揺れるASEAN、中国が接近 米英豪AUKUSに懸念も

揺れるASEAN、中国が接近 米英豪AUKUSに懸念も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM214X40R20C21A9000000/

『【ジャカルタ=地曳航也、シドニー=松本史】米国と英国、オーストラリアによる安全保障協力「AUKUS(オーカス)」は東南アジア諸国連合(ASEAN)も揺さぶる。中国はASEANに接近し始めた。

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オーカスは南シナ海などに軍事進出する中国を抑止し、インド太平洋地域の安定を狙う。ASEANとの連携強化も打ち出すが、ASEANの一部はむしろ地域の不安定材料とみなす。

インドネシア外務省は9月の声明で地域に軍拡競争を引き起こしかねないと指摘した。実際、インドネシア海軍は南シナ海の自国領ナトゥナ諸島の警戒強化を発表した。地元漁師が中国船6隻を目撃したと通報したためだ。中国と南シナ海の領有権を争うマレーシアも同様の懸念を示す。

豪州の原潜運用には少なくとも数年かかる。インドネシアなどには「オーカスが機能する前に中国が軍事的圧力を強めれば、誰が対応するのか」という疑念がくすぶる。一方、フィリピンやシンガポールはオーカスに期待感を表明する。

中国はオーカスへの立場が割れるASEANに近づく。中国外務省の劉勁松アジア局長は最近、フィリピン、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアのASEAN5カ国の駐中国大使と個別に会い、「オーカスは仮想敵を公にし、地域紛争のリスクを増加させる」と批判した。

マレーシアのヒシャムディン国防相は近く中国を訪れ、オーカスについて協議する方針を示した。訪問に先立つ9月27日、中国の魏鳳和国防相とオンラインで会談した。環球時報英語版によると、魏氏は「覇権主義とパワーポリティクスに反対するためマレーシアと働く」と強調した。

ASEANは10月下旬に米中など主要国との首脳会議をオンラインで開催する予定だ。オーカスのあり方についても議題になる可能性がある。

オーストラリア国立大のシロー・アームストロング准教授は「米豪両国がASEANとの関係をうまく築けなければ、オーカスも(日米豪印の)クアッドも地域を不安定化させる重大な干渉になる」と指摘する。

米国はアフガニスタンからの駐留米軍の全面撤退に合わせて周辺に展開していた空母ロナルド・レーガンを南シナ海に移動させた。9月24日に南シナ海の海域に入ったもようで、当面の中国の動きに対応するとみられる。活動には周辺のASEAN各国の理解が不可欠で、豪州とともに信頼を構築することが喫緊の課題になる。』