「アフガン居たら命を失う」 邦人保護の脆弱さ浮き彫り

「アフガン居たら命を失う」 邦人保護の脆弱さ浮き彫り
アフガンに惑う世界(4)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA16E9W0W1A910C2000000/

『「危機管理という観点から法改正を議論しないといけない」。29日の自民党総裁選で勝って新総裁に就いた岸田文雄は総裁選中、アフガニスタンへの自衛隊派遣の教訓を語った。日本の邦人保護の脆弱さが浮き彫りとなり衝撃を受けた一人だ。

首都カブールがイスラム主義組織タリバンの手に落ちた8月15日。「ここにとどまりたい」。現地にある日本大使館の職員数人からの訴えを外務省は「そのまま居たら命を失うからだめだ」と却下した。

この時、米英などはすでに軍用機や軍隊を現地に送っていた。市内で銃撃戦が起き、軍がいなければ危ないと判断したためだ。軍のヘリコプターを大使館の屋上まで飛ばして職員らを退避させた国もある。

カブール陥落は日本政府の想定外の早さだった。自衛隊に派遣命令をだしたのは23日。15日時点で当然現地にいない。米軍ヘリでの移動を依頼したが断られた。

「とにかく生きていてほしい」。次官の森健良ら外務省幹部の頭には万が一の事態もよぎったという。結局、上空から米軍ヘリによる監視を受けてなんとか空港に到着。英国軍用機でアラブ首長国連邦(UAE)に逃れた。

現地に日本大使館の現地職員らは残っていた。救出を目指した自衛隊機の輸送機が26日にカブール空港に到着したものの自衛隊員は降りたってしばらく立ち尽くした。助けるべき職員らの姿がなかったからだ。

自衛隊法上の制約で自衛隊員は安全を確保できない空港の外には出られない。役割は空港から第三国への輸送に限られる。

出国希望者は争乱状態の市内から空港まで「自力での移動」が求められた。アフガン人職員を含む500人を救出する任務だったが、空港にたどり着けたのは邦人1人だけだった。

帰国後に悔しさを訴えた自衛隊員は多い。「フィクションの世界でつくられた法体系のせいで命を守れなかったら元も子もない」。自民党国防部会長の大塚拓は再考のきっかけにすべきだと主張する。

韓国や台湾在住の日本人はそれぞれ4万人と2万5千人ほど。朝鮮半島や台湾での有事の退避シミュレーションは十分か。「想定外の事態」との言い訳は通用しない。(敬称略)

馬場燃、中村亮、木寺もも子、羽田野主、石川陽平、飛田臨太郎が担当しました。

【ルポ迫真「アフガンに惑う世界」記事一覧】

・「必ず殺される」 タリバン報復におびえる市民
・アフガン難民の受け入れ「もう限界」
・「米欧はパンドラの箱開けた」 アフガン巡りプーチン氏 』