中国、TPP加盟へ攻勢 ベトナム・マレーシアに秋波

中国、TPP加盟へ攻勢 ベトナム・マレーシアに秋波
ASEAN首脳会議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM26B3O0W1A021C2000000/

『【北京=羽田野主、ワシントン=鳳山太成】中国が環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟に向け東南アジア諸国連合(ASEAN)を切り崩している。新型コロナウイルスのワクチン供与や中国市場の開放をちらつかせ、中国のTPP参加に前向きな雰囲気をつくろうと躍起だ。米国も対抗してASEANへの関与を強めている。

「(中国とASEANの)経済の融合を深め、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定をなるべく早く発効させよう」。26日の中国・ASEANのオンライン首脳協議で、李克強(リー・クォーチャン)首相は呼びかけた。気候変動対応、科学技術やイノベーションなどでの協力も提案した。中国国営新華社が伝えた。

李氏の「経済の融合」との発言はTPPも視野に経済の相互関係を深めるとの思惑がにじむ。ASEAN10カ国のうちTPPに加盟するのはベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイの4カ国。中国にとって働きかけが欠かせない。

ベトナムとは南シナ海を巡って利害が対立する。李氏は「南シナ海の平和は中国とASEAN加盟国の共通の利益だ。双方が南シナ海での実務的な協力を実現し(紛争防止に向けた)行動規範で早期に合意することを希望する」と低姿勢だった。

9月にTPPに加盟申請してからの中国の動きは素早かった。習近平(シー・ジンピン)国家主席がベトナムの最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長やシンガポールのリー・シェンロン首相と電話協議。両国から中国の申請に前向きな反応を得た。

働きかけの「武器」となるのがワクチンだ。9月末には王毅(ワン・イー)国務委員兼外相がマレーシアのサイフディン外相と電話し、100万回分のワクチンを寄付すると表明。中国がマレーシアに提供したワクチンは寄付分だけで少なくとも合計150万回分になる。李氏も26日の会議で、中国とASEANの新型コロナの協力を提案した。

中国が4カ国に秋波を送るのは、国有企業が多いという共通点も理由とみられる。北京の大学教授は「TPP加盟は10年単位の時間がかかる。いまは仲間づくりが大事。国有企業が多いベトナムやマレーシアと協議して準備しておく」と明かす。

TPPは国有企業などで厳しいルールをもうけたが、国有企業が主体のベトナムには例外規定を認めた。中国が参考にしている可能性がある。

東南アジアで大使を務めた中国の元外交官は「(国有企業など)解決が非常に困難な問題は例外化を考えるべきだ。中国市場は他国には魅力的だ。相手に利益を示し、交渉を有利に進めることが大事」と主張する。

中国とASEANの貿易額は新型コロナにもかかわらず増え続ける。2020年の中国の対ASEAN輸入額は3013億ドル(約34兆円)と10年前の約2倍に膨らんだ。4カ国にとっても、中国のTPP参加による大幅な関税下げは経済効果が大きい。

中国の攻勢を目の当たりにし、バイデン米政権もトランプ前政権よりはASEAN関与に前向きだ。バイデン米大統領は26日、米ASEAN首脳会議にオンラインで出席した。米大統領の出席は4年ぶり。欠席を続けてきたトランプ前大統領から一転し、東南アジアを重視する姿勢を訴えた。

バイデン氏は新型コロナや気候変動対策などで、ASEANへ計1億200万ドル(約116億円)の支援策を発表した。米国の存在感を高めて中国に対抗する狙いだ。

もっともバイデン氏はTPPへの復帰には慎重だ。支持基盤である労働組合などが雇用流出を懸念して反対するためだ。東南ア諸国と経済関係を深めて、求心力を回復する道筋は描けていないのが実情だ。』