米英豪の原潜協力、NPTに打撃 イラン核開発に口実も

米英豪の原潜協力、NPTに打撃 イラン核開発に口実も
ドバイ支局長 岐部秀光、欧州総局編集委員 赤川省吾
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB04CK50U1A001C2000000/

 ※ 「専門家の警告」というのも、「思考停止語」の一つじゃね?

 ※ 『同盟国の理解を得ない拙速な動きは大混乱を引き起こす。ちぐはぐな外交は結局、中国やロシアなどの強権国家を利するばかりだ。』…。

 ※ それで、結局、「どーしろと?」…。

 ※ 「核拡散防止条約(NPT)体制」なんてのは、その程度の、最初から「限界」ありまくりのものだった…、というだけの話しだろ…。

『米国、英国、オーストラリアの3カ国が「AUKUS(オーカス)」と呼ぶ安全保障の枠組みを創設した。海洋進出を加速する中国に対する包囲網を強めるねらいだ。目玉は豪海軍への原子力潜水艦技術の供与だ。しかし、そこには重大な落とし穴が潜んでいる。
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原子力エネルギーを推進力につかう原潜は静音性や潜水の持続力、広い活動範囲が特長で、レーダーによる捕捉がきわめてむずかしい。空母に匹敵する抑止力の切り札で、中国に対抗するうえでは歓迎すべき話のようにみえる。

だが、この合意は核拡散防止条約(NPT)体制の重大な抜け穴をあらわにした。核兵器の技術が世界に広がるリスクを高めたと、あいつぎ専門家が警告を発した。
潜水艦用は国際管理から除外可能

艦艇の動力などとして使う「海軍原子炉」の技術は実は国際原子力機関(IAEA)保障措置の適用外だ。非核保有国も潜水艦向けの原子炉に用いる核分裂性物質を国際管理の対象から除外できる。原潜につかう燃料となる濃縮ウランはIAEA査察の対象外となるのだ。

抜け穴の存在は多くの専門家が認識していたが、海軍原子炉の技術を他国に譲り渡さないのは暗黙の合意でもあった。米国のローズ・ゴッテモラー元国務次官(元北大西洋条約機構=NATO=事務次長)は「高濃縮ウランを燃料とする原潜技術の共有は、過去60年の米の政策を吹き飛ばす」と懸念を示した。

米国は1980年代、英仏が原潜をカナダに売却しようとした際、不拡散体制を守るためとしてこれを断固阻止する側に立った。今回はみずからが進んでこの抜け穴を使ったことになる。

米国のトランプ前大統領はイラン核合意から2018年に一方的に離脱し、多国間主義や法の支配を揺さぶった。一方、バイデン大統領はルール重視をかかげながら「規範(ノーム)に反する動き」によって不拡散体制を揺さぶったと、ロンドン大学のポール・ドーフマン氏は指摘する。
イランが「監視外」主張の恐れ

9月下旬、イランのガリブアバディIAEA大使(当時)は「平和利用のため60%のウラン濃縮をしようとしているイランをしかりつける国が豪州に90%以上の濃縮度の燃料をつかう原子力潜水艦を売ろうとしている」と、米英の「二重基準と偽善」を批判した。
イランでは対米強硬派のライシ師が大統領になった(6月21日、大統領選後のテヘランでの記者会見)=ロイター

米英が持つ原潜は、核兵器級である濃縮レベル90%以上の高濃縮ウラン(HEU)を燃料とする。フランスなど他の原潜保有国が用いる低濃縮ウラン(LEU)に比べ搭載する燃料の重さが軽くてすむ利点がある。

米カーネギー国際平和財団のジェームズ・アクトン氏は「イランが海軍原子炉の開発計画を持っていると主張し、核物質をIAEAの監視外におくことが可能だ」と指摘する。

原潜配備をどのように進めるのかについて3カ国は詳細を明らかにしていない。潜水艦が退役するまで核燃料を補充する必要がないよう、燃料とともに潜水艦を引き渡す案が有力視されている。

AUKUSの交渉は3カ国の一握りの代表で進められた秘密協議だったとみられる。そこにはNPTの専門家は含まれなかっただろう。
英米と欧州大陸諸国に亀裂

AUKUSは欧州の安全保障体制にも大きな影響を及ぼす恐れがある。フランスを排除し、英米豪で新しい安全保障の枠組みを立ち上げたことで、西側陣営における「アングロサクソン諸国と欧州大陸諸国」の亀裂が露呈した。

仏米は10月末の首脳会談で歩み寄る意向だが、これは表面上の溝を修復するにすぎない。フランスだけでなく、欧州連合(EU)加盟国の多くが「米なき欧州安保」を探る時期にきたと悟る。米主導のNATOの傘のもとでロシアと対峙する欧州がどこまで米国分を肩代わりするのか、域内で議論が本格化しそうだ。

ただEUの足並みがそろっているとは言い難い。フランスなどは「欧州軍」の創設を提唱するが、ラトビアのリンケービッチ外相は取材に「各国議会が軍をコントロールする権利を手放すのか」と突き放す。

ドイツも立場が定まらない。9月の総選挙で第1党となり、次期政権の主軸となる可能性のある中道左派・社会民主党のシャーピング元党首は「AUKUSを教訓に欧州は外交・安全保障政策で統合を深めるのが望ましい」と取材に語った。しかし党執行部の重鎮ミュッツェニヒ院内総務は軍縮が持論の根っからの平和主義者。次期政権で国防費を大幅に引き上げ、正面装備を一気に拡充するハードルは高い。

つまり欧州独自の安保体制というのは理念先行にすぎず、議論は緒に就いたばかり。実現には長い時間がかかる。

米国が外交、軍事の資源を中国に集中しようとするのは当然の動きだ。しかし、アフガニスタンからの撤兵やAUKUSに象徴されるように、同盟国の理解を得ない拙速な動きは大混乱を引き起こす。ちぐはぐな外交は結局、中国やロシアなどの強権国家を利するばかりだ。
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