7割強で5野党一本化 衆院選の構図を読む

『140選挙区で「与野党対決」

衆院選が19日に公示された。全289の小選挙区をみると、野党が候補者を絞って与党に挑む選挙区が多い。野党第1党の立憲民主党など5党が全小選挙区の7割強で候補者を一本化した。全選挙区の半分ほどの140選挙区で与党と野党の一騎打ちに近い「与野党対決」型となった。

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立候補者を与党と5野党、日本維新の会、その他の4勢力にわけて分析した。

与党候補には自民、公明両党の公認のほか①衆院解散時に自民会派に所属②自民が推薦――のいずれかを満たす人を加えた。

5野党の候補は立民、共産、国民民主、れいわ新選組、社民の各党の公認に①解散時に各党の会派に所属②5党の候補が不在の選挙区で立民などが支援・推薦③連合が推薦――という条件を1つでも満たす人を含めた。

立民は9月、市民団体を介して共産、社民、れいわの3党と政策協定を結んだ。協定に参加しなかった国民とも連合を通じて政策を確認し、小選挙区の候補者の重なりを解消する調整を進めてきた。

衆院選の小選挙区は最多得票の1人が当選者となる。5野党の候補者が乱立して政権批判票が分散すれば、結果として与党の自民、公明の候補に有利に働く。こうした状況を防ごうと5党は腐心した。

前回の2017年衆院選は最大野党だった民進党の勢力が選挙直前に分裂した。旧立憲民主党や旧希望の党などの野党候補が乱立し、与党の自民、公明は再び3分の2の勢力を維持する勝利を収めた。

かつては共産が衆院選でほぼ全ての小選挙区に候補者を立てる例があった。今回の共産の小選挙区の立候補者数は105人で、前回17年の206人からほぼ半分に減り、現行制度下で過去最少となった。

共産票が立民などほかの野党候補の基礎票となれば、過去に接戦を繰り広げてきた選挙区の勝敗に大きく影響する。与党側は警戒を強める。

5党が一本化に成功した選挙区のなかには与党のほかに日本維新の会が候補者を出した選挙区もある。維新は野党5党の候補者の一本化と一線を画す。自民、公明の連立政権の政策に「是々非々」の立ち位置をとる。

与党、野党5党、維新の3勢力の候補者が争う「三つどもえ」の選挙区は69あった。特定の支持政党を持たない無党派層の票が各候補に分散する可能性があり、勝敗の行方が読みにくくなる。

野党間で一本化できず、与党の候補に複数の5党候補が並び立つ「5野党競合」型は76選挙区ある。このうち23選挙区には維新の候補者もいる。野党候補が乱立するほど与党批判票が分散する。

与党側が候補者を立てられなかったり、一本化できなかった選挙区も4つある。静岡5区は旧民主党で閣僚を務めた前職が自民入りをめざして無所属で出馬し、自民公認の前職と保守分裂になった。立民の候補らも届け出た。
与党、3選挙区で公認不在 自民の5%、公明推薦なし

与党はほとんどの選挙区で自民、公明両党が協力する選挙戦になる。自公は1999年に連立政権の樹立で合意し、2009~12年の野党転落時も選挙協力の枠組みを維持してきた。

今回の衆院選で自民は277選挙区、公明は9選挙区に公認候補を擁立した。3選挙区は与党の公認候補がいない。17年も自民が候補を一本化できず候補を公認しなかった選挙区があったが、今回は不祥事による離党が相次いだのが背景にある。

新型コロナウイルスの緊急事態宣言下に衆院議員3人が銀座のクラブを訪れて批判を浴び、自民の3人が離党した。うち2人は神奈川1区と奈良3区から無所属で出馬した。この2つの選挙区で自民は公認候補の擁立を見送った。

東京15区も自民公認の候補が不在だ。カジノを巡る汚職事件で前職が自民を離党した。自民は17年衆院選で旧希望の党からでて比例代表で復活当選した前職と、当選1回の元職の2人に推薦を出した。立民の元職と維新の新人も交えた乱戦になった。

