〔「ツール」には、「限界」がある…、という話し〕

 ※ 「概念」とか、「言語」とか、果ては「数学」とか、オレは全て一種の「ツール」だと思っている…。

 ※ 思考を整理したり、もの事の「本質」を探ったり、一番の「勘所」を掴んだりするための「ツール」だ…。

 ※ そういう「目的」のために、「ツール」を「操作」して行くわけなんだが、当然、そこには「限界」というものがある…。

 ※ さらには、「日本国」「日本語」に特有の「問題」「限界」というものもある…。


 ※ 日本語においては、「漢字」特有の「造語機能」によって、「外国(特に、西洋)」由来の思想・概念を、自分の内部に取り入れて来たわけだ…。

 ※ 時には、漢字の「訳語」をつけて…。時には、それを諦めて、そのままの「発音」に似せて、「カタカナ語」に置き換えてだ…。

 ※ さらには、その「カタカナ語」の短縮形・省略形を作ったりしてだ…。

 ※ インフラストラクチャー⇒インフラ…、とかな…。

 ※ そうやって、なんとか「外国由来」の概念・思想を、「自分の内部に取り入れて来た」わけだ…。

 ※ しかし、「訳語」を当てると、今度は、その「漢字の字面」に引きずられてしまうんだよ…。

 ※ 例えば、聖徳太子の「十七条の憲法」というものがある…。

 ※ あの「憲法」は、「日本国憲法」「大日本帝国憲法」で使っている意味での「憲法」では無い…。実態は、「役人の心得」と言った感じのもので、「重大な規則・決まり」ということを強調するために、「憲」という漢字を使ったんだろう…。

 ※ 「大日本帝国憲法」の方は、明治期に「Constitution」の訳語に、「憲法」という語を当てたものだ…。

 ※ 「Constitution」とは、国家の根本を定める決まり、国家体制の形を定めたもの…、と言った感じの「語」だ…。「立憲主義」というニュアンスすら、含んでいない…。

 ※ そういう、「大日本帝国憲法」「日本国憲法」の方で「憲法」という語を学習した人は、「十七条の憲法」の方を、そっちに引きずられた感じで「捉えてしまう」んだよ…。
 ※ 数学では、「function」というものがある…。

 ※ f(x)でおなじみの、functionだ…。

 ※ これに、最初は、「函数」という訳語を当てた…。ある「函(ハコ、箱)」にドンドン変数を放り込むと、ドンドン「変換された数」が出てくる…。そういうイメージの「函」だ…。

 ※ 非常に良い訳語だったんだが、「教育漢字」の整理で、この「函」の漢字が使えなくなった…。

 ※ そこで、「関数」とした…。悪くは無いが、最初の「函のイメージ」は失われてしまった…。

 ※ プログラミングなんか学習していると、「関数」なるものが頻出する…。

 ※ どうしても、中学で学習した「一次関数」「二次関数」での「関数」の字面に引きずられて、「違和感」が生じることになる…。

 ※ ここでは、むしろ、functionを、「機能、仕組み、仕掛け」と捉える方が、いいと思う…。何かの「データ」を放り込むと、「別のデータに変換されたもの」が出てくる(「値を返す」とも、言う)…。最初の訳語の「函数」に、イメージとしては近い…。

 ※ 自分の中で、自分の感覚から、「関数」という字面から生じる「違和感」を取り去るのに、随分苦労したよ…。

 ※ 前にも語ったが、「Artificial intelligence」の訳語に、「人口知能」という訳語を当てた…。artificial⇒人工的な intelligence⇒知的な活動 だから、悪い訳語では無い…。

 ※ しかし、intelligenceに「知能」という訳語を当てたものだから、今度は、その「知能」に引きずられることになる…。

 ※ 「人工知能」≒「人間的な知能を有する人工物」と捉える人が、続出することになる…。

 ※ 山のような、「設計図」や「現場写真」を持って来て、「この”ビッグデータ”で、ひとつ「人工知能」の作成をお願いします!」と依頼して来る人の話しを、あちこちで聞いたことがあるだろう?

 ※ 経済学の方では、「名目GDPと実質GDP」「名目賃金と実質賃金」なんて概念がある…。

 ※ ここでの「実質」は、「物価の変動をも、加味した…」程度のニュアンスだ…。そういう目的に沿って、ひとつの「計算方法」を提出したもので、「物理法則」のような「確定的なもの」では無い…。

 ※ それでも、今度は、その「実質」という語に引きずられて、人々は「本来の、本当の」といったニュアンスを乗せて捉えることになる…。

 ※ 「実質賃金は、下がり続けている!」とか、「諸外国と比較して、実質賃金はなんたらかんたら!」とかの議論を、聞いたことがあるだろう?

 ※ 経済学関連で、「実質」と出てきたら、その「目的」「源流」を問え!というのが、「鉄則」だ…。