中国国産旅客機、中核部品の4割が海外頼み

中国国産旅客機、中核部品の4割が海外頼み
COMAC、初号機を年内にも引き渡し 輸出ハードルは高く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM290FJ0Z20C21A9000000/

『【珠海=比奈田悠佑、川上尚志】中国旅客機メーカー、中国商用飛機(COMAC)によるジェット機の国産化が進んでいる。米欧の大手に対抗する本格機種の試験が大詰めを迎えており、早ければ年内にも初号機を顧客へ引き渡す。ただ旅客機の核を担う部品やシステムは約4割を海外勢へ依存する。米中対立などの政治リスクを抱えるなか、海外輸出もハードルが高くなっている。

「ボーイングとエアバスだけでは需要を満たせない。我々が新しい選択肢を提供することがエアライン(航空会社)の利益にもつながるはずだ」。9月28日、中国国際航空宇宙博覧会(珠海エアショー)でCOMACが開いた発表会。販売促進の担当幹部は開発試験中の小型旅客機「C919」について胸を張った。珠海エアショーでは機内客室を原寸大で再現したモデルを披露し、関係者にアピールした。

C919は世界で最も売れ行きの良いボーイング「737」やエアバス「A320」と同サイズで、米欧が牙城を築く航空機産業に切り込むための戦略機種だ。今回のエアショーではデモフライトや実機の展示を見送ったが、商用飛行に向けた開発は大詰めにあるとの見方が強い。

今年1月、COMACが本社を置く上海市で開かれた政治会議でC919に関わるパイロットや整備人員の資格ルールの検証が進み、年内に関係認証を取得する流れが明らかになった。三大エアラインの一つの中国東方航空も3月、調達契約を正式に結んだ。

政府と大手航空の支持もあり、早ければ年内にも第1号機を納入するもよう。中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部は過去、2025年までに主要航空路線で旅客機の国産化率を10%超に引き上げる目標を掲げたことがある。C919は国産化の加速を担う。

ただ国産機のビジネスの前途には課題も見え隠れする。中航証券などの資料を整理すると、C919の中核サプライヤー39社のうち4割強が米国など海外勢だ。残る6割弱も一部には外資大手との合弁企業が含まれる。

胴体や翼などは中国勢が供給するが、通信や飛行管理のシステム、エンジンなど旅客機の頭脳や心臓部は米欧のサプライヤーがずらりと並ぶ。会社数ベースのシェアは4割程度だが、金額ベースでは海外依存度は一段と高まるもよう。「国産機」と呼べども、海外頼みなのが実情だ。

特に国内での開発製造が難しいとされているのがエンジン。現在は米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏企業の合弁会社、CFMインターナショナルが生産するエンジンを搭載する予定だ。将来的には軍用エンジンなどを手がける中国航空発動機の系列企業が開発する「CJ1000A」の採用も検討しているが、「2030年前後の市場投入になる」(浙商証券)などと、実用化にはまだ時間がかかるとする見方が大勢だ。

CFM製エンジンに関しては米国のトランプ前政権が20年2月、中国への供給制限を検討していることが明らかになった。その後トランプ氏自らが中国へ提供する意思を表明し、いったんは危機が去ったようにみえるが、スマートフォン生産における半導体同様、大きな政治リスクがあることがあらためて浮き彫りになった。

事業拡大に向けたもう一つのハードルが、航空当局が機体の安全性を認証する「型式証明」だ。現在は米欧当局がデファクトスタンダード(事実上の標準)を握っており、多くの国が追随するかたちをとっている。中国の航空当局も独自に認証作業をしているが、諸外国への影響力は低く原則としては国内で商用飛行が可能になるだけだ。輸出によって量産規模を押し広げられず、産業全体の成長速度を高められない。

そのため海外で通用する認証の取得は悲願だ。C919も当初は、欧州での認証の取得に動いていたことが分かっている。しかしその後、動静は聞こえなくなっている。

それだけ技術的ハードルが高いということだが直近、中国にとっては別の逆風も吹きつつある。米欧で長年続いていた航空機産業を巡る摩擦の雪解けだ。今年6月に開いた米EU(欧州連合)首脳会議では航空機産業への補助金を巡る紛争を終結させることで合意した。航空宇宙、防衛分野で急速に力をつける中国への警戒を共通認識としたことが背景にある。

中国にとっては米欧に吹く隙間風に乗じて認証を得たり、国境を越えた産業連携を強化したりするのが簡単ではない地合いになりつつある。当面は主に国内市場をあてに産業を育てるしかない。

COMACが9月28日、珠海エアショーで発表した旅客機の市場予測によると20年の世界の保有機数のうち中国は20%を占め、北米(29%)に次いで地域別で2位だ。一方、40年には中国は22%にまで拡大し、世界首位に躍り出るという。

実現性はさておき、国土の広さや人口の多さから当面の内需が大きいのは間違いなく、産業育成の武器になる。ただ過度な国内産業の保護は米欧の反発を招いて世界展開が難しくなる可能性があり、さじ加減は難しい。』