衆院選、異例の短期決戦

衆院選、異例の短期決戦 高い内閣支持率保ち投開票狙う
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『岸田文雄首相は4日、衆院を14日に解散し次期衆院選を19日公示―31日投開票の日程で実施すると表明した。首相就任から1カ月弱の異例の短期決戦になる。政権発足時に期待する高支持率を維持したまま投票日を迎える狙いだ。与野党は事実上の選挙戦に入る。

首相は就任後初めての記者会見で「可及的速やかに衆院選を実施し、国民から信任をいただいて国政を担っていく」と強調した。「思い切って新型コロナウイルス対策、経済対策をできないか。そういった思いから日程を決めた」と説明した。

衆院選の日程は異例ずくめだ。4日の首相指名から14日の解散はわずか10日後にあたり、戦後最短となる。公示日と投開票日は共にこれまで多くの政権が避けてきた「六曜」の仏滅になった。

いずれも仏滅なのは2000年の森喜朗内閣以来だ。このときは天皇陛下の訪欧と衆院議員の任期切れの間隔が短く、日程の選択肢が少なかった。首相は「六曜」よりも早期の投開票を優先した。

与党内にはもともと11月7日か14日投開票を想定する見方が多かった。1~2週間の投開票前倒しはどう影響するのか。

日本経済新聞社による過去の内閣の発足直後の支持率を見ると理由が浮かび上がる。

20年9月に発足した菅義偉内閣は74%の高支持率で始まり、1カ月後に63%、2カ月後に58%、3カ月後に42%と低下した。新型コロナウイルスの感染状況が年末にかけて悪化し、批判が高まったのが響いた。

06年発足の第1次安倍内閣以降の5つの自民党政権のうち4内閣の支持率が発足から1カ月後に下落した。

下落幅は就任1カ月後が3~11ポイント、2カ月後は4~22ポイントと拡大した。発足時に53%だった麻生政権は2カ月後に危険水域の31%に落ち込んだ。

新型コロナ禍ではさらに下落するリスクがある。首相は記者会見で、31日投開票について「国民に貴重な判断をいただくわけだから新型コロナの状況も当然、念頭においた」と説明した。

足元で減少基調にある新規感染者が再び増加すれば、世論の関心は新型コロナに集中する。冬場には「第6波」が懸念されており、それまでに医療提供体制を拡充しておかなければならない。投票までの期間が長引くほど、政権にとっては不安要素が増える。

衆院選を見据えた野党側の準備も考慮した。総裁選で自民党の支持率があがり、野党共闘の動きが加速していた。

立憲民主党の枝野幸男代表は9月30日に共産党の志位和夫委員長と会い、政権交代が実現した場合には「共産党が限定的な閣外からの協力をする」と一致した。

両党が候補者調整を進めれば、現時点で70ほどある競合区は一段と減る。時間的余裕を与えてしまうと野党候補の一本化が進み、与党との接戦区が広がる構図だ。

国会対策上の効果もある。野党は首相が出席を前提とした予算委員会の開催を要求してきた。一問一答形式で政権を追及できる予算委は野党にとっての見せ場だからだ。これまでは総裁選などで自民党への関心が高まったが、予算委中は立場が逆転する。

自ら政治日程を組み立て主導権を示した。総裁選中からあった11月7日や14日投開票との観測を打ち消し、首相の専権事項の解散権を自ら行使する姿勢を明確にした。

党内では一連の人事を巡り「首相が人事で他派閥に配慮しすぎだ」との声が出ていた。党四役には自ら率いる岸田派から一人も入らず、内閣の要となる官房長官や財務相、外相も他派閥に譲った。

一方、早期の投開票はデメリットもある。首相が意欲を示す数十兆円規模の経済対策や補正予算案の決定は選挙後に先送りとなる。

子育て世帯への給付金や企業への持続化給付金の復活といった政策の実績をほとんどあげないうちに、政権を選ぶための十分な判断材料を国民に示すのは難しい。

学習院大の野中尚人教授は「本来は経済対策などこれからやることを具体的に国民に提示してから衆院選に臨むべきだ」と話す。「衆院選後に政策を肉付けすると、その政策が国民の信任を受けたといいきれない。政策の推進力を欠く」と指摘する。

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