嫌われ河野太郎はどこへ行く

嫌われ河野太郎はどこへ行く…バブルが弾けて側近議員は「政治生命も危うくなる」
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『各種調査で断トツの人気を誇りながら自民党総裁選で惨敗した河野太郎ワクチン担当相。国民に人気のある小泉進次郎環境相、石破茂元幹事長と手を携え、総選挙を直前に控える議員心理に働きかけて圧勝するとの夢は儚くも消えた。やはり河野家から宰相は誕生できないのか――。そのゲームプランを追うと、負けるべくして敗北したといえる中で、「私の力不足以外の何物でもない」と分析を拒む河野氏には「政治生命」を危ぶむ声すら出始めている。

【写真】2021年自民党総裁選 オンライン討論会に出席した河野太郎

「ここまで議員票も獲得できないとはね。下手をすれば政治生命も危うくなるよ」。河野氏を応援した自民党中堅議員の一人は落胆した表情を見せる。総裁選で注目されたのは、河野氏の党員・党友票がどこまで伸びるかだった。6割近くを獲得する勢いであれば国会議員票も連動して雪崩を打つはず、というシナリオは終盤に差し掛かる前には崩れていた。メディアの情勢調査で河野氏の「党員票」獲得予想は4割程度にとどまり、岸田文雄元政調会長や高市早苗元総務相の善戦が報じられていたからだ。

 1回目の投票結果は、予想通り「党員票」が4割あまりの169票と伸び悩んだ。議員票の86票という数字は、総裁選中盤の動向調査時点から上積みできなかったどころか、切り崩されたことを意味する。逆に、勝利をつかんだ岸田氏は党員票を3割近い110票、議員票は中盤から伸ばして4割近い146票を獲得した。いずれの候補者も過半数を得られず決選投票にもつれ込むのは想定通りだったが、1回目の議員票は高市氏(114票)にも及ばず、まさに完敗といえる。

 河野氏のゲームプランはどこで崩れたのか。そこには負けるべくして敗北したワケがある。「国民の声に……」。河野氏は総裁選で「国民」という言葉を連発した。世論調査でトップを走り、ツイッターのフォロワー数が243万人と、安倍晋三前首相の229万人を上回っていることから「自分は人気がある」との自負があるのだろう。総裁選が人気投票であれば、河野氏は「当選確実」だったはずだ。

河野太郎
河野太郎氏(他の写真を見る)

弾けた「河野バブル」

 だが、メディアによる情勢調査の流れを見ると、河野氏は総裁選中盤をピークに勢いを失っている。他の候補者が知名度上昇とともに着々とポイントを獲得していくのとは対照的で、「一人負け」だった。河野氏に票を投じた若手議員の一人は「河野氏の人気に頼りすぎて、組織が機能しなかった。河野氏が勝てないと見るや、あまり話を聞いてもらえなくなった」と振り返る。河野氏をはじめ、人気がある小泉、石破両氏は次期衆院選の「選挙の顔」として期待された。だが、その前提は菅義偉内閣の支持率低下に伴う「総選挙で生き残れない」との議員心理だ。菅内閣退陣と総裁選実施で政党支持率が浮揚し、そうした危機感は急速に萎んだ。人気にあやかろうとした議員の結束力はもろく、皮肉にも自民党に注目が集まったことにより「河野バブル」は弾けたといえる。

 石破氏は「党員票は、ほとんどの地域で1位だからありがたかった」とした上で、「これと議員票がなんでこんなに離れていたのかというのは、やはり自民党の根本の問題かもしれない。このズレを直していかないと、いつまでたっても『自民党は国民の意思と違うよ』ということを引きずってしまうので、ここはなんとかしないといけない」と指摘したが、現行の総裁選の仕組みで争う以上、ゲームプランが崩壊する中での勝利が困難だったのは当然だろう。』

『「3A」との距離感

 2つ目の敗因は「3A」との距離感にある。これは石破氏にも共通しているが、強固な保守層に支えられる今の自民党内で安倍氏、麻生太郎副総理、甘利明元経済再生相の「3A」の影響力は絶大で、その距離が総裁選の行方を大きく左右する。過去4回総裁選に出馬し、敗れた石破氏が安倍氏らから嫌煙されているのは有名だが、脱原発や女系天皇容認といった過去の言動から河野氏も警戒されていた一人だ。東京都議選など最近の各種選挙で自民党から本来の支持層が離れており、「保守層をしっかりと固め直すべきだとする『3A』と、ウイングを広げて幅広い支持を得るべきだとの河野、石破両氏のスタンスは違う」(細田派若手)。保守派を代表して立候補した高市氏が当初は「泡沫候補」と見られながらも、安倍氏らの全面支援で予想外の健闘を見せた意味は小さくない。逆に、歯に衣着せぬ言動が好感されてきた河野氏が持論を封印して「3A」に協調すれば「ブレた」と映るリスクを負うことになる。

 河野氏には、省庁幹部や元官僚、民間シンクタンクなどにブレーンがいる。自身の政策を磨き上げ、その発信力を支えてきたチームといえるが、その一人も「安倍前首相に嫌われていると思われた段階から、向かってくるネット攻撃が激しくなった。総裁選で勝利しない限り河野氏の政策は実現できないわけだから、当面は封印せざるを得ないのは仕方ないかもな」と悔しがる。「高市氏の応援を通じて本来、自民党はどうあるべきかをしっかり訴えることができた。この論戦によって離れかかっていた多くの支持者がまた自民党に戻ってきてくれるのではないか」と胸を張った安倍氏の影響力は、5年超も幹事長を務めた二階俊博氏に代わるキングメーカーとして今後さらに増大するだろう。

 自身が掲げる「脱原発」などに財界のアレルギーが強く、安倍政権時代の今井尚哉首相秘書官は業界団体にメッセージを送っていたと、河野氏周辺はにらむ。これに加えて、今回は麻生派が自派閥の河野氏と、甘利氏らが推す岸田氏に支持が割かれていた点も忘れてはならない。「『3A』との関係を無視した戦いは今の総裁選の仕組みではあまりに挑戦的となる」(竹下派中堅)。

 かつて「若手のホープ」ともてはやされた河野氏も今や58歳。今後の総裁選について「またチャンスがあればしっかりやっていきたい」と語った河野氏は、いかなる道を選択していくのか。舌鋒鋭く政権批判を展開する「石破化」の道を突き進み、リベラル勢力の結集を図って「3A」に挑むのか、それとも「ブレ」批判に耐えながらも「3A」に抱きついて次を待つのか。他候補を閣僚や党幹部で起用する意向を示した岸田新総裁が差し伸べる手にどのように応えるかによって、河野氏の政治生命がかかる進路が見えてきそうだ。

小倉健一 イトモス研究所所長

デイリー新潮取材班編集 』