【地球コラム】バイデン米政権、早くも正念場

【地球コラム】バイデン米政権、早くも正念場
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021101800569&g=int

『◇「信任」中間選挙まで1年

 今年1月に発足したバイデン米民主党政権への「信任投票」に事実上相当する中間選挙が1年後に迫った。中間選挙は4年ごとの大統領選の中間の年に実施され、下院の全議席(定数435)と上院(定数100)の3分の1の議席が改選される重要選挙。両院で野党側が議席を増やして多数を占めると、大統領選までのその後の2年間の政策遂行に支障を来す公算が大きく、現大統領の再選に「黄信号」がともる。たとえバイデン氏が高齢を理由に2期目は目指さないとしても、民主党政権への逆風が残る可能性も否定できない。
 アフガニスタンからの駐留米軍の完全撤収(出口戦略)をめぐる不手際など、ここに来て外交面で「失策」が目立つバイデン政権。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が依然終息しない中、米経済の動向もインフレ率の高止まりや中国経済の先行き懸念などで不透明感が強まっており、バイデン大統領は早くも政権運営で正念場を迎えている。(時事通信社外信部長 齋藤淳)

◇アフガン出口戦略の失敗

 「(アフガン出口戦略は)完全なる大失敗だ。米指導者最大の失策の一つとして歴史に残るだろう」。下院軍事委員会のアフガン問題に関する公聴会で、ロジャース議員(共和)はバイデン大統領を痛烈に批判した。米国が巨額資金を投じて支援してきたアフガン民主政権と政府軍が予想外にあっけなく崩壊したとはいえ、首都カブールの空港に大勢の人々がなだれ込んだ騒乱や米兵13人を含む約180人が犠牲となった過激派組織によるテロ攻撃発生などは出口戦略の詰めの甘さを露呈した。また、米軍無人機によるアフガン民間人誤爆事件も汚点を残す形となった。

 トランプ前政権の「米国第一主義」から「同盟国重視」の姿勢に転換し、とりわけ外交面では順調な滑り出しを切ったと見られていたバイデン政権。しかし、今や欧州連合(EU)との間にすきま風さえ吹きかねない状況にある。バイデン政権に代わってからも、自国の利益最優先の姿勢が見え隠れしているからだ。

 アフガン駐留米軍の完全撤収に伴う混乱を目の当たりにしたEUは、米軍に依存し過ぎないようにするため安全保障・防衛面の自立性を高める方策の検討を開始。また、米英がオーストラリアと新設する安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」の下で豪州の原子力潜水艦建造に協力すると表明し、結果的に豪州がドイツと並ぶEU中核国フランスとの潜水艦開発計画を破棄したことから、EUは米国に対して不信感を強めている。

◇中間選挙は政権側に不利

 大統領選前にセールスポイントとしてアピールしていた外交手腕で得点を稼ぐどころか、むしろ失点を重ねているだけに、バイデン政権は来年秋の中間選挙を控えて厳しい選挙戦を強いられそうだ。もともと「中間選挙は歴史的に見て、政権(与党)側に不利に働く」(米コラムニスト)というジンクスがある。米誌USニューズ・アンド・ワールド・リポートによると、第2次大戦以来、中間選挙は19回行われたが、うち17回は与党が下院で議席を減らした。しかも、議席減の平均は27議席で、これは野党・共和党が来年秋の中間選挙で過半数を獲得するのに必要な議席をはるかに上回る数字だという。

 バイデン政権にとって不利に働く条件はそればかりではない。実は歴史的なめぐり合わせも良くないのだ。下院は小選挙区制で、各州への議席割り当ては10年ごとに実施の国勢調査結果に基づいて決まるが、昨年実施の調査結果(人口統計)に基づいた議席割り当ては共和党に有利に働くとみられている。

 議席割り当ての変更により、民主党が強固な地盤を持つカリフォルニア、イリノイ、ニューヨークの3州でそれぞれ1議席、共和党が強固な地盤を持つオハイオ、ウェストバージニアの2州でそれぞれ1議席失う。また、昨年の大統領選でトランプ氏が勝利したフロリダ、モンタナ、ノースカロライナ、テキサスの4州でそれぞれ1議席ないし2議席増える一方、バイデン氏が僅差で勝利したミシガン、ペンシルベニアの州でそれぞれ1議席失う。ただし、民主党が勝利する傾向のコロラド、オレゴンの2州ではそれぞれ1議席増える。

◇米景気動向にも不透明感

 第2次大戦後、中間選挙で議席を増やせたのはクリントン政権(民主)時の1998年とブッシュ(子)政権(共和)時の2002年の2回のみ。ただし、過去のジンクスも別の角度から見れば、バイデン政権に有利に働く要因がないというわけではない。1998年はクリントン大統領のセックススキャンダルへの攻撃にこだわり過ぎた野党側に不利に働いた。2002年はその前年9月11日の衝撃的な米同時テロ事件により与党側に追い風が吹いた。つまり、与党が議席を増やせた過去2回の中間選挙は、いずれも極めて特殊な事案・事件が投票結果に作用したのだ。

 来年秋の中間選挙も与党側が議席を増やした過去2回の理由に匹敵する極めて特殊な事案が存在していると指摘する声もある。その事案とは新型コロナの大流行とそれに伴う実体経済への深刻なダメージだ。つまり、バイデン政権がこうした事案を逆手に取る形でコロナ禍を事実上克服し、いったんは大幅マイナス成長に落ち込んで傷ついた米経済を大型景気対策などで本格的な回復軌道に乗せることができれば、逆に政権・民主党側に有利に働くというわけだ。

 しかし、その頼みの綱である米経済も今や不透明感が増すばかりで、インフレ率の高止まりは景気回復の腰折れを招きかねない。また、中国経済の先行きが不動産開発大手・中国恒大集団の経営危機などで一段と強まっており、仮に中国景気が急速に冷え込むようであれば、中国との結び付きが依然強い米金融・経済にも想定以上の打撃が及ぶ恐れも否定できない。

◇中間選挙後はレームダック化も

 野党・共和党にも弱点はある。共和党内はトランプ支持派とトランプ反対派に割れるなど、なお足並みが乱れているからだ。しかし、中間選挙は現政権への信任投票の意味合いが強く、野党側の選挙戦略が奏功するかどうかというよりも現政権が繰り出すあらゆる政策が成果を挙げるかどうかに大きく左右されると言っても過言ではない。

 対中政策で弱腰という印象を持たれずに通商摩擦を大幅緩和するなど、外交面でこれまでの失点を帳消しにしても余りあるほどの高得点を稼いだり、あるいは雇用環境も含めて景気動向を大きく好転させたりすることができれば、中間選挙に臨むに当たり優位に立てそうだが、そうでなければバイデン政権は厳しい環境下に置かれたまま選挙戦に突入することになる。バイデン政権としてはワクチン接種の義務化などで力強い景気回復の持続を図りたいところだが、共和党の一部州知事は義務化禁止で徹底抗戦の構えを見せている。
 仮に両院で共和党が多数を占めるようであれば、バイデン政権は早くもレームダック化する可能性が高い。その後、バイデン氏が高齢を理由に大統領選前に「禅譲」の形で副大統領ハリス氏に政権を託すとしても、民主党そのものが逆風にさらされる恐れがあり、その場合は共和党政権への揺り戻しが現実味を帯びることになる。 』