中国軍、台湾への威嚇強める恐れ

中国軍、台湾への威嚇強める恐れ 国際包囲網に猛反発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM053OE0V01C21A0000000/

『【台北=中村裕、北京=羽田野主】中国の台湾への軍事的圧力が急速に強まっている。中国軍機が最近4日間で台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入した数は過去最多の149機。わずか4日間で、月平均の58機を大きく超えた。米国が国際的な連携を使って強める対中圧力に中国はいら立ちを募らせている。

中国の建国記念日に当たる国慶節の10月1日、38機の中国軍機が台湾のADIZに侵入した。30機を上回ったのは初。さらに翌2日にも39機、3日も16機、4日も過去最多の56機を台湾のADIZに立て続けに送り込んだ。

7~8月は、中国軍機が台湾のADIZに1機も侵入しない日が月の半分以上を占め、最近の突出ぶりが際立つ。

中国が攻勢を強め始めた背景は大きく2つある。一つは、米国を中心に急速に形成されつつある国際包囲網を使った対中圧力に対する強い不満だ。

9月15日には、米英豪が中国を念頭にした安全保障協力の新たな国際的な枠組み「AUKUS(オーカス)」を公表し、中国への対抗姿勢を鮮明にした。同23日には、台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟申請を公表すると、米国は台湾の後押しを示唆。一方で、中国のTPP加盟には、加盟国に慎重な判断を促すかのような発言をしてみせた。

さらに米国は10月2~3日、沖縄南西海域で6カ国による共同軍事演習を実施した。米海軍は原子力空母ロナルド・レーガン、カール・ビンソン、英海軍は空母クイーン・エリザベスを航行させ、日本、オランダ、カナダ、ニュージーランドの艦船も含めて計17隻が参加し、中国を強くけん制した。

こうした動きに、中国共産党系メディアの環球時報(電子版)は4日、「台湾海峡を巡る情勢は一触即発の緊迫性を帯びている。台湾が米国の(対中)封じ込め戦略の陣地となることを決して認めない」と指摘し、強い不満を示した。

中国の軍事関係筋も、台湾への最近の大量の軍機侵入について「米英日など6カ国の合同演習に対抗し、対等の軍事力を示す狙いがあった。台湾に独立の幻想を抱かせるわけにもいかない」と指摘した。

中国が、台湾への圧力を強める背景のもう一つは最高指導部人事だ。5年に1度の党大会が来秋に迫り、異例の3期目をめざす習近平(シー・ジンピン)国家主席にとって国内の引き締め、安定が何よりも欠かせない。

そのため習指導部は、11月に迫る党の重要会議「第19期党中央委員会第6回全体会議(6中全会)」で習氏の権威を一段と高め、来年2月開幕の北京冬季五輪を成功させ、来秋の党大会で習氏の続投につなげるシナリオを描いてきた。

だが、足元では中国経済には不透明感が増し、習氏が悲願とする台湾統一も逆に遠のいている危機感が広がり始めている。香港の民主派の弾圧をきっかけに、台湾や国際社会の「中国離れ」は加速した。6日には、フランスの上院議員団が3年ぶりに台湾を訪問し、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統との会談を予定するなど、欧州の台湾支持も広がってきた。

米中は、貿易協議を近く再開し、首脳会談を模索する動きもあり、歩み寄りの姿勢もみられる。ただ現実には、台湾周辺で激しい攻防が続く。沖縄南西海域で演習を終えた米英空母は今後、中国が大半の領有権を主張する南シナ海に入り、軍事演習を予定し、対抗姿勢を一段と鮮明にする。

南シナ海でAUKUS初の軍事演習が行われる可能性もある。国際的な包囲網と、来秋の党大会を控えた時間との闘いに、中国は焦りも募らせ、今後、台湾への軍事的圧力は一段とエスカレートする可能性さえある。

蔡総統は5日に発売された、米外交専門誌のフォーリン・アフェアーズに寄稿し、「台湾がもし、(中国の手に)陥落すれば、地域の平和と民主国家の連携体制に災いをもたらす」と危機感を示し、国際社会に支持を求めた。』