北国銀行、採用は新卒と中途同数に 退職金前払いも

北国銀行、採用は新卒と中途同数に 退職金前払いも
始動 北国FHD㊥
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC242DG0U1A920C2000000/

『北国銀行本店のシステム部のフロアを見渡すと、人がまばらな一角がある。同行のシステム開発子会社で、10月に発足する持ち株会社「北国フィナンシャルホールディングス(FHD)」の傘下に入る「デジタルバリュー」のスペースだ。8月下旬、ウェブ会議用の画面に映っていたのは、兵庫や福岡など各地にいる社員だった。
北国銀行本店内のシステム部。内製化にこだわり、個人や法人向けのシステムを立ち上げてきた

デジタルバリューの本社は、東京都中央区にある。首都圏はシステム人材の層が厚く、北陸に比べて優秀な人材を採りやすいからだ。20人強いる社員はほとんどが中途採用。中には一度も金沢の北国銀本店を訪れたことがなく、遠隔で業務にあたる人もいる。

実績を4項目で評価

北国銀は個人や法人向けのクラウドバンキングなど、システムの内製化にこだわってきた。他の金融機関にも顧客を広げる考えで、エンジニアを確保するために中途採用を拡大する。コンサルティングなど即戦力が必要な他の分野でも同様だ。杖村修司頭取は「今後の採用は、新卒と中途を同数にしたい」と話す。例年、新卒と中途で60人前後を採用しており、2021年度は中途が3割を超える見通しという。

多様な人材を受け入れられるよう、22年3月には年功序列の撤廃に踏み切る。実績を重視し「役職が上だからと言って賃金が高いとは限らない」(青岸貴昭・人事開発グループ長)制度にする。年功重視だと、中途入社を考える人材に敬遠される可能性があるからだ。
毎期間ごとの実績は役割とスキル、生産性、組織への貢献度の4項目で評価する。直属の上司だけでなく、プロジェクトに携わった他の上司の評価も加え、多角的な視点を取り入れる。退職金を月々の給与に一定の割合で上乗せして支払う前払い制度も始める。勤続期間が長い行員が有利になる現状を改め、中途人材と公平にするためだ。

「人材流動化の旗を振ってもらいたい」。ある北陸の地銀幹部は北国銀の改革に期待を寄せる。「地銀は特に人材が固定化している。流動化すれば、メガバンクを含めて大手の優秀な人が来てくれるかもしれない」と話す。

全員の異動希望先を閲覧可能

一方で、生え抜き行員の意識改革も欠かせない。杖村頭取は「ぶら下がり行員という生き方は否定しない。ただ、あまり進化するつもりがない人は給与が下がる可能性が高い」と話す。スキルの向上やキャリア形成に関心を持たせ、モチベーションを高めることが必要だ。

「この人にしよう」。今春、佐々木謙志広報IRグループ長は社内アプリで行員のキャリア希望や異動希望先を眺めていた。8月に自分のグループから転出する行員の補充を探すためだ。最終的に3人に絞り、支店勤務だった行員1人の転入が決まった。

社内アプリは自社開発で、全員のプロフィールや目標を誰でも見ることができる。希望する部署やキャリアもオープンで、マッチングにも役立つ。青岸氏は「多数の行員の目に触れるため、いいプレッシャーにもなる」と話す。

同行は目指す雇用スタイルを、従来のメンバーシップ型雇用でも、専門性を重視するジョブ型でもないとし、「キャリア型」と表現する。ゼネラリストとして経験を積む時期と、エンジニアやコンサルといった専門性が必要なスキルを磨く時期。この2つを会社と話し合いながら選べるようにし、成長を促す。

「若手の行員から頭取に『北国銀行はいつまで変わりつづけるのか』との質問が出た。(中略)忘れてはいけないことは、これが『通常の状態』なのです」――。同行の著書「コンサルティングバンク×キャッシュレスバンク×クラウドバンク」には、こんなくだりがある。絶え間ない変化の中、経営陣の戦略と行員の意欲がかみ合って、顧客の期待に答えられるかが重要だ。

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