連合、政権遠い野党に苦悩 発足後初の女性会長

連合、政権遠い野党に苦悩 発足後初の女性会長
政界Zoom
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『日本最大の労働組合の中央組織、連合は政治への関わりで苦悩する。支持する立憲民主党など野党は政権から遠のいている。前会長の神津里季生(りきお)氏は野党の結集を目指したが足並みがそろわない。6日に就任した新会長の芳野友子氏は31日投開票の衆院選へさっそく手腕が問われる。

6日に都内で開いた定期大会。芳野氏は「新型コロナウイルス禍で組合活動も岐路に立たされている。組合員の声をしっかり受けとめながら運動を前進させたい」と参加者へ呼びかけた。1989年の発足以来、初めての女性会長となった。

連合は官民の労組の統一体として誕生した。組織の結集で発言力を高め4年後の93年には非自民政権誕生の原動力となった。

戦後の中央組織には大きくわけ旧社会党支持の総評、旧民社党支持の同盟があった。総評は自治労や日教組といった官公庁の労組が中心で鉄鋼業など民間の組合も一部加盟した。
総評は社会党の選挙を支え日米安保反対など大衆運動の中核も担った。

同盟は自動車、電力、繊維をはじめとする民間労組が中心で労使協調の路線を歩んだ。民社党とともに「左右の全体主義との対決」を掲げた。

「労働運動が冬の時代を迎えていた。事態を打開するためにも、統一を急がなければならなかった」。連合の初代会長で日本電信電話公社(現NTT)出身の山岸章氏は官民労組の統一に動いた。

89年に総評と同盟の流れを組むナショナルセンターが連合に合流した。共産党系の労組は連合を批判し同年に全労連を結成する。そのような経緯から連合と共産党は現在も関係がよくない。

山岸氏は組織力を背景に野党間協力の有力プレーヤーとなった。93年の衆院選では自民党を離党した小沢一郎氏とも提携し非自民非共産の細川護熙政権の樹立の立役者となった。
以後は歴代会長には鷲尾悦也氏(旧新日本製鉄)、笹森清氏(東京電力)ら民間企業の出身者が並ぶ。激しい運動は鳴りを潜める。

連合が政治力を発揮したもう一つの例に2009年の民主党への政権交代がある。高木剛会長は06年に民主党代表になった小沢氏とともに地方の連合の組織を行脚した。

民主党が12年に下野してから自民、公明両党の連立政権が続く。古賀伸明、神津両氏は野党への支持を軸にしつつ自民党へ現実的な政策要望を続けた。消費税増税を容認する姿勢も取る。

いま組合員数の多い上位3組織はUAゼンセン(180万人)、自動車総連(79万人)、自治労(76万人)だ。数の上では民間労組主体で官公労は少数派になっている。

連合の政治路線は幅広いが官民間で際立った意見の違いはなかった。14年から安倍晋三政権が本格的に進めてきた安全保障法制で意見の違いが表面化した。

憲法9条を巡り自治労や日教組は護憲論が強い。一方で民間のUAゼンセンは憲法改正論議に前向きな姿勢を示す。安保政策を巡り希望の党に入れなかった旧民進党のメンバーが立憲民主党を結党した際、自治労などが支援した。

連合は立民と国民民主党を支持し次期衆院選でも両党を支援する。両党の橋渡し役になるはずだが、協力はかみ合っていない。立民は共産党との選挙協力に傾斜し国民がそれに反発する。

立民と国民は国会での法案への賛否が割れる場面も目立った。21年の通常国会では一定の所得がある75歳以上の人の医療費窓口負担を2割に引き上げる医療制度改革関連法に立民は反対、国民は賛成した。

「自民党は幅が広くてかんかんがくがく議論するが、決めたらこれでいこうという文化がある。かつての民主党はまじめだがバラバラになった。有権者はどちらを信頼するか」。神津氏は野党が「大きなかたまり」になることを重視した。

立民と国民にとり31日投開票の衆院選は20年9月に現在の政党の体制になってから初の大型国政選挙となる。数選挙区で調整は残るが、大半の小選挙区で立民と国民はすみ分けた。

連合傘下の労組が衆院選と並び重視するのが22年の参院選だ。参院選は比例代表で「身内」の組織内候補を立てる。個人別得票をみると各労組の得票数がはっきりわかるため組織をあげた戦いになる。

衆参の選挙の結果により立民、国民との関係を再考する意見が連合で出る可能性がある。衆院選は直前で参院選も1年を切る。連合の政治力が健在なのか試される。

連合は組合員数の低下に悩む。発足時には800万人といわれた。厚生労働省の調査によると20年は702万人まで低下した。連合以外の労組も含む組織率は00年は20%台を維持していたが20年は17%と下落傾向にある。

組織率の低下とともに組合員の内実も大きく変わってきた。1990年代はじめには10万人ほどだったパートタイムの労働者が2019年には130万人を超えた。

連合の女性の組合員の比率は19年は36%だった。芳野氏は女性が働きやすい環境づくりや女性の組合リーダーの育成を手がけてきた。

1989年の発足から雇用形態や就労環境は変化した。多様化する組合員の統率に芳野氏が自身の経験をどう生かすのかも注目される。
記者の目 組合員の意識も多様に

連合と政治の関わりは成功と挫折の繰り返しだ。非自民の野党を支援し2度の政権交代をなし遂げたもののいずれも長期政権にはならなかった。

2017年の衆院選で当時の民進党が希望の党へ合流した際に連合は支援した。反発する勢力が立憲民主党を結成し分裂した。その経緯から現在でも支援先が立民と国民民主党に「股裂き」になっている。

政策面で連合の主張が非自民政権で劇的に進んだイメージもない。むしろ労組と遠い安倍晋三政権が最低賃金を引き上げ企業に賃上げを要請した。連合のお株を奪ったといえる。
自民党を支持する個々の組合員も増えているという。野党が政権から遠のいたままだと、連合が野党を支援する意義も揺らぎかねない。(依田翼)』