米英豪AUKUS、経済に波及 EUは豪とのFTA交渉延期

米英豪AUKUS、経済に波及 EUは豪とのFTA交渉延期
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM014Z70R01C21A0000000/

『【シドニー=松本史、ブリュッセル=竹内康雄】米国、英国、オーストラリアが結成した安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」の波紋が広がってきた。欧州連合(EU)は豪州と進める自由貿易協定(FTA)の交渉延期を決めた。東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部の国はオーカスが中国を含めた軍拡競争を招きかねないとの懸念を示す。

【関連記事】揺れるASEAN、中国が接近 米英豪AUKUSに懸念も

豪政府は1日、10月中旬に予定したEUとのFTA交渉が11月に延期されたと明らかにした。豪州のテハン貿易・観光・投資相は「FTAは豪州、EU双方の利益になる」と述べ、交渉を続ける方針を強調した。

豪州に対するフランスの反発が背景にある。豪州は9月16日、原潜配備に伴い2016年から仏政府系造船会社と進めていた次期潜水艦開発計画を撤回すると表明した。フランス側は「信頼を築いてきたが、裏切られた」(ルドリアン外相)と強い不満を表明した。EUとしてもひとまず冷却期間をおく必要があると判断したとみられる。

交渉延期はEUと豪州が念頭に置く年内合意を難しくしかねない。交渉が後にずれるのに加え、フランスは来春に大統領選を控え、世論への配慮から振り上げた拳を簡単には下ろせないからだ。フランスの駐豪大使は本国に召還されたままだ。

EUとのFTA交渉は豪州にとって重要だ。輸出額の3割以上を占める中国との関係が悪化し、農産品への高関税など貿易制限措置を課されており、輸出先の多角化が急務だからだ。豪州からEUへの輸出額は20年に170億豪ドル(約1兆3600億円)で全体の4%弱を占める。

EUにとっても豪州との関係は欠かせない。9月に公表したインド太平洋戦略では、民主主義や人権などEUと価値観を共有する国々との関係強化を明記した。

モリソン豪首相は、原潜配備計画の発表前夜にマクロン仏大統領と電話協議を試みたがかなわず、決定について「私的な通信」を送ったと話す。豪メディアはマクロン氏の携帯電話へのメッセージだったと伝えた。

豪シンクタンク、ロウイー研究所のハーベ・レマヒュー氏は「EUにとっての問題は契約(破棄)よりも、そのやり方だ。豪州が仏から完全に信頼回復をすることはないだろう」と話す。そのうえで「豪州は欧州を輸出市場としてだけではなく、インド太平洋地域での戦略的な関係国として尊重する姿勢を見せる必要がある」と指摘した。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia 』