安保技術提供、留学生は許可制に 大学からの流出懸念

安保技術提供、留学生は許可制に 大学からの流出懸念
【イブニングスクープ】(10月26日の夕刊版)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25CVB0V21C21A0000000/

『政府は日本の大学に長期留学する外国人について、安全保障にかかわる機微技術の提供を許可制にする。留学生の受け入れ時に安保上の懸念がないかを事前確認するように国が求めているにもかかわらず、実施していない大学が約4割ある。中国を念頭に留学生を通じて重要技術が国外に流出するのを防ぎ、経済安全保障を強化する。

経済産業省が年内に外為法の運用に関する通達を改正し、2022年度に施行する。日本に半年以上滞在する留学生に大学が重要技術を伝える場合、大学は経産相の許可を得る必要が生じる。

滞在半年未満の留学生は今も許可制で、長期滞在の留学生であっても年間所得の25%以上を外国政府から得るなど「外国の影響下にある」場合が新たに対象となる。

対象とする重要技術は汎用機器や部品の軍事転用を防ぐ国際枠組みに基づいて決める。半導体製造装置やロボットなど幅広い技術が含まれる。

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経産省は外為法に基づく指針で、大学が留学生や外国人研究者を受け入れるときに安保上の懸念がないか事前審査を求めている。留学生をはじめに受け入れる段階で外国政府からの資金支援などの実態を把握できなければ、誰が規制対象の留学生か特定できない。

政府は22年度から研究者の情報開示の指針を見直し、海外を含む外部機関から支援を得る場合は所属機関へ報告を求める。研究者が平時から所属する大学や企業に申告するよう促す。

大学側の対応は鈍い。文部科学省と経産省が4月、全国の国立大と、理系や情報系の学部を持つ公立・私立大の計320校を調べたところ、受け入れ時の事前審査を内部規定に盛り込んでいる大学は62.5%だった。国立が97.7%で、公立は59.0%、私立は47.7%にとどまった。

17年には東京都内の大学の技術系学部に所属する中国人留学生が航空機搭載用の赤外線カメラなどを香港経由で中国に輸出し、外為法違反で有罪となる事件が起きた。人工知能(AI)や量子暗号など最先端技術は軍民両用の性質をもつ。流出した技術が軍事転用されるおそれがある。

こうした分野の研究開発に取り組む日本の大学には中国などからの留学生が少なくない。東大先端科学技術研究センターの国分俊史特任教授は「機微技術の流出は日常的に発生しているとみられる」と指摘する。

民生技術は発展が速く、国際的な枠組みに基づいて規制対象を決める現行のやり方では追いつかない。大学はどの技術を留学生に伝える際に許可が必要か判断できない。国分氏は「規制対象とする技術を明確にする必要がある」と話す。

米国では18年成立の国防権限法で、AIや量子技術など14分野の技術を独自に指定。輸出規制を強化する方針だ。

日本の大学の研究はアジア留学生への依存を深めている。規制によっては研究に響く懸念もある。経済安保に詳しいバウワーグループアジア日本代表の油木清明氏は「国際的な水準に追いつくために必要な取り組みだ。大学の研究とバランスをとった議論が必要で、合理的な範囲内での規制になるだろう」と話す。

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