パキスタン、最大都市カラチの港湾開発で中国と合意

パキスタン、最大都市カラチの港湾開発で中国と合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB116LI0R11C21A0000000/

『中国の広域経済圏構想「一帯一路」で、パキスタンが新たに港湾の整備に乗り出す。最大都市カラチの沿岸開発で中国と合意した。パキスタンでの一帯一路の中心地を南西部グワダルからカラチへと東方に移し、中国による投融資の拡大に期待を寄せるが、専門家からは実現可能性を疑問視する意見もあがっている。

大規模インフラ整備事業「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」を巡りオンラインで開いた会合で、両政府がパキスタン南部カラチの沿岸総合開発事業に関する覚書を結んだ。パキスタン側は中国が35億ドル(約4000億円)を投資すると見込んでいる。

事業ではカラチ港で船舶の係留施設の増設、漁港や640ヘクタールにわたる貿易区域の新設を計画する。カラチ港と近くの島を結ぶ橋を建設する構想もある。

パキスタンのカーン首相はCPECにカラチ沿岸の総合開発が含まれたことを「ゲームチェンジャー」と呼び、事業がもたらす変化に期待を示した。「漁師のために海洋生物の生息地を浄化し、低所得者向け住宅を開発し、投資家に機会を与える」。同氏はツイッターで想定される恩恵を列挙した。

中国とパキスタンがカラチ沿岸の開発で合意したことで、同国での一帯一路の中心地は事実上、東方にシフトするとみられる。CPECの起点とされてきたイラン国境に近いバルチスタン州の港湾都市グワダルでは中国による投資拡大への障壁が浮き彫りになっていた。

同州では南西部の分離独立を求める武装勢力が長期にわたって反乱を続ける。8月にはグワダルで中国人を乗せた車両を狙った自爆テロが起き、複数の死傷者がでた。隣国アフガニスタンから米軍が撤収し、地域情勢がさらに不安定化するとの懸念から、カーン首相は一帯一路構想に反対する分離独立派との異例の対話に取りかかっていた。

カラチへの投資移転の前兆はあった。サウジアラビアは6月、グワダルで計画していた100億ドル規模の製油所の建設地をカラチ近郊に変更すると決めた。水と電力が不足し、大規模な抗議に直面するグワダルにエネルギーハブを構築するという政府の思惑は外れた。

中国も実利を重視して、CPEC拠点のカラチへの移行に動いたとみられる。資金源が限られるなか、中国は一帯一路で経済性や実現性がより高い事業を選ぶようになっている。専門家からはパキスタンがカラチの沿岸開発で投融資を引き出すのは一筋縄ではいかないとの指摘も出ている。

ニューヨークに拠点を置くコンサルティング会社はカラチの沿岸開発について、環境への影響調査や、50万人にのぼる地元住民の再定住などの課題を挙げた。ワシントンに拠点を置くアナリストはグワダルの開発への意欲を失わせた要因として汚職や公的支援の不足、事業の透明性の問題などがあると指摘。問題を抱える他の一帯一路関連事業もグワダルと「同じ運命」をたどるリスクがあると警鐘を鳴らしている。

(カラチ=アドナン・アーミル)』