3Aに響く不協和音 岸田人事に安倍氏は「不満」

3Aに響く不協和音 岸田人事に安倍氏は「不満」
【イブニングスクープ】
2021年10月4日 18:00 (2021年10月4日 20:19更新) [有料会員限定]
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA033HP0T01C21A0000000/?n_cid=NMAIL006_20211004_Y

『岸田文雄内閣が4日、発足した。首相は閣僚や自民党執行部の人事で党総裁選への論功行賞をする一方、若手も登用した。安倍晋三元首相、麻生太郎氏、甘利明幹事長の「3A」の影響力が強く働いた人事と受け止められているが、内実は異なる。安倍氏は不満を漏らしており、3氏と岸田氏の間に出た不協和音は政権運営に響きかねない。

「正直、不愉快だ」。安倍氏は閣僚人事の全容が固まると周辺につぶやいたという。最大派閥・細田派を事実上率いる立場として同派からの起用が前回より減っただけではない。
人事の要は党幹事長と内閣の官房長官だ。自身が推す萩生田光一氏をどちらかに、という希望が通らなかった。

「もう少し巻き返せないのか。岸田さんと話してくれ」。先週後半、安倍氏は官房長官に内定していた細田派の松野博一氏に促した。萩生田氏は文部科学相から経済産業相になったものの、全体では期待通りの人事とは言い難い。

安倍氏は一連の人事の前からクギを刺していた。「人事は人に相談すると自分の思い通りにならなくなる。1人で考えた方がいい」と岸田氏に伝えていた。

今回は幹事長になった甘利氏が推した人物の登用が目立つ。安倍氏周辺では「こちらに相談がないのに甘利氏とは相談するのか」との不信感が生まれた。

一方、岸田氏にも異論がある。「ずっと自民党改革はやると言ってきたじゃないか」。岸田氏は細田派で衆院当選3回の福田達夫氏を総務会長に抜てきする人事に「反発がある」と聞くと、周囲に反論した。

8月26日の総裁選への出馬表明で党改革を訴え、若手・中堅の登用を掲げた。福田氏は党改革を唱える党内のグループの代表世話人を務めていた。

政調会長に据えた高市早苗氏は無派閥とはいえ総裁選で安倍氏が全面支援した。岸田派からみれば党三役に事実上の細田派を2人起用し、官房長官まで同派に譲ったという認識がある。

岸田氏は総裁選の1回目の投票から安倍氏の支持を受けたわけではない。2018年の前々回の総裁選は安倍氏が3選するため、岸田氏は立候補を見送った。前回20年の総裁選は安倍氏が岸田氏ではなく菅義偉氏を支持した。

今回の人事に関して岸田派内では「細田派にそこまでの借りはない。譲りすぎだ」との意見が出た。

「これ以上ない満額回答だ」。閣僚に4枠を得た第3派閥の竹下派幹部は喜んだ。

総裁選2日前の9月27日、会長代行の茂木敏充外相は派の大勢が岸田氏支持だと表明した。茂木氏は総裁選中から頻繁に岸田氏とやりとりし、誰を起用するかも電話で協議した。岸田氏は今回、派閥会長や派閥幹部と事前に人事を相談した。

昨年9月に総裁選で敗れた後、菅内閣の組閣で岸田氏は自派の平井卓也、上川陽子の両氏を一本釣りされた。

当時、岸田氏は「俺はよっぽど嫌われているんだな」と語っていた。派閥トップとして人事の相談がないほどつらいことはない。自らの経験をもとに今回は細田派会長の細田博之氏とも調整した。これが安倍氏らとの食い違いを生んだ可能性がある。

甘利氏が所属する麻生派は嫉妬の対象になっている。岸田氏は総裁選終盤の段階で「幹事長は甘利さんしかいない」と決めていた。

閣僚人事では甘利氏が推した麻生派の山際大志郎氏や二階派の小林鷹之氏が入閣した。

甘利氏が座長を務める自民党の新国際秩序創造戦略本部で、小林氏は事務局長、山際氏は幹事長を務める。ポストは甘利氏の狙い通りではないが他派閥は「甘利人事だ」と説く。
麻生派で総裁選に出馬した河野太郎氏の広報本部長就任も同派が主導した。「日が当たらず業務も大変な役職はないか」。麻生派が河野氏の人事を岸田氏に提案した。

「受けるように」。河野氏に伝えたのも麻生氏だ。河野氏周辺ではこの人事に不満を持つ人もいたが、麻生氏直々の指示になる。河野氏は「なんでもやらせていただきます」と答えた。

総裁選翌日の9月30日、麻生氏は都内のホテルで岸田氏と向き合った。

「9年近く常に首相のそばに居た。新しいイメージでやった方が良い」。麻生氏が副総理・財務相を離れる意向を伝えると、岸田氏は「政高党低と言われているのを何とかしたい。党の存在感を上げていただきたい」と副総裁への就任を要請した。

3Aのうち麻生派の麻生、甘利両氏が党の副総裁、幹事長に並ぶ。内閣に強い重心がある「政高党低」も微妙な修正を迫られるかもしれない。

高市氏を推した安倍氏と、今回細田派内で処遇された面々の一部にも微妙な距離ができる。岸田政権の人事は一部で「安倍色が目立つ」との指摘もあったものの実情は違う。麻生、甘利両氏と安倍氏とのズレもうかがえ、長く自民党政権を支えてきた3Aの基盤にも変化の兆しがでている。

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