中国しぼむ資金調達

中国しぼむ資金調達 不動産規制で加速、中小にも打撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM181YW0Y1A910C2000000/

『【北京=川手伊織、香港=木原雄士】中国で企業や個人による資金調達が急減速している。政府が不動産向け融資の規制を強めた影響が大きく、銀行による企業向け中長期融資は8月に前年同月比で28%減った。中国企業の債務返済能力への懸念から外債発行も減少。中国政府にとって適切な債務管理は重要な課題だが、調達環境の悪化は先行きの成長率を大きく鈍化させるリスクも潜む。

9月29日、中国人民銀行(中央銀行)と中国銀行保険監督管理委員会は不動産金融に関する会議を開き、「不動産を短期の景気刺激策としない」という方針を確認した。バブルが指摘される足元の不動産市況について、景気対策として押し上げることはないとの意思表示だ。

不動産については人民銀が2020年夏に大手不動産会社に対し、守るべき財務指針「3つのレッドライン」を設けると通達。21年1月には住宅ローンや不動産会社向け融資に総量規制を設けるなど段階的に規制を導入してきた。一連の規制は中国恒大集団が経営難に陥る一因となった。

この結果、銀行や市場からの調達総額を示す「社会融資規模」の8月末の残高は前年同月比10.3%増の305兆元(約5200兆円)で、増加率は2年8カ月ぶりの低さとなった。20年10月の13.7%増から減速が鮮明だ。

銀行による中長期資金の融資をみると、8月は企業向けだけではなく個人向けも24%減となった。不動産関連の資金需要が急速にしぼんだとみられる。

不動産と直接関係がない企業にも影響は及んでいる可能性がある。金融情報会社リフィニティブによると、中国企業による7~9月の外債発行額は約80億ドル(約8900億円)と、4~6月期と比べて7割近く減った。主要な格付け機関が恒大を相次いで格下げし、低格付け企業に対する投資家の警戒感が高まった。

仏投資銀行ナティクシスは仮に恒大の資金繰りが行き詰まった場合、「完成物件待ちの人が優遇され、ドル債の保有者は一番大きな影響を受ける」と予想する。こうした見方も信用力の低い企業の資金調達を一段と難しくしている。

資金調達の規制はすでに不動産開発にブレーキをかけている。8月単月の不動産開発投資は前年同月比0.3%の増加にとどまった。新型コロナウイルス禍でマイナスだった20年1~2月以来の低い水準だ。

銀行融資以外の「シャドーバンク(影の銀行)」も金融当局が締め付けを強める。

銀行の帳簿に計上されない委託融資、信託融資、手形引き受けは8月、1058億元のマイナスだった。返済が調達を上回ったことを示す。1~8月の累計では1兆3534億元の返済超過で、前年同期の8倍となった。20年夏までは新型コロナ禍の打撃を被った経済状況を考慮し規制を緩めたとみられるが、21年は改めて締め付けを強めている。

銀行での借り入れが難しい中小零細企業にとって「影の銀行」は重要な資金調達手段だった。資源高をきっかけにしたコスト高が中小零細企業の収益を圧迫している。「影の銀行」への締め付け強化が、中小零細企業の資金繰り難を一層厳しくしている面は否めない。
資金繰りの問題に加えて、景気の先行き不安が強まり、前向きな資金調達も様子見の動きがみられる。1~8月の設備投資は前年同期より1.4%少なかった。新型コロナ感染の影響で1割超減少した20年同時期の水準をさらに下回る。

中国では、就業者の8割が中小零細企業で働く。1~8月の都市部の新規雇用は938万人だった。新型コロナまん延前の19年同時期をなお5%近く下回っており、中小零細企業の雇用創出力が弱まっている。人民銀は7月に銀行の資金調達コストに直結する預金準備率を引き下げ、9月には低利での借り換えを促す資金枠を創設した。中小零細企業の資金支援策を打ち出してきたが、資金繰りに苦しむ企業はなお多い。

資金調達の伸び悩みは固定資産投資などの減少を通じて景気回復の足取りを重くしかねない。中国政府は、債務増加の抑制と経済の安定成長という難しい両立を迫られている。』