると、表立ってゼムール氏を支持しているわけではないが、犯罪問題など主張の多くに賛同しているという。

「ボレロ氏は、急進的右派が意見を表明できる場所を少しずつ拡大してきたため、今では極右の人々が主流のメディアにアクセスできるようになった」とパリにあるケッジ・ビジネススクールの政治学教授ビルジニー・マルタン氏は言う。「以前はそのような機会が全く無かったため、ルペン党首や父親のジャン・マリー・ルペン氏などの極右政治家はガラスの天井に阻まれていた」

規制当局がビベンディによるラガルデールの買収提案を承認すれば、ボレロ氏はフランス最大の有料テレビ、カナル・プリュス、書籍出版で最大手のアシェット、広く視聴されている24時間ニュースチャネルCNews、ラジオ局ヨーロッパ1、JDD、パリ・マッチ、その他12の雑誌を実質的に支配することになる。

フランスのメディア所有権が、ボレロ氏ばかりでなく資金豊富な企業グループに集中することに、学者や歴史家は懸念を表明している。民放最大手のTF1を所有するブイグ家は、規模では小さいライバルM6の買収で当局の承認を求めている。通信業界の大物パトリック・ドライ氏やグザビエ・ニエール氏、高級ブランド世界最大手のLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのトップ、ベルナール・アルノー氏も主要な放送局を所有する。

メディアの歴史に詳しいクリスチャン・デルポルト氏は、「ボレロ氏は新聞に投資した最初の金持ちではないが、所有するメディアの編集方針への介入という点では際立っている」と指摘する。「その背後には政治的な意図がある」

JDDとパリ・マッチ両方の編集長だったガテーニョ氏の退任は、公にはラガルデールのCEOアルノー・ラガルデール氏とニュース部門の責任者コンスタンス・ベンケ氏が決めたとされている。だが、グループの複数の関係者によるとボレロ氏の意向が働いたという。

ビベンディとラガルデールはコメントを控えた。

ガテーニョ氏の後任のトップとして、パリ・マッチではパトリック・マヘ氏、JDDではジェローム・ベレー氏がジェネラル・マネジャーに任命された。また、副編集長だった2名が編集長に昇格した。

ガテーニョ氏を知る人によると、同氏は時には論争を巻き起こすものの優秀な編集者であり、サルコジ元大統領の法廷闘争では元大統領を擁護し、フランスで極右が常態化することに強硬に反対していたという。

退任理由については公表されていない。だが、社説でゼムール氏を「厄災の予言者」と批判したことや、63歳で3人の子供の父親であるゼムール氏と選挙運動の顧問を務める28歳のサラ・ナフォさんが抱き合う写真をパリ・マッチの表紙に掲載した一件が要因となったのではないかという推測もある。

同社のある幹部は「彼をクビにしたいと思っていたボレロ氏がそれを実行したということだ」とコメントした。

By Leila Abboud

(2021年10月23日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)』

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https://ameblo.jp/cracking-my-balls/entry-10795834414.html

※ どうも、日付が入って無いんで、いつの記事か判然としない…。

※ .htmlのソースを表示させて調べると、2011年の記事のようだ…。

※ 約10年前だな…。

※ 現在は、68歳ということになる…。

※ それで、3年前だと、一番上の写真のような感じとなるわけだ…。