宣言下で銀座のクラブを訪れた問題を巡っては公明でも1人が衆院議員を辞職した。その選挙区には自民が市議を急きょ擁立した。

公選法違反で実刑判決を受けた河井克行元衆院議員の選挙区は逆に公明が候補者を立てた。選挙前のわずか1年の間に自公が選挙区で候補を入れ替えるのは珍しい。

自民は公明が小選挙区で公認した9人の候補全員に推薦を出した。17年の衆院選も9選挙区全てで推薦した。

公明は自民の小選挙区候補277人のうち261人に推薦を出した。一方で全体の5%にあたる16人への推薦は見送った。前回衆院選で推薦を出さなかったのもほぼ同水準の4%だった。
衆院選、戦後初「4年以上なし」 解散から17日の最短決戦

今回の衆院選は現行憲法下で初めて衆院議員の任期満了日後に投開票を迎える。10月21日の任期満了を10日超えた期日を設定した。

現行憲法下で任期満了まで残り半年を切ってから衆院を解散したのは過去に1952年、90年、2000年、09年の4例がある。今回の解散は21日の任期が終わる1週間前の14日で、満了日に最も近づいた。

今回に次いで遅いタイミングの解散だったのは09年だ。当時の麻生太郎首相が任期まで2カ月を切った1410日目で解散した。自民党が大敗し、民主党などによる連立政権が発足した。

岸田文雄首相は10月4日の就任からわずか10日後の解散に踏み切った。首相就任から投開票日までの期間は戦後で最も短くなった。鳩山一郎氏の1954年12月の首相就任から79日後という記録を更新した。

首相は「思い切って新型コロナウイルス対策、経済対策をできないか。そういった思いから日程を決めた」と語った。

衆院解散から投開票までわずか17日という期間も最も短い。中曽根康弘首相が解散日程を定めた83年の20日間を抜いた。小選挙区比例代表並立制になった96年以降で最短は23日で、2014年などの例がある。

現行憲法下で唯一の任期満了に伴う1976年の衆院選は任期が終わる直前の日曜日だった。2017年の衆院選で選ばれた議員の在職日数はこのときに次いで戦後2番目となった。

衆院選が10月に実施されるのは前回17年に続いて5回目となる。これまでに10月に衆院選を実施したのは1952年、79年、96年、2017年だった。戦後の衆院選の実施月をみると12月の6回が最も多く、10月は2番目だ。4月と11月が3回で続く。

年の終盤に集中するのは政治日程が絡む。当初予算案の審議などがある通常国会より、秋の臨時国会で局面打開や政治基盤固めを狙って解散に踏み切るケースが目立つ。

前回の17年衆院選は直前にあった夏の東京都議選で小池百合子都知事が率いる地域政党が躍進した。野党の選挙準備が整う前に当時の安倍晋三首相が解散をしかけた。

最大野党の民進党が分裂し、与党の自民、公明が12年、14年に続いて3連続で憲法改正発議などに必要な議席の3分の2超を得た。安倍氏は自民総裁として大型国政選の連勝を5に伸ばした。
候補者数、現行制度で最少 競争率は2.3倍

今回の衆院選の立候補者は1051人で、現行の小選挙区比例代表並立制になった1996年以降で最も少なくなった。このうち小選挙区には857人が出馬した。全体の競争率は2.3倍で、過去最低を記録した。

小選挙区の立候補者数は前回2017年には936人だった。800人台となるのは1996年以降で初めてのことだ。比例代表のみに立候補した候補は194人だった。

野党間の選挙区調整が進み、共産党が小選挙区の候補者を絞り込んだことなどが要因に挙げられる。選挙日程が想定より1~2週間早まり、準備が整わなかった例もあったとみられる。

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衆院選2021 立候補者一覧 https://vdata.nikkei.com/election/2021/shuin/kaihyo/ 』