[FT]一帯一路関連「隠れ債務」、途上国の見えざる脅威

[FT]一帯一路関連「隠れ債務」、途上国の見えざる脅威
途上国の対中国未公表債務は約43兆円、米民間調査機関が試算
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『中国の広域経済圏構想「一帯一路」によって、多数の中低所得国が巨額の「隠れた債務」を抱え、その総額は3850億ドル(約43兆円)に上ることがわかった。

一帯一路構想の一部となる四川省の鉄道=ロイター

米民間調査機関による調査によると、習近平(シー・ジンピン)指導部の外交政策の柱であるこの構想に関連した各国の債務は、長年にわたり組織的に、過小報告されてきたという。この結果、融資を受けた中低所得国で「隠れた債務」、すなわち政府が支払うべき未公表の負債が大きく膨らんでいることがわかった。

米民間調査機関のエイドデータ研究所が29日に発表した報告書で明らかになった。バージニア州にあるウィリアム・アンド・メアリー大学に拠点を置く国際開発調査を専門とする研究所だ。調査では2017年末までの18年間に中国政府や国有企業がアジアやアフリカなどの165カ国で資金を拠出した1万3000件以上(総額8430億ドル超)の事業について、支出額や負債額などを調べた。

エイドデータ研究所は、中国の融資による債務の残高が、これまで格付け会社や監視責任のある国際政府組織が認識していたよりも「大幅に大きい」と推定している。

エイドデータのブラッド・パークス専務理事は、フィナンシャル・タイムズの取材に対し、「最初に(3850億ドルという債務額を)見つけたときは、本当に息をのんだ」と語った。

過去2年間、中国による一帯一路関連の融資のペースは鈍化している。さらに今年は、米国が主要7カ国(G7)を率いて、途上国や新興国の開発を支援する枠組みで合意、開発融資で圧倒的な存在感を示す中国に対抗しようとしている。

しかし、報告書は、習主席が2013年に一帯一路構想を立ち上げて以来、大きな変化が生じ、それが長期的な影響を持つことを浮き彫りにした。

以前は、中国の他国への融資は中央銀行のような国の組織を対象にしたものが主だったが、近年は国有企業、国営金融機関、特別目的会社、合弁事業、民間の機関などに向けた融資が7割近くを占める。

対中債務がGDPの10%を超える国は40カ国
エイドデータの推計によると、40以上の中低所得国で対中債務が国内総生産(GDP)の10%を超えている。

そのうえ、それらの中低所得国は、中国への返済義務のある負債の額を実際よりも少なく報告しており、その過少申告幅は平均でGDPのほぼ6%に相当する。

「こうした負債の大部分は、途上国においては政府のバランスシートに現れてこない」とパークス氏は指摘する。「肝心な点は、こうした借金の多くが、様々な形で債務国政府の明示的または暗黙の債務保護の恩恵を受けているということだ。このため、公的債務と民間債務の区別が曖昧になっている」

この報告書は、中国が一帯一路関連の貸し付けにより途上国を「債務のワナ」に追い込んでいるという国際的な議論が高まっている折に発表された。こうした国からの返済が滞った場合、担保の資産を中国側が差し押さえることになると懸念されている。

ただ、こうした懸念は、習主席の下で中国が国際的な影響力を拡大していることに対する不安が広がるなかで、過度に誇張されているという見方もある。

返済すべき額が見えない怖さ

米ジョンズ・ホプキンス大学中国アフリカ研究所が20年に行った調査によると、2000年から2019年までの期間に、中国はアフリカの負債34億ドルを帳消しにした上、150億ドル分の繰り延べや借り換えに応じた。中国が資産を差し押さえた例はなかった。

「中国は物理的、非流動的な資産を担保に取りたがるというメディアの神話が長年の間に作られてきた」が、直近の調査によると、中国が流動的な資産を担保にすることも珍しくないようだ、とパークス氏は言う。

「中国の国営銀行が貸し付けに際し担保を求める強い傾向があるのは事実だ。中国の貸し付け全体の44%で担保が取られていることがわかった。いざという場合は担保に頼る」と同氏は言う。

「中国の国営銀行は、借り手がオフショアの銀行口座か中国の銀行が管理するエスクロー口座に必要最低限の現金残高を維持するように求める」

隠れた債務に起因する偶発債務が、多くの途上国にとって「まるでファントム・メナス(見えざる脅威)のように」立ちはだかっている、とパークス氏は言う。

「途上国の財務省にとって、中国に対する隠れ債務を管理していく上での問題は、ある金額の未公表債務を今後中国に返済する必要があるということではなく、むしろ、将来返済を迫られる可能性がある対中債務の額の見当がつかないということだ」とパークス氏はみている。

By Edward White

(2021年9月29日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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