真鍋氏「研究、ただ心から楽しんだ」

真鍋氏「研究、ただ心から楽しんだ」 米大で記者会見
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN05EDV0V01C21A0000000/

『【ニュージャージー州プリンストン=大島有美子、吉田圭織】

2021年のノーベル物理学賞を受賞することが決まった真鍋淑郎・米プリンストン大学上席研究員(90)は5日、同大で開いた記者会見で「我々は今起きている気候変動を認識し、対処する必要がある」と述べた。気候変動の根拠を科学的に示した研究が評価されたことへの喜びを語るとともに、気候変動の被害が世界で広がっていることへの危機感を表した。

会見場、万雷の拍手

プリンストン大学内のホールで開かれた記者会見には、気候変動を研究する学生らも参加し、真鍋氏をスタンディングオベーションで迎えた。「大いに驚くとともに、光栄だ」。真鍋氏は受賞が決まった気持ちをこう語った。

同氏が気候変動の研究に本格的に取り組んだのは1960年代からだ。「研究を始めたときは、気候変動の研究の重要性については思ってもいなかった。私の研究の原動力のすべては好奇心だった」と述べた。研究を「ただ心から楽しんでいた」とも振り返った。
「私にとってはノーベル平和賞」

世界が干ばつなど気候変動による災害に直面し、家を失う人も生じている現状に危機感も示した。「我々は気候変動を軽減する必要がある。だが、まず今まさに起こっている気候変動を認識し、対処する方法を見いださなければいけない」と強調。「自分がどういう行動を取るべきかも考えているところだ」と述べた。真鍋氏のジョークで湧き、和やかな雰囲気に包まれていた会場は静まりかえった。

「気候変動を理解することは難しい。だが、気候変動から生じる政治や社会の出来事を理解することはもっと難しい」とも述べた。今回の受賞決定は「私にとってはノーベル平和賞だと信じている」と気候変動が政治や社会に及ぼす影響の大きさを表現した。

「協調が不得意」会場沸かす

日本から米国籍に移った理由について、真鍋氏は「日本は互いを邪魔しないように協調する」と日本の慣習を説明した。「私は協調が得意ではなかった。(米国では)他の人が感じていることをあまり気にせずに行動できる」と述べ会場は笑いにつつまれた。米国の研究生活について「コンピューターを使いたいだけ使え、好きな研究ができた」とも振り返り、研究資金の潤沢さや資金申請の複雑さの違いなどもにじませた。

真鍋氏の祝賀会には、プリンストン大の学生や研究者らが多く訪れた(5日、米ニュージャージー州)

会見後、受賞決定を祝う祝賀会がキャンパス内で開かれた。参加したプリンストン大で氷河の動きを研究する男性研究者は「自分の気候モデルの研究が何の役に立つのかと考え、つらくなることがある。今回の受賞決定で重要性が認められたと実感できた」と喜んだ。

真鍋氏は同僚の研究員から、淑郎という名前を取って「スーキー」と呼ばれている。同氏と10年超ともに研究していたという同大のトム・デルワース上級研究員は「スーキーは、気候変動の世界のマイケル・ジョーダンだ」と述べた。米プロバスケットボール協会(NBA)の著名選手、マイケル・ジョーダンの活躍がNBAの価値を世界で高めたように「彼は気候変動の研究者の立場を引き上げた」と称賛した。真鍋氏の研究を自身が学生に教えているという。

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『多様な観点からニュースを考える

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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター

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分析・考察 「スーキー」さんから元気をもらいました。90歳とは思えない心の若さと純粋な情熱、研究活動への喜びが映像や文面から伝わります。

「私にとってはノーベル平和賞」という言葉に重みを感じます。

真鍋さんが解き明かした「二酸化炭素と地上の気温の上昇」の関連性はいまや常識ですが、この米国では今年の初めまで、その説を堂々と否定し国際協力を台無しにした大統領が座っていました。

物理学賞としての「固定観念」を超えた授賞の決定が、人類がみずから深める気候変動という危機への警鐘として世界に鳴り響くことを願っています。

2021年10月6日 12:07いいね
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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター

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ひとこと解説 「日本は互いを邪魔しないように協調する」「私は協調が得意ではなかった」。

日本企業の弱さを象徴するコメントでもあります。協調は一歩間違えれば「事なかれ主義」。

みずほフィナンシャルグループのシステム障害も、三菱電機の品質不正も、背景にはこの企業風土がありました。

この風土は人と違ったことをする「出るくい」を打ちイノベーションを妨げます。「技術あって経営なし」。世界と比べた日本株の低迷の一因でもあるのです。

2021年10月6日 11:27 』