19年夏にPCR機器を中国が大量発注 米英豪チームが解析

19年夏にPCR機器を中国が大量発注 米英豪チームが解析
コロナ12月発生説を疑問視
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA233970T20C21A9000000/

『米国、英国、オーストラリアの民間研究者は、新型コロナウイルスの発生源となった中国の湖北省で2019年5月以降にPCR検査機器の発注が急増していたとの報告書をまとめた。同年秋までに新型コロナが広がっていた可能性が高いと指摘。同年12月に最初の感染例が見つかったとする中国の説明を疑問視した。

米英豪の元情報機関の職員らで構成する調査チームが、中国の公共調達の入札情報を集約したウェブサイトからデータを収集して分析した。

報告書は19年の湖北省でのPCR検査機器の調達額が約6740万元(約11.6億円)と18年と比べて2倍近くに増えたと言及した。発注機関別にみると大学が2倍、疾病予防管理センターが5倍で、動物の疾病対策機関の発注も10倍に増えた。病院は1割超減った。

PCR検査は遺伝子の配列を調べるもので、必ずしもコロナだけに使われるものではないが、湖北省の武漢周辺で新たな感染症の発生が認識されていた可能性が高いという。

湖北省の月別のデータでは、5月にいったん発注が顕著に増えた。疾病予防管理センターと人民解放軍の発注が目立ち、早ければ5月には初感染があった可能性があると分析している。

7~10月にかけても大幅に増加した。この間、発注が急増したのは武漢科技大学だ。総額は19年の1年間で892万元と前年の約8倍に増えた。調査チームは同大学が周辺の病院や衛生当局と連携しており、ウイルスの流行の初期に対応する機関とみている。

報告書はこうした発注や調達の傾向は「新型コロナの感染拡大と関連づけられる」と指摘。感染拡大の時期は「中国が世界保健機関(WHO)に新型コロナについて通知するよりもはるかに早いと、高い確度で結論付けられる」と強調した。

新型コロナの発生源や時期を巡っては米中で対立している。中国はWHOに19年12月8日に武漢で初めて症状のある患者が記録されたと報告しているが、米国内ではウイルス研究所から流出し、12月以前に感染が広がっていたとの指摘がある。

米ハーバード大などは衛星画像をもとに、武漢の病院の駐車場の利用率が19年8月に大幅に上昇したとの研究結果を公表している。

ただ、米国家情報長官室は8月に発生源を巡り①動物から人間に感染②中国のウイルス研究所からの流出――のどちらかを結論づける決定的な証拠を得られず、特定できなかったと発表した。

チームからデータ提供を受けて独自に分析した井形彬・多摩大大学院客員教授は「これだけでは断定できないが、コロナの拡大を武漢周辺で把握し始めたのが19年12月の半年~数カ月前だったと論じる上で有力なデータだ」と話す。「今回の報告書は、各国が改めて中国に情報開示を強く迫る契機になる可能性がある」と語る。

調査チームのデービッド・ロビンソン氏は「中国から意義のあるデータが提供されていないことで多くの仮説や誤情報がはびこる状況になった。技術を使って信頼性の高いデータを提供している」と調査の意義を説明する。
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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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分析・考察

炎上的な状況は、「受け手における情報の重要性」と、「情報・状況の曖昧さ」の乗数が、大きい時に生じるとされます。

今回の指摘の真偽は全くわかりませんが、コロナは世界の人々にとってあまりに重要な惨事であり、その発生状況について中国の情報開示が極めて不十分だったことは紛れない事実でしょう。状況が曖昧な間はこうした指摘と厳しい反応は続くでしょうし、それは何より中国にとって致命的です。

十分な情報開示に踏み切る以外には、解決策はないように思えます。

2021年10月5日 8:01

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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ひとこと解説

状況証拠でしかないが、中国がいつ感染に気が付いたのかを示唆するデータではある。

しかし、8月に感染が始まっていたとすると、年末までに感染を一定規模に抑えていたということになり、本当にそれが可能だったのか、疑問は残る。

中国が意図的に隠していたかどうかは国際政治上、重要な問題ではあるが、中国への攻撃材料として、何とか中国が隠ぺいしていた事実をひねり出そうとするようなことだけは避けなければならない。

大事なことは事実をきちんと確認することであり、パンデミックを繰り返さないようにすることであり、中国を攻撃することではない。

2021年10月5日 7:28 (2021年10月5日 7:29更新)